323話 シバの案内
シュレムを連れ、シバの言う祠へと向かうことにしたメル達。
ようやく精霊の道具のありかが近くなってきた。
その事に安堵しつつも気は抜かず進むのだった。
街を出てから暫く。
「ほう……やるもんだなぁ!」
シバの感心したような声が辺りに聞こえた。
「……え?」
剣から魔物の血をアクアリムの力で洗い落したメルは首を傾げつつ、鞘へと納める。
シバの言葉の意味が分からなかったのだ。
自分達は感心されるようなことしただろうか? そう思ったメルは仲間達へと目を向ける。
しかし、リアスもシュレムも首を傾げるだけだ。
「そいつらはここいらじゃ雑魚の魔物だ。お前さん達の実力からすると格下も良い所……なのにお前さん達は一切手を抜かなかった、なぁ!」
豪快な笑い声をあげる老人シバ。
しかし、メル達に告げられた言葉は彼女達にとっては――。
「いや、普通だろ? 旅をしていれば格下の魔物にやられる事は少なくない」
「うん、良く死因で無茶をしたとかの次に聞く原因だよね?」
メルとリアスは互いに目を合わせそう確認する。
事実、格下だと言い油断した挙句、命を落とす者は多い。
魔物との相性もあるが、いくら弱くとも魔物は魔物。
決して手を抜いて良い相手ではない。
何が起きるか分からない以上……倒すまでは気が抜けないのだ。
「ったく、爺さん何を言ってるんだ? メルの髪一本傷つけられても罪なんだぞ!!」
ただ一人は別の理由で全力で戦っていた様だが……手を抜かないのであれば問題はない。
そう二人は思ったのだろう、突っ込む気力もなく、ただただ乾いた笑い声をあげる。
すると老人シバは――。
「なるほどなぁ! いや、ただの子供だと思っていたが……なぁ」
豪快な笑いを続けるシバはメル達の評価を変えた様だ。
だが、それが信頼に直結するか? と言われると微妙だろう。
そもそも強さでフィーナの娘と判断することは不可能だ。
何故なら、彼の知るフィーナとは幼い姫。
冒険者として頭角を現したのは亡命してからだ……。
「まぁ、これなら……楽が出来そうだなぁ!」
しかし、シバはお守もしなければならないそう思っていたのだろう。
その心配がない事に喜んでいる様子だった。
なんか、私達……あんまり信用されてないんじゃなくて……全く信用されてなかったのかな?
メルはそう思いつつ先を歩き始めた彼の後を追うのだった。
更に歩き続け……日は髙くなり……。
「ここだ……なぁ」
シバはある場所で歩みを止めた。
「お、おい……」
それに戸惑った声をあげたのはシュレムだ。
「ここ? ここって……」
続いてリアスも辺りを見回しながら困惑する。
何故ならそこにあったのは巨大な土の塊……いや、小高い丘のようになっていた。
「ここの中にあるなぁ!」
「で、でもこれじゃ……」
中の様子何て分からないよ! メルはそう思ったが、シバはその丘の方へと向かい。
「ここだ、ほれここだ、なぁ!」
ある場所を指差した。
そこには人一人がやっと通れるかどうかと言った場所。
いくら子供とはいえ、メル達にも通り抜けるのは辛いだろう。
そう思っていると……。
「ワシだって行けるんだお嬢ちゃん達ぐらいなら簡単に抜けれるだろう、なぁ!」
と言い張るシバ。
「いや、メルはともかく、俺は……」
何故そこでシュレムの名が出なかったのか気になったが、確かにリアスは通るのに苦労しそうだ。
メルは暫く考えた後……。
「私から行くよ!」
その穴の中へと向かおうと通り抜けられるか試してみる。
穴の中を覗いてみると真っ暗だ。
「……我が往く道を照らせ、ルクス」
メルは魔法を唱え、辺りに明かりをつける。
そして、奥の方へと目をやるがどうやら祠と言うのは本当の様だ。
誰かが定期的に入り管理しているのだろうか? 手入れが行き届いているようにも見える。
「……ん……っしょ……と……」
メルは言われた通り、案外簡単に抜けることが出来た。
そして――。
「メル! 大丈夫か!? 今オレが行くぞ!!」
メルを心配してだろう、呼ぶ前から中に入り込もうとするシュレムの方へと目を向け……。
ある事に気が付いた。
「…………………………」
「あ、あれ? 上手く通れないぞ!? くっ……こ、のぉ……」
年相応……とは言えないのはメルも同じだろうが、彼女とは逆で大きく育っている胸がつかえ、思ったよりうまく入れない様だ。
普段ならリアスが手を貸すか声をかけるかしただろうになぜか何も聞こえない。
しかし、そんなことを気につつシュレムのそれをメルは静かに見つめ……。
うん、あれを千切りたい……ってナタリアが良くユーリママに言ってるのはやっぱりわかる気がする。
「あれ? メル……? 何か顔が怖いぞ?」
何とか通り抜けられたシュレムはメルの元へと駆けつける。
しかし、メルの様子を見てシュレムは普段とは違う彼女に怯えた。
そして……。
「っと、シュレム勝手に行くな!」
続いてリアスが来た。
彼もまた少し苦戦したようだが……気になったのは……。
さっきリアスがシュレムの名前呼ばなかったのってつまり、こういう事だったんだね?
メルはその事に気が付き彼の方へと目を向ける。
すると彼は……。
「メ、メル! ほら……祠を調べないとな?」
あくまで冷静を装いそう告げた。
メルは頷きつつ……。
「ソウダネ、ソウシヨウ」
と感情の無い声で同意した。




