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320話 条件

 場所は知っている。

 しかしただの冒険者には渡せない。 

 そういう老人シバに対し、リアスはメルなら大丈夫だという。

 メル自身その理由を把握し彼にすべて話すことを決めたのだった。


 メルの言葉にピタリと動きを止める男性シバ。


「話を聞いていたのか? なぁ!」


 そして、威圧するかのように顔を近づける。

 酒の匂いに思わず顔を歪めかけたメルだったが、コクコクと頷き……。


「だって、私はフィーナの娘だから」


 そう口にした。


「なに?」


 するとシバは眉そ潜めた。

 そう、メルの母フィーナは昔この国の姫だった。

 しかし、戦争時……たまたま立ち寄った冒険者だったナタリア達に連れていかれ、現在に至る。

 つまり彼の言う資格はあるだろう。

 そう考えたのだが……。


「言うだけなら誰だって娘を名乗れる、なぁ!」

「え……」


 今までメルはずっとフィーナの娘と言われて来た。

 逆にユーリの娘だと判断する物が髪の色ぐらいしかなく、初めて会う者にはいつも説明が必要だった。

 しかし、フィーナの娘。

 たったその一言を言うだけで納得されもしたのだ。

 だというのに今回はそうじゃなく……。


「姫がこの国から逃げて行ったのは知っている、だがお前さんがその娘だとは限らないなぁ!」

「あのね、シバさん?」


 疑うシバに対し、ため息をつきつつ彼の名を呼ぶ店主キク。


「逆にこの子がそうじゃないとも言い切れないでしょう?」


 もっともな事を言ってくれたのだが、シバは首を横に振る。


「だからこそ警戒するんだろう? なぁ! 物語じゃないんだ……王家の物が近づけば扉が開くなんて夢のような事ある訳がないなぁ!」


 そういった魔法が存在しない事は知っている。

 だが、物語ではよくある事だともわかっている……とはいえ、メルはフィーナの娘。

 それは紛れもない事実だ。

 かと言って、シバと言う老人が言っている事も確かだ。


「どうすれば、どうすれば信じてもらえますか?」

「ん?」


 メルの必死な訴えに少し態度を柔らかくしたシバ。


「だから、どうすればいいんだ? メルがフィーナさんの娘だって言うのを証明するのに必要なら、何かやるよ」


 リアスはそう言うもそれは難しい事でもあった。

 王とは知り合いだ。

 だから彼に頼むことはできる。

 しかし、シュターク王はあくまで人間の王。

 目の前にいる森族(フォーレ)の男性シバにとっては敵の親玉だった者だ。

 彼の言葉を信じないかもしれない。

 なら、フィーナを連れてくるか? それはありかもしれないが、王家の紋章などを持っていなければ偽物だと言われる可能性もある。

 メルはその王家の紋章とやらを見たことが無い。


「…………」


 そして、それはシバも理解しているのだろう。

 いくら違うと言った所で本当に違うかどうか等、断言できないと悟った彼は黙り込んでしまう。


「ほら、シバさん意地貼ってないで、この子達にその場所を教えてあげなよ」


 そして、キクと呼ばれた店主がそう言うと……。


「駄目だ……なぁ」


 それはすぐに帰って来た。

 それだけ、その祠にあった物は特別なのだろう。

 メルはそう考えたが、同時に必要な物である可能性がある事は変わらないと思い。


「お願いします。ミケお婆ちゃんのお話ならいくらでも出来ますから」


 交渉の切り札になるのではないか? メルはミケの名前をだす。

 すると彼は当然キクも驚いた顔を浮かべ……。


「ミケ婆を知ってるの?」


 彼女に尋ねられメルは頷く……それを見たリアスは溜息をつき……。


「何で早く言わなかった?」

「その、私が知ってるミケお婆ちゃんと同じ人かどうかは分からないから……ただ、もし同じだとしたら一緒に住んでたし……」


 メルがそう言うとダンっ!! という大きな音がし、思わずビックリするとシバと言う男性は机に手をついて立っていた。

 彼はメルへと近づくと……。


「本当か? なぁ!」

「ええっと……少なくともミケってお婆ちゃんと家族みたいなものです……そのジェネッタさんとかも……」


 メルは知り合いの名を口にする。

 もし、同じミケであればそこまで一致しているのは難しいからだ。

 するとシバと言う老人は椅子へと座り。


「……街から追い出されたと聞いたが……なぁ」

「……追い出されたんじゃなくて、王様が逃がしてくれたんです」


 実際にはママ達が助けたって言った方が良いんだろうけど……。


 メルはそう思いながらも、口にするとシバは何処か懐かしむような表情を浮かべる。


「そうか、無事か……」


 遠い昔を思い出すその瞳にはなにが映っているのだろう? メルは気になったが、それを知る事は出来ない。


「……元気か? なぁ」


 だが、それには答えなくてはならない。


「……数年前に亡くなりました。皆に囲まれて……でも、苦しむんじゃなくて、優しい顔で……」


 当時を思い出したのだろう、瞳の奥が熱くなる感覚を感じるメル。

 リアスは彼女声が震えている事に気が付くと頭を撫で始め……。

 メルの様子を見て、シバとキクは互いに顔を合わせるのだった……。

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