327話 脱出!?
メルの予想通り、ご神体は偽物だった。
それが土くれへと変わると祠は巨大なツタによって入り口をふさがれる。
このままではまずい……そう思ったメルは脱出の方法を思いつき実行するのだった。
「ウォータージャベリン!!」
メルが頭上に解き放ったのは水の魔法。
ツタには効果が無いその魔法だったが、メルが敢えて水の魔法を選んだのには理由がある。
その理由とは……。
土は乾いてる……このままじゃすぐに崩れちゃう……少しでも水で固められれば……!
そう、メルが水の魔法を選んだのは頭上の土を貫き穴をあける為だけではない。
その衝撃で崩れる事はあらかじめ予想で来ていた。
だが、悠長に全体を補強するのは難しい。
そもそもそうなったら浮遊、補強……そして脱出のための出口を作るために三つの魔法を操らなければならない。
ユーリママならともかく、私がそんな事をしたらきっと倒れる。
だから――!!
メルはだからこそ水の魔法を使い脱出を図ろうとした。
そして、彼女の思惑は――。
「いける!! リアス! シュレム! シバさん! 上から逃げて!!」
メルの叫び声を合図にリアスとシュレムは飛び上がる。
しかし、シバはその場から動くそぶりを見せず。
「シバさん!?」
「どうやって飛べばいいのか分からん、なぁ」
そう、浮遊の魔法とは言ってもかけた瞬間に浮き上がる訳じゃない。
魔法をかけられた人が飛び上がらなければ魔法は意味を成さないのだ。
「――ッ! 掴まって!!」
メルはそう叫びを上げるとシバの腕を取り、そして――。
「段差を昇るように飛んで!」
そして、魔法を使う条件をシバへと伝え……。
空を舞った彼女達は天井から脱出を図る。
しかし、魔法の衝撃の所為もあり祠は崩れ始め。
「っ!!」
人一人を抱えるメルは生き埋めになる未来が見え……。
「――駄目!!」
苦い表情を浮かべる。
しかし、シバを置いて行く……その選択肢は彼女にはなかった。
もし生き埋めになるのなら、合成魔法を使ってでもなんとかしよう、そう意志を固めた少女だったが……。
「メル! 空いてる腕を伸ばせ!!」
出口が閉じる寸前、リアスの声が聞こえ――彼の言葉通りメルは腕を伸ばす。
「リアス――!!」
そして、信じる仲間の名を叫ぶが……彼はもうすでに遠い所にいた。
メルの方へと向かって来てくれて入るが間に合わない。
そう理解した彼女は伸ばした腕を降ろしかけた。
「降ろすな! きちんと伸ばしてくれ!!」
しかし、すぐに怒鳴られメルは慌てて腕を再び伸ばす。
だが、どう考えても間に合わないだろう……だというのにリアスは自身がある様な表情を浮かべ笑う。
「そう、そのまま真っ直ぐだ……真っ直ぐじゃないと狙いと定まらない」
彼はそう言うと何かを投げてきた。
それが何か、考えるよりも先にメルはそれをつかみ取る。
そして、気が付いた。
「ロープ? それも……重りの付いた?」
そう、リアスが投げたのは重りの付いたロープ。
下手をすれば重りがメルに当たったかもしれない、だが……リアスはロープを巧みに操り重りをメルに当たらないように投げたのだ。
困惑しつつもロープをしっかりと手にしたメル。
それを確認する間もなく理解したのだろう……リアスは――。
「しっかり掴んでてくれよ!!」
その言葉が早いのか、それとも遅いのか、メルはぐんっ! と自分の身体が上へと動くのを感じた。
彼のお蔭もあって何とか脱出に成功したメルとシバは崩れ逝く祠を眺める。
やはり道具は偽物だった……それは分かった。
しかし、メルには疑問が残ったのだった。
「なぁ、メル……これ誰がやったんだ? 盗賊とかがやったにしては大掛かりじゃないか?」
そして、それはシュレムも考えた様で首を傾げた。
「うん……もう一人のエルフがやるとしても理由が……」
先に回収するにしても誇らか崩れれば流石に精霊の住処も崩れてしまう。
そうなれば意味がない。
最初はエルフが関わっていると考えたメルだったが、そう思うと不自然だった。
「祠、祠が……」
そもそも精霊の道具という貴重な物が誰もが手を伸ばせる場所にあるのだろうか?
その事も気になり……。
私達は勘違いをしてる? 精霊を祀る祠があるのはおかしくない。
でも、その道具をここに置くことがあるのかな?
大事な物だろうし、どこかに隠してたりとか……。
そう思うも、メルは首を横に振った。
そんなの私達に都合のいいように考えてるだけだよね?
事実ここにあったみたいだし……でも確かに盗んだにしては大掛かりだと思う……。
と思考はぐるぐると回り始める。
そんなメルを見てリアスは……。
「いったん戻ろう、此処にいてもなにも進まない」
「うん、そうしようか」
崩れた祠から目を逸らしたメルはリアスと共にレライへと向け、移動をしはじめる。
そんな時だ――。
「お、おい!! 待てって! あれ見ろ、アレ!」
シュレムの声が聞こえ……彼女がメル達を呼び止めたのは。




