326話 ご神体
メル達に道具を探せと告げたエルフ。
それとは違うエルフによる罠だと考えたメル。
しかし、老人シバはその道具こそがご神体だと口にした。
果たして……?
シバがご神体に触れ、手に取るとツタはぴたりと動きを止める。
そして……。
「――なっ!?」
ご神体はボロボロと崩れ始め、土塊へと姿を変えた。
偽物だ……メルが言った通り、すでに道具はすり替えられていたのだろう。
「どうするんだ?」
「うん……考えないと」
そう口にした直後……動きを止めたツタはいきなり暴れ出す。
「へ!?」
唐突な事にメル達は一瞬固まるが、すぐに逃げなくては! と考え、入口へと急いだ。
このままでは祠が崩落する、そう思い急いだのだが……。
「……嘘だろ!?」
唯一の出口にはすでにツタが絡まり出来た巨大な樹木の様なツタに塞がれている。
「これじゃ……出れないよ!」
メルは焦り叫ぶように口にした後、すぐにその傍にいるはずの精霊を探す。
だが……。
なんで!? どうして……どこにもドリアードが居ないの!?
そう、先程までは姿を見せていたはずの精霊達は何処にもいない。
必死に精霊を探しても何処にもいないのだ。
『メル?』
焦るメルを心配したのだろう、アリアは首を傾げつつ彼女の目の前へと現れる。
「ドリアードが居ない……ううん、何処にも精霊が居ない? さっきまで……」
何故急に居なくなったのか? その理由が思い当たるのは一つしかない。
その事実に顔を青くしたメル。
そんな彼女に対し……。
『ドリアード達は最初から、此処には居ませんでしたよ?』
シレーヌの言葉にメルは固まってしまった。
その言葉が信じられなかったのだ……事実メルは精霊を目にしている。
だが、二人が嘘を言っているとは思えないだろう……。
つまり、私は……ううん、私達は幻を見せられてた? っという事は……盾を盗んだのは……。
幻覚魔法……その魔法の名を思い出し、メルは顔を青くする。
「盗んだ事をばれないように魔法が掛けられてたの!?」
道具はエルフではなく人の手に取って奪われていた。
沿う考えを改めた彼女はツタももしかしたら幻影ではないのか? と思い触れてみるのだが……。
「本物……」
幻影でない事にがっくりと項垂れる。
そ、そうだよね、さっきしっかりとツタに腕取られたんだ……。
メルはそれを思い出し、かといってこのまま呆然とする訳にはいかないとリアスの方へと目を向ける。
先程からメルが剣を使わない理由は簡単だ。
アクアリムは水を司る道具。
恐らくはツタには効かないと考えたのだ……それでも切るだけなら何とかなりそうではあるが目の前にある入口を塞ぐツタは無理だろう。
リアスもメルの考えている事は理解しすぐにナウラメギルを構え直すとツタを切ろうとする。
しかし、炎は現れず……。
「リアス……炎は?」
疑問に思ったメルは尋ねるが、リアスは首を横に振り答える。
「ここじゃ使えない、狭いし、燃えやすい物が多すぎる……」
リアスの言葉にメルは改めて辺りを見回す。
祠の中は確かに枯れたツタや木の葉……燃えやすい物が多く、ナウラメギルの炎が自分達を襲う事になる可能性が高い。
同時にメルの魔法も炎の魔法は使えないという事だ。
しかし、剣での攻撃ではツタは傷つく事は無く……。
「どうするんだ!? なぁ!」
老剣士のシバはそう叫ぶ。
彼にもどうしようもないのだろう……何故なら彼は森族、普通は魔族や天族よりも力が無い種族。
メルの母フィーナはその中でも特別と言える者だ。
そしてメルは魔族の血を引いているからこそ、彼らとは違う。
「どうするって……」
メルは考えるも強力な魔法は使えないと分かっていた。
この祠は辛うじて崩壊しない程度に崩れている上に土が覆いかぶさっている。
下手に刺激をすれば崩壊可能性があるのだ。
だから衝撃を与える魔法じゃ駄目。
かと言ってそうじゃなきゃあの大きなツタは……。
困り果てるメルは視線を彷徨わせた。
そして――。
「あ……」
メルの視線の先にはむき出しの土。
そう、祠の天井や崩れた石などではなく土だ。
ツタが動いている所為かパラパラと音を立て、今にも落ちてきそうだ。
「……やるしか」
だがメルはこのままでは生き埋めになるという事よりも、脱出の方法の事を考えていた。
そう……それはとても難しく成功するかは分からない。
だがメルはきっとできると信じ込み――すぅ、はぁ……と大きく深呼吸をすると。
「我らに天かける翼を!!」
詠唱を唱え――。
「エアリアルムーブ!!」
浮遊の魔法を唱える。
「メル……どうするんだ?」
リアスはメルに尋ねるとメルは――真上を睨み。
「今から天井を壊すよ、だからそこから逃げるの!!」
右手を天井へと向け――。
「我願うは、立ちはだかる者への水の裁き」
メルが知る強力な魔法……そして、この場を切り抜けるための魔法を唱えるのだった。




