324話 精霊の祠
祠へと向かう際中。
魔物と対峙したメル達を見てシバは大したものだという評価を告げる。
彼女たちが格下の魔物相手に手を抜かなかったことを褒めているようだ。
当たり前のことをしただけだ。
そう言うメル達の言葉に期限をよくした様子の老人は約束通り祠へと連れてってくれたのだった。
「ふぅ、やっと通れたなぁ……」
老人シバは時間をかけ、穴を通り抜けると腰を折り、とんとんと拳で叩く。
そして、メル達の方へと向くと……。
「なにかあったのか、なぁ?」
シバはメル達の異質は雰囲気を知り、リアスに尋ねる。
今現在彼女達を警戒している訳ではなさそうだが……気にはなっている様だ。
「いや……俺からは……」
リアスは答えようにもメルに笑みを向けられると何も言えず、明後日の方へと目を向ける。
そして、乾いた笑い声をあげ……。
「リアス? なにがおかしいの?」
感情の無い声でメルは問う。
「いや、何でもない先に進もう!」
リアスはこれ以上、この話題に触れてはいけないと先に進むことを提案する。
そして、シバの方へと向き直った彼は訪ねる。
「このまま真っ直ぐに進めばいいのか?」
「ああそうだ、この祠は変なつくりはしてないからなぁ! まっすぐ行けば御神体が見つかる」
彼はそう言うとその場から動かず、リアスは首を傾げた。
「行かないのか?」
「後ろで悪さをせんように見てるだけだ……とは言ってもその必要も無さそうだが、なぁ!」
そう言いつつ警戒する素振りを見せるシバ。
彼に対し、リアスは仕方がないと割り切ったのだろう、歩き始めると……。
「ねぇ? リアス、さっきのなにがおかしいの? ねぇ?」
メルは感情の無い顔で問う……耳も尻尾もぴんっと立ち怒っている事が誰の目から見ても明らかだった。
だから、絶対に口にしてはいけない。
リアスはそう悟り……。
「メル……迷わないように手を繋いでおこう」
あえて質問には答えずそう提案する。
迷う必要もない、そうは思ってもメルが迷うであろう事は何となく予想できたからだ。
「……ふぇ!?」
するとメルは予想外の言葉に驚く。
そして、差し出された手とリアスの顔を交互に見て……彼女は表情を取り戻すと……顔を赤らめ。
「う、うん……」
差し出された手を取った。
「あ!? おい! リアス!! お前人の嫁に何をしてるんだよ!!」
「いや、だから……シュレムは……」
怒るシュレムに対しリアスはいつも通りの突込みを入れようと考えたが、すぐにやめ……。
「リアス行こう?」
彼女に対しての怒りはまだ収まっていないメルは彼の手を引っ張り歩き始める。
「ああ……って!? メル!! 右じゃない! 真っ直ぐだ!!」
そして、早速道を間違えている事を彼に注意をされ赤く染めた顔を別の理由でも赤くするのだった。
祠の中を歩くメル達。
崩れているせいで歩き辛いものの、やはり誰かがここを管理しているのだろう。
人の通った後がある。
「ここって誰か来てるんですか?」
メルは気になりシバへと尋ねる。
すると、彼は頷き……。
「今でも信仰するものは多いんだ、なぁ! だから、お参りに来ているもんは少なくない、なぁ!」
盗賊とかの類ではない事にホッとしつつメルは黙り込んでしまった。
その理由は簡単だ。
ここにお参りに来ている人が居る。
つまり、この先にある御神体という物を通し精霊ティエラに祈りをささげているのだろうと分かったからだ。
それを奪ったらきっと皆悲しむよね……。
実際には奪い取る訳ではない。
エルフからは許可を得ている訳だから正当な理由でもある。
しかし、それを知らない人々にとっては奪われたも同然だろう。
そう考える彼女は――ついにその部屋へと辿り着いた。
「……あれが、そうか……」
リアスはそう言うと崩れた部屋の中にある真新しい台座に置かれている道具を見る。
「そうだ、あれがティエラ様のご神体だ、なぁ!」
「…………」
メルは一歩また一歩とそれに近づく……。
そして、その盾へと視線を注いだ。
「これが……精霊の道具……」
スコップの様な道具と聞いていたが、巨大な盾にも見える。
後ろの方へと回ってみてみると盾と同じような頑丈な持ち手はないが絡まるツタがまるでその持ち手にも見えなくもない。
「……満足したか?」
シバはそう言うとメルの方へと向き直る。
しかし、メルがここに来た理由はその盾を手に入れるためだ。
「……」
そうだったのだが……。
「これって……」
まじまじと盾を見るメルは首を傾げた。
「メル?」
リアスは首を傾げる彼女の名を呼びつつ訝し気な表情を浮かべる。
「どうしたんだ? これが目当ての道具じゃないのか?」
シュレムも同様に盾に手を伸ばさないメルに疑問を持った。
「お前さん達やっぱりご神体を盗りに来たのか! なぁ!」
そして、メル達の目的を確信したシバは怒りを声に表すが……メルは――。
「偽物だ……この道具偽物だよ!」
メルはそう声を張る。
「偽物だ!? また適当な事を! ドリアードもいるじゃないかなぁ!」
確かにその場にはドリアードが居る。
しかし、メルは道具が偽物である事を確信していた。
何故なら……。
「これ、動かされた跡がある……どうやったのか、分からない……分からないけど……これ!」
メルが指をさす所には確かに無理矢理引きちぎった様な切れ方をしているツタがある。
しかし、ご神体にはしっかりとツタが絡まっており……。
「どういう事だ?」
リアスはメルに問う。
しかし、メルも首を横に振り……。
「わからない、でも……これがエルフの道具なら近づいた時点で私達に何らかの試練があってもおかしくはないよ!」
メルはそう告げながら、リアスの背にある火を司る剣ナウラメギルへと目を向けたのだった。




