330話 扉の先にあるものは
動き出した石像はメル達では倒す手段がない。
そして、攻撃を耐えられるシュレムの盾は壊れてしまった。
だからこそ、メルは扉の先にあるドリアードの道具を彼女に取りにいかせ……。
石像へと立ち向かう。
果たして扉の先にある道具はシュレムに扱えるものなのだろうか?
扉を潜り抜け、部屋の中へと飛び込んだシュレムは視線は床に向け、そのまま真っ直ぐと走り続ける。
振り返ればメル達が戦っているのが見え、それ以上先に進めない気がしたからだ。
「盾! 盾さえ取っちまえば!!」
この先にそれがあるとは限らない。
だが、メルの言う事だ嘘はない! そう考えるシュレムはそう口にしながら先を急いだ。
そして、顔を持ち上げると――。
「良し!!」
そう叫ぶ。
彼女が叫んだ理由……それは目の前にある物を見たからだ。
部屋の中央に置かれているのは巨大な甲冑。
そして、その甲冑は身体がすっぽりと隠れそうな巨大な盾を持っていた。
所々にツタが這っているように見える盾は間違いなく精霊の道具だろう……。
そう考えた彼女は盾へと触れようとした。
「――――っ!?」
だが、その寸前の所で地からツタが伸びシュレムは捉えられてしまう……何が起きているのか理解できなかった彼女は自身の身体を見下ろし、ツタを千切ろうと試みるが……。
「こ、この!!」
信じられない程ツタは頑丈で千切る事は到底不可能だ。
しかし、目的の盾は後ほんの少しで届くという所だった。
「クソ……タレェ!! あと少しなんだよぉぉおおお!!」
少女とは思えない叫び声をあげながら、シュレムは盾へと手を伸ばそうとするもやはりピクリとも動かない。
後ろではメル達が戦い、その所為で起きる音が聞こえており、彼女を焦らせた。
「あと、後……少しなん……だよ!! このやろぉぉおおおお!!」
ミシミシと身体の方が音を立て、それでも歯を食いしばりながら前へと進もうとするシュレム。
そんな彼女の耳に聞こえてきたのは……。
『何故、貴女はこれを求めるのですか……』
聞いた事も無い声だった。
だが、それがなんであるか本能で察したのだろう――。
「テメェが取りに来いって言ったんだろうが!!」
その時が初めてシュレムが女性に対して乱暴な口調を使った。
メルを助けたい、ただその一心でついて来た彼女だったが……。
「コレがないとメルが――仲間も死んじまうだろうが!! それに、それに――親父やお袋だって――!!」
身体は軋み、痛む。
だが、少女はそんな事はお構いなしだ……。
何故なら――。
『何故、貴女はそこまで? 身体を痛めつけているはずです』
「くだらねぇ事言うな!! 師匠だってそうする!! オレだって守んなきゃいけないものぐらいは分かってらぁ!!」
彼女の叫びは声の主に通じたのだろうか? いや、きっと通じたのだろう……。
ツタは消え、思わず前へと倒れそうになったシュレムだが、体制を立て直し盾へと触れる。
甲冑が動く事も警戒していた彼女だったが、それは無く……。
『それで良い、それで良いんです。私は貴女達のその可能性を信じているのですから……』
何処か優しげな声が聞こえてきた。
その声を聞いて、シュレムは力強く頷くと……甲冑から盾を取る。
巨大な盾は手に良くなじみ……昔から持っていたようにも感じられた。
『それの名はナトゥーリッター……大地を山々を作る道具でした。貴女ならそれで仲間を守る事も出来るでしょう』
「なとぅー……りったー?」
シュレムは首を傾げながらその名を呼ぶが、すぐに自分のすべきことを思い出し。
「って名前なんてどうでもいい! メル!!」
来た道を引き返していく……。
そんな彼女を見送る姿がある事には気が付かず……。
シュレムを見送る女性は何故か少し引きつった笑みを浮かべており、呟いた。
『人と言うのは色々なんでしょうか?』
彼女は船の上で会話をした少女が今もなお石像と戦っている事は知っていた。
だが、授けた道具があればきっと大丈夫だろうとも感じていた。
『これで四つ……いえ、五つ……お願いしますよ、私の希望達』
そう呟くとゆっくりと消えていくのだった。
「メルゥゥゥゥ!!!」
石像の気を引き戦っていたメル達の元へ、失踪しながら駆けつける姿が見えた。
その手には巨大な盾を持っている。
「シュレム!」
メルはその盾を見てほっと息をついた。
無事道具を手に入れることが出来たのだと……しかし、目の前の石像はそれを許すつもりはないのだろうゆっくりとシュレムの方へとその身体を動かしていく。
「――!! マズイ!!」
リアスがそう叫ぶと同時に石像はシュレムへと殴りかかる。
当然シュレムは盾を構え身を守るのだが、メル達の脳裏に思い浮かんだのは先程のように吹き飛ばされた彼女の姿だ。
しかし……轟音が聞こえてきた後――。
「おお! なんか凄いぞこの道具!!」
聞こえてきたのは驚きと喜びが混じった叫び。
「なんか、はしゃいでいるようだ、なぁ?」
シバもその声を聞き首を傾げていた。
盾で身を守ったとしても、直撃はしたはずだ……大丈夫だろうか? そんなメル達の疑問には答えず帰ってきたのは……。
「ふっ! これはつまりこれでメルを守れって事だな!!」
シュレムのいつも通り過ぎる言葉だった。




