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321話 証明

 自分はフィーナの娘だ。

 そう打ち明けたメル。

 しかし、老人シバは信じてくれなかった。

 だが、そんな彼に対しメルはミケの事を話すと約束する。

 すると彼は信じたようだが……同時に彼に悲しい知らせもするのだった。


 それからメルはミケの事を彼らに話した。

 自分の事も含め、リラーグでの思い出を……どうしてそこに行くことになったのかを……。


「ちょっと……それはいくらなんでも……」


 しかし、今度は店主のキクが訝しげな表情へと変えていく……そんな彼女の方を向き、シバは……。


「いや……ミケが孫娘の事で悩んでたのは事実だなぁ! それに……アイツはこうも言ってた孫娘を二人取られたとなぁ」


 二人……そう口にした理由はメルには何となくだが理解出来た。


「もう一人いたのか?」


 だが、今話を聞いたばかりのリアスにはそれは分からない事だ。

 彼はそう尋ねると、疑問にはメルが答える。


「多分、そのもう一人の孫娘は私のお母さん……フィーナママの事だと思う」


 メルがそう言うとシバは頷く。


「そういう事だ、だが……お前さんが本当に血のつながりがあるとしてもどうして壊れた祠なんかに行きたいんだ? なぁ! いや、そもそも本当に姫の娘なのか? なぁ!」


 そこはまだ信じていないのだろう。

 シバは警戒したままだ。

 だが、メルもそれは仕方がないと分かっていた。

 いくらは話が通じても……情報さえ手に入れれば偽ることが出来るだろう。

 ここまで説明して信じてもらえないのなら、証拠を出すことはできない。

 そう思っていたメルだったが……。


「冒険者の証では駄目なのか?」


 リアスの言葉にはっとした彼女は腕輪を見せる。


「……そこに居るとは噂では聞いた事がある、だけどなぁ……本当にそこに居るか知らん」


 申し訳なさそうな表情を浮かべたシバ。

 そんな会話を聞いていた酒場の客からはいよいよ……。


「小さな子供の言う事ぐらい信じてやれよ! 爺!」

「でも、爺さんの気持ちは分からんでもないだろ!」


 と、方々から聞こえ始めた。


「こら! 静かに飲みな!」


 そんな中、一人の女性が怒鳴り声をあげる。

 恰幅の良い女性は身の丈に合った巨大な斧を背負っている。

 彼女は一歩また一歩とメル達に近づいて来た。


「げ……トロールだ」

「誰がトロールだい?」


 誰かが言った言葉に眼光を鋭く、低い声を上げる。

 すると辺りは静かになり……女性は再び歩き始めた。


「騒ぎの発端はあんたらかい? 人が店に着たら騒いでなにしてんだい? あたしゃ静かに飲みたいんだよ!」


 酒場でそれは無いだろう……おそらくメルやリアスだけではなく、その酒場に居る人々は皆そう思っただろう。

 事実店主の女性も……。


「あのね、だったら酒を買って家で飲みなっていつも言ってるよ! ここは酒場でここは私の店だ! 規則は私が決める!」


 店主は身を乗り出し、そう言うが確かにメル達との話に収拾がついていないという事は理解していた。


「ねぇシバさん、どうにか連れて行ってあげるだけは駄目?」

「…………まぁ、話をしていて暴れる連中じゃないってのは分かってる。一回だけだ……良いな?」


 面倒そうにそう言ったシバの視線はキクではなく、トロールと呼ばれた女性に向かっており。


「酒がまずくなりそうだしなぁ……」

「ちょっとどういう事よ! だからうるさいのは嫌い!!」


 だんっ!! と床を踏み音を立てた女性。

 彼女はどうやら嫌われ者の様だ……。


「はぁ……こう何度も営業妨害されると出禁にしなくちゃならないからね!」


 キクは強めの口調で女性にそう言い、まるでそれを合図にしたかのようにシバは立ち上がると金貨を置く。


「ちょっとシバさんいくらなんでも多すぎ!?」

「なに、このお嬢ちゃん達の飲み物代と騒いだ迷惑代だなぁ!」


 彼はそう言うとメル達二人へと目を向け……。


「早速向かうとするか、なぁ?」

「え……今からですか? なら仲間を――!」


 メルは城の所へと向かおうと考えた。

 しかし、シバは首を横に振り、答える。


「いや、そこに連れて行ってやれるのはお前たち二人だけだなぁ! ワシはまだお前さん達を信頼した訳じゃない」


 彼の瞳は相変わらず疑うようで……メル達は信頼してもらうにはまだ足りない。

 そう理解しつつも……メルはまだ老人シバに頼む。


「大事な仲間なんです……きっと二人で行ったら心配するから……」


 正直にそう伝えたのが良かったのだろうか?

 シバは悩むそぶりを見せる……そして……。


「あと一人、一人だけだ……それならいいだろう、なぁ!」


 シバの言葉にメル達は頷いた。


「それで十分だ、じゃぁまずは城へ行こう」

「うん!」


 メルとリアスは笑みを浮かべてそう口にすると店主の方へと向き直る。


「ありがとうございました!」


 そして、礼を告げるとキクは柔らかい笑みと共に手を振って見送ってくれた。

 しかし――。


「ちょっと! 無視するってどういう事!!」


 嫌われ者の女性は地団駄を踏み、メル達を睨む……とはいえ、メル達は無視した訳ではなく……。


「ええっと……」

「かまうな、行くんだろう? なぁ……」


 何か答えた方が良いだろう、そう思ったメルの手をシバはやや強引に引っ張ると酒場から去っていくのだった。

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