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332話 取り返せ!

 ナトゥーリッターを手に入れたシュレムだったが、それを使いこなすことはできなかった。

 その結果道具は石像に奪われてしまう。

 必死に取り返そうとしているシュレムにメルは奪い返すのではなく触れることを告げるのだった。

「どうすればいい!?」


 盾へと触れる事には成功したシュレム。

 だが、石像も何かをしようとしている事は分かるのだろう、シュレムを振り落とそうと動き始めていた。

 しかし、シュレムは魔力の籠め方を知らない。

 なら――。


「とにかく! 盾を触って、魔力を……」


 そこまで言って、大きく息を吸ったメルは叫ぶ。


「気合を入れて!!」


 酷く抽象的な言葉。

 だが、きっとシュレムならそれでも伝わるだろう。

 いや、寧ろ魔力を籠める方法など魔法を学んだものにしか分からない。

 ましてや魔法の道具を使う時と同じと言ってもシュレムはマジックアイテムをあまり使った事が無いのだ。

 だからこそ、そう叫んだ。


「お、おう!!」


 そして、シュレムは若干戸惑いながらもメルの言葉に従う。

 精神論でどうにか出来るのか? とメルも思いつつも最早それに頼るしかないのだ。


 ここであの盾を手に入れなかったら本当にもう一人のエルフが取りに来るかもしれない。

 そうなったら……そうなったら、皆が……。


 世界を守るそんな大それた事が自分に出来るとはメルは思っていなかった。

 しかし、それでも自分の大事な人々は守りたい。

 そう願っても居た。

 しかし……今この時、同時に自分では何も出来ない事を悔やんでも居た。


「このぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!!」


 シュレムは叫び振り落とされないように盾にしがみつく。

 しかし、ツタは伸びない。


「シュレム!!」


 リアスは彼女の名を呼ぶが、石像が思ったより暴れるのでそれ以上は近づけない様だ。

 だが、シュレムにとってはそんな事はどうでも良いのか助けが来ない事には一切触れず。


「さっきはあっさり伸びただろうがぁぁぁああぁぁあああ!!」


 一向に伸びる気配のないツタに怒りの声を上げる。

 その様子を見ているメルは――。


 だめ、全然魔力が伝わってない。

 ううん、それどころか本当に気合を入れてるだけだ。

 私がそう言ったのがいけないけど……どうにか、どうにかしないとシュレムが!!


「おい! あの娘をさっさとこっちに寄越した方が良いんじゃないか、なぁ!!」

「わ、分かってます!」


 焦るメルはふと自分の右腕へと視線を降ろし……ある事を思いついた。

 そう……魔力を込める方法。


 ――魔紋。

 そうだ、魔紋だ! シュレムにもまがい物とはいえ魔紋がある! これなら!!


 嘗てタリムの屋敷に住んでいた頃、メル達家族には魔紋が彫られた。

 本来は森の中で迷わないための物だったが、森に出かける必要のないメル達子供にはある目的で掘られたのだ。

 それは彼女が考える上ではあるが――家族である証。

 血の繋がりはなくとも絆で繋がれている証……メルはそう考えていた。

 だがこの魔紋もナタリアが掘った物……当然魔法を使うことだってできる。

 残念ながらシュレムにはその気は無かったようだが……。


「シュレム! 魔紋に気合を……力を籠めるように、早く!!」


 魔紋は彼女の体にもしっかりと刻まれている。

 魔法を使うためのであるため、その事をすっかりと忘れていたメルだったが、思い出し彼女に伝えた。


「こうか!? こんのぉぉぉぉぉぉおお!!」


 そして、シュレムはメルの指示に従い気合……いや、魔力を込める。

 先程は失敗した事だメルは不安もあったが、シュレムはそうでもない様だ。

 メルの言う事だから信じる……そう考えているのだろう。

 だからこそ、メルも不安があるというのに不思議と彼女の事は信じることが出来た。


 きっと大丈夫、シュレムはきっと――!


 そう願うようにシュレムを見つめるメル。

 すると――メルの願いは通じたのか、ツタが伸びて行き石像を砕く!


「良し!!」


 同時にシュレムは盾を奪い返すと構え――。


「――お、らぁぁぁぁあああ!!」


 石像を殴りつけた。


「な!? バ、バカ――!?」


 予想外の行動に出たシュレムを見てメルはぽかんとするが、傍にいたリアスはすぐに叫ぶ。

 石像相手に盾で殴ったら盾の方がまいってしまうだろう、事実石像は先程のツタ以外では壊れた場所は無く……。


「が、頑丈だな?」

「岩なんだ、当たり前だろ!?」


 リアスの呆れた様な叫び声が洞窟の中に響く――。


「お、お嬢ちゃん、あのお嬢ちゃん馬鹿だぞ、なぁ!」

「あ……ははは……」


 最早乾いた笑いしか出ないメルは困ったような表情を浮かべハッとする。


「シュレム、リアス!! 早くこっちに――ここから逃げるよ!!」


 盾は奪い返した、これ以上戦うのは不毛だと悟りメルは二人を呼び戻す。


「なんでだよ!!」


 何も言わず戻ろうとするリアスだったが、シュレムは納得いかないようで石像を睨んだままそう口にした。


「ここで暴れたら生き埋めになるかもしれないんだ、もし追って来るなら外で倒せばいい」


 しかし、リアスはそう言うとメルの方へと目を向ける。

 メルは何度も首を縦に振り、振り返ったシュレムはそれを見てため息をつくと……。


「分ったよ……」


 迫る石像の拳を盾で耐えた後、走り始めたのだった。

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