318話 伝承を求めて……エスイルパーティー
メル達は酒場へと訪れる。
そこでは懐かしい食べ物があり、メルは思わず注文をしてしまった。
だが、その酒場ではメルが求めた情報もあり……。
一方城で待つエスイル達は?
一方同時刻……。
城に残ったエスイル達はそのまま待つのももったいないと考えた。
だが、王はまだ来ない。
「やっぱり普段は忙しいのね、前は運が良かったのかもしれないわ」
「とはいえ、確かに暇だな……」
ライノの言葉に頷いたシュレムだったが、暇である事が辛いのだろう口をとがらせながらぼやく。
「……お城の人ってなにも知らないの?」
そんな中、エスイルは首を傾げ二人に尋ねる。
その言葉の意味に気が付かず首をひねるシュレム。
対し、その言葉の意味を理解してライノは手のひらと拳を合わせると……。
「そうね、二人にデー……おほん、情報収集をしてもらってる間にアタシ達は何もしないなんて悪いわよね?」
「ライノの旦那……デーってなんだ? デーって」
途中まで言いかけた言葉が気になるシュレムはライノに尋ねるが、ライノはそれに答える事無くエスイルの方へと向く。
「城の中に居るのなら問題はないわ……メルちゃん達はね、でも王様はどうするの? 移動したら困るのは王様よ?」
そう、王は此処にメル達を案内させた。
連絡は此処に来るはずだ……だが、移動をしてしまえば兵士も探す手間もある。
「それには僕に考えがあるんだ!」
エスイルはその事は既に考えていたのだろう、笑みを浮かべて答える。
「王様に伝言をお願いして、手の空いてる兵士さんとかお手伝いさんからここに来てもらうんだ。そうすれば、此処を動かないで済むよ!」
「おお! エスイル凄いな! ……オレには思いつかない手だ!」
シュレムはエスイルの頭をぐりぐりと撫で始め、エスイルは笑みを浮かべつつも困った様にその手を退けようとする。
「シュレムお姉ちゃん痛いよ……」
「はははは! 流石はエスイルだな!!」
そんな二人の様子を見て、笑みをこぼしたライノはうんうんと頷き。
「そうね、エスイルちゃんの案で聞いてみましょう」
ライノはそう言うと部屋の外へと向かい。
エスイルはトコトコと彼の後を追って行く……すると、彼は近くに居た兵士に先程の事を話している最中だった。
その話も用件を伝えるだけだ、すぐに済み兵士は礼を一つすると去って行く……。
「あら?」
「えっと大丈夫だった? ライノお兄ちゃん……」
「ええ、話を伝えるぐらいならすぐに出来るって言ってたわ」
彼はそう言うと、片目を瞑り頬に手を当てる。
「ただ、そうは言っても相手は王様多少の時間はかかるでしょうね。もう少し待ってましょう?」
「うん!」
エスイルが頷くと、部屋の中からシュレムが顔を出し……面倒そうに溜息をつく。
「まだ待つのか……やっぱりメルと一緒に行けばよかったかもしれないな」
「そう言わないの」
ライノはそう言うと二人を部屋へと入るように促すのだった。
暫くすると、一人の兵士が部屋へと尋ねて来た。
エスイル達はその兵士が王の伝言を伝えに来たと思い部屋へと通す。
すると、彼は……。
「シュターク王はまだ時間が掛かるとの事です。伝言の件はすぐに城の中へと伝わるでしょう……まずは私からという事でしたので……」
彼はそう言うとライノへと目を向ける。
「それで、話とは何の事でしょうか?」
「……ええ、この辺りでなにか伝承はあるかしら? 守り神? みたいなのだけど」
ライノの質問に兵士は考えるそぶりを見るが、すぐに頭を下げた。
彼は申し訳なさそうに表情を歪め……。
「すみません、私は良く分からないですね」
「分からない? 元がこの国じゃなくてもそう言った話ってあるんじゃないのか?」
シュレムは頭をかきながらそう呟き……。
「確かに私の父はシュターク王がこの国へ戦争を仕掛けた時の者です、ですが……私は元の国がただ貧しかったとしか記憶にございません」
彼はそう言うと再び頭を下げた。
「役に立てそうもなくすみません……」
「いえ、良いのよ……ただあなた位の年の人は皆そうなのかしら?」
ライノはそう尋ねると彼は――。
「いえ、決してそんな事は無いでしょう……私の家が特に貧しかった……という事ですので」
昔を思い出してだろうか?
何処か辛そうな彼の表情にいたたまれなくなったエスイルは頭を下げる。
「あ、ありがとうございました」
そして、礼を告げると兵士はもう一度頭を下げると部屋から去って行った。
「おいおい、なんだか……情報が得られなさそうな気もしてきたぞ」
彼の去った扉へと目を向けたシュレムは溜息交じりにそう呟く……。
「まだ一人目よ? そう判断するには早いわ」
ライノは片目を瞑り頬に人差し指を当てるとそうシュレムに伝える。
そして、再び扉が叩かれるのを待つのだった。
しかし……。
「だ、誰も来ないね?」
最初の兵士以降、忙しいのか部屋に現れる者は居なかった。
ただ待つだけが勿体ないと感じ、出した案だったが兵士も働いている。
当然暇がある者はそうそう居らず。
また暇があったとしても休憩しているだろう……。
「やっぱり聞きに行った方が良かったのかな……?」
エスイルは自分の案が失敗に終わったとがっくりしていると、ようやく扉が叩かれ……。
「すみません、今お話は大丈夫でしょうか?」
森族の女性が一人、部屋へと訪れたのだった。




