322話 仲間を迎えに
ミケの事を話しても老人シバは完全には信用しなかった。
ならば何が必要か? メル達は困っていると一人の女性が騒ぐなと文句を言ってきたのだ。
酒場で騒ぐのは当然と思いつつも、彼女のお陰でメル達は老人に道具のありかへと連れて行ってもらえることになったのだった。
城へと着いたメル達はその足を急がせ自分達が寝泊まりした部屋へと急いだ。
そして、扉を開けると……。
「な、なに……? どう……なってるの?」
床へと座らされているシュレム。
そして腰に手を当ててシュレムを見下ろすライノ。
呆れ顔のエスイル。
「あら、お帰りなさい」
二人はメル達に気が付くと笑みを浮かべるがすぐにシュレムの方へと向く……シュレムはというとメル達を見て一瞬表情を明るめたのだが、二人が自分の方へと再び顔を向けた事で慌てて下を向いた。
「シュレムがなにかしたみたいだな……」
リアスは溜息交じりでそう言うと、メルは乾いた笑いを上げる。
彼女もまた、そうなのだろうと思っていたからだ。
しかし、気になる事がある。
三人には王に話をしてもらう為に残ってもらっていたはずだ。
いくら母達の知り合いだとしても、王に無礼な事をしたのであればこの部屋に戻っているはずがない。
「……なにかしたの?」
だからこそ、王に対して何かした……というのは可能性としては薄いだろう。
だが、この部屋の中で何かするとしても何をしたのかが分からなかったのだ。
「まさか、外に出て城の中に居る女の人に声をかけたとかじゃないだろうな?」
リアスがそう口にするとメルはまさか! っと思い笑うのだが……。
「情報収集しようとして、此処に人を集めてたんだ……その時に来た女の人に……」
「おかげで王様から悪ふざけするなら大人しく待ってなさいって言われたのよ……」
当たらずとも遠からず。
メルはぴたりと止まる……そしてシュレムの方へと向くと、シュレムは慌ててメルへと告げた。
「ち、ちちち違うぞ!? 浮気じゃない! オレはメル一筋――」
「そうじゃなくて! 人に迷惑かけちゃ駄目でしょ!?」
目を吊り上げた少女はそれだけを言うと大きくため息をつく。
そして、扉で話の一部始終を聞いていたシバへと目を向けた。
「あら……どなたかしら?」
「情報を持っている人です……これからちょっと出かけるんだけど……」
本来ならエスイルを連れて行こうと考えていたメルだったが……。
王から話を聞くならしっかり者のエスイルとライノが居ればいいのではないか? と思い。
「はぁ、シュレム……一緒に行こう?」
姉ともいえる少女の名を呼ぶ。
「そうだな、外に行くならシュレムが適任だ……」
リアスもメルの判断に異論はないのだろう、明後日の方向を見ながらそう告げ……。
「そうか、メル……寂しかったんだな」
何かを勘違いしたシュレムは立ち上がる。
しかし、メルはそれに答える事無く……。
「次に人に迷惑かけたら怒るからね?」
と忠告をすると、シュレムは思わずたじろぐのだった。
それからメル達はシュレムの支度が終わるまで少し待つ。
支度と言っても装備を整えるだけではあるが……。
その間、メルはライノ達にお願いをしようとした。
「あの、ライノさん」
「分ってるわ」
しかし、長い付き合いとなったライノは彼女の言おうとしていることが分かったのだろう。
微笑みながら頷く……。
「念のため王様にも話は聞くわ、それと謝罪はこっちに任せておいて」
「ありがとう!」
笑みを浮かべたメルは尻尾を大きく揺らし、ライノに礼を伝える。
それとほぼ同時に……。
「支度が終わったみたいだぞ」
リアスの声が聞こえ、メルは残る二人の仲間へと声をかけた。
「それじゃ行ってきます!」
「「行ってらっしゃい」」
ライノとエスイルは笑みのまま見送ってくれる。
メルはリアス達と共に城を出ると案内をしてくれるシバの方へと目を向けた。
「それでシバさん、その祠って……」
「焦るんじゃない、ちゃんと案内する、なぁ!」
何度聞いてもその口癖はちょっと慣れないな……とメルは考えつつも、彼の後をついて行く……。
果たして彼の言う祠、そこにはミケの言う精霊が祀られているのか? そして、エルフの言う道具があるのか?
分からないが、何かがある事は確かだ。
確か、大きなスコップのような物って言ってたよね?
メルは酒場で聞いた事を思い出してみる。
しかし、スコップが武器として使えるか? と言われると想像がつかない。
使えなくはないだろうが、どうしても……。
うん……違和感を感じる。
だから武器には使わなかったのだろう、そう考える事にしたメルはある疑問を浮かべた。
それは自分の持つ精霊の道具、アクアリム……そして、リアスの持つナウラメギル。
どちらも剣と分かる物だ。
白い宝石ももとは武器に使われる予定だった……と聞いている。
そして、精霊の首飾りや装飾品。
最後にスコップ……なんで、一貫性が無いのかな?
武器、道具、装飾品……何故かバラバラだという事に疑問を抱いたメルは歩く中首を傾げる。
「どうしたんだ?」
するとリアスに声を掛けられ、メルは困った様な表情を浮かべた。
いくら疑問と言っても関係はないだろう、そう考えたからだ。
「な、何でもないよ?」
メルはそう口にし……浮かび上がった疑問を無理やり胸の中へとしまい込んだ。




