319話 情報提供者?
城に残っていたエスイル達は兵士たちから話を聞くことに。
しかし、思ったより人は来ず……。
困っていたところ一人の女性が現れるのだった。
「ええ、大丈夫よ」
ライノは少女に告げる。
彼女の見た目から城に使えるメイドだろう……。
彼女もまた丁寧な例をするとライノ達に向き直り。
「何かお話があると聞き、手が空いたので来たのですが」
丁寧な言葉遣いの少女を見てライノ達は内心喜んでいた。
何故なら、彼女は森族。
つまり、何か知っている可能性が高い、そう考えたのだ。
「ああ、お姉さん……彼氏は居るか?」
そう、ただ一人を除いては……。
「へ!?」
訪ねた矢先、唐突にそんな事を聞かれ目を丸める少女。
彼女は少し固まった後……ライノ達を見る。
ライノ達もまた、シュレムの発言に驚いていたのだが、すぐに彼女を止める為に動くのだが……。
「彼氏、居るのか?」
その言葉は再び口にされ……。
「ええと、それが聞きたい事ですか?」
瞼を半分降ろした女性。
彼女は大きくため息をつき……ライノを睨む。
「しかも子供に聞かせるなんて……失礼しました」
「ち、違うわよ!?」
そのまま去って行く彼女の背にそう叫ぶもむなしく響くだけ。
折角来てくれた女性はあっけなく部屋から出て行ってしまうのだった。
「シュレムちゃん?」
そして、笑顔で仲間の名を呼ぶライノは何処か恐ろしかったのだろう。
「オ、オレ……オレは悪くない!」
そう叫んだ少女は急いでライノから離れ、ライノは彼女を追う。
そして――。
「ふ、二人共落ち着いてよ!?」
エスイルの訴える声もむなしく……二人は部屋の中から出て行ってしまうのだった。
一方その頃……。
「だから、その祠の場所は分からないって」
メル達は酒場の店主に祠があった場所を訪ねてはみたが帰ってきた返答は期待するものではなかった。
それでも、僅かな情報を求めて訪ねてはいたのだが、やはり、帰ってくる言葉は同じ。
「そうですか……」
メルはがっくりと項垂れ、尻尾も力なくだらんとしている。
「ごめんね」
そんな彼女の様子を見て申し訳なさそうに表情を変えた店主。
メルは首をゆっくりと横に振り。
「いえ、気にしないでください……」
「気にしないでって……そんな態度じゃ気になると思うぞ?」
リアスは彼女を指摘するが、彼女は「うん……」と言うだけで落ち込んだままだ。
折角ミケお婆ちゃんが教えてくれたお話が役に立ったのに……。
この人の話でそれが間違いじゃないって分ったのに……。
後もう少し、なのに……ううん、焦ったって駄目だってのも分かってる。
分かってるんだけど……。
メルが落ち込んでいるのはその様子から分かり……店主もまた申し訳なさそうにしている。
そんな彼女に対しリアスは頭を撫でながら口にする。
「ここにあるのは間違いなさそうだ、それは確かだろう?」
「うん……」
慰める彼の言葉は何処か安心出来る物で、メルは思わずへにゃりと表情を崩す。
そこが酒場であり、店主以外にも人が居るという事を忘れていたのだ。
「ははははは! なんか甘ったるい雰囲気だなぁ!」
横から聞こえた声にびくりとし、尻尾を立てるメル。
恐る恐るそちらの方へと向くと――。
「ちょっとシバさん? からかわないの」
店主も彼をたしなめるような言葉を使う。
「いやぁ、悪い悪い懐かしい名を聞いてな……ミケは本当幾つになっても美しいままだったからなぁ!」
昼間だというのに酒を煽る森族の老人。
彼の右腕は切り落とされており、左腕で酒を注ぎそれを口へと運ぶ……。
しかし、気になる事はそれだけではなかった。
右目には額から頬の方に続く切り傷があり、露出している左腕にも傷跡が残っている。
まさに歴戦の戦士。
そんな男性がそこには居たのだ……。
「ん?」
彼はメル達が黙っている事を疑問に思ったのだろう、首を傾げる。
そして同時に手入れをされていないぼさぼさの大きな尻尾が大きく揺れた。
「あ、あの……」
メルは彼の姿に圧倒された。
普通なら死んでもおかしくない……そう思ったからだ。
「ああ、こんな小っちゃい傷の事は気にすんな! で、キク嬢ちゃんは何だってミケの話をしていたんだ? なぁ!」
なぁ! とは口癖なのだろうか? メルはそんな事も疑問に思いつつ、話を聞きのがさなかった。
「あ、あの! この街に昔からいる人なんですか?」
ミケとは恐らくメルが知る人だろう。
そう考え尋ねるとシバと呼ばれた老人はメル達の方へと向く。
「俺達ある場所を探してるんだ」
そして、リアスがそう言うと老人は「はははははは」と笑い。
「なんだ? ミケの話は後にして聞いてやろうじゃないか、なぁ!」
と酒を煽る。
「実は――」
メルは彼へと話す。
リラーグから来た事、この地に伝わる伝承を探している事。
そして、それが精霊の道具である事。
すると、彼は――。
「祠……か……確かに戦争で壊れちまったなぁ! そのままだから掘り起こせるか分からんが、場所なら覚えてるぞ、なぁ!」
そう口にするといつの間にか注文していたのだろう、一口大に切ってある鮮やかな黄色の食べ物を口へと運び、ぽりぽりという音が辺りへと響く……。




