315話 王城へ
森族の老婆ミケ……それはメルにとって大事な家族の一人だ。
だが、彼女はもういない……その命は失われたのだ。
メルはそんな彼女との思い出を大事にしていた……しかし、ただ一つだけ忘れていたことがある。
ドリアードを束ねる王ティエラの事だった……。
メルはそのことを思い出すとこの土地に道具があると信じる事が出来たのだった。
手掛かりは見つかった。
だが、そのティエラという精霊が祀られている場所は分からないままだ。
「取りあえず……今の王様にも確認してみよう?」
メルはそう仲間達に伝え、城へと向かう事にした。
「メル! 待った!!」
だが、すぐに止められてしまい、メルは首を傾げていると申し訳なさそうな表情を浮かべたリアスは……。
「そっちは城じゃない」
「え? でもお城見えるよ?」
メルは迷うはずがないと思ったが当然だ。
何故なら彼女の目には城がちゃんと映っている。
だが、それでもリアスは違うと言い……。
「確かそっちからだと行き止まりになるのよね? 少しだけ遠回りしないといけない作りみたいよ?」
その理由をライノが教えてくれた。
「そ、そうだったの?」
メルは困った様に笑い。
前に城に行った時の事を思い出す。
だが、道までは思い出す事は出来ず……。
「わ、わからない……」
やはり道が分からない事にがっくりと項垂れたメルは尻尾と耳を垂らす。
そして、ゆっくりと顔を上げるとすぐに仲間達へと目を向け……。
「い、行こうか?」
引きつった笑みを浮かべた。
メル達はその後すぐに王城へと辿り着く。
そして、兵士に用件を伝えるとすぐに一つの部屋へと案内をされ……。
「今日は忙しく、時間が掛かると思いますが、必ず王に取り次ぎますので」
と頭を下げた兵士はそのまま去って行ってしまった。
メル達が案内された場所はどうやら寝泊まりも出来る部屋の様だ。
大きな部屋に戸惑いを隠せない彼女達だったが……。
「今日は休んでおいた方が良いって事かな……」
エスイルはふかふかのベッドの上に腰かけると疑問を浮かべる。
「そうね、旅の疲れもあるしそうしましょうか?」
王を待ちつつその日は休むことに決めたメル達。
「それにしても、ふかふかだな……寝れるか心配だ」
リアスはそう笑うとメルもまた笑みを浮かべた。
「でも、気持ちよさそうだよ?」
「それは分かってる、ただ前の時はもう少し普通のベッドだったろ? だからちゃんと寝れるか心配でさ」
リアスは苦笑いのままそう告げ、仲間達は彼の心配事に声をそろえて笑うのだった。
するとリアスは……。
「そんなに笑う事は無いだろ……」
「ごめん、でも突然言い始めたから……」
ちょっと不機嫌そうな彼に謝罪の言葉を告げたメル。
そんな自分達のやり取りがおかしかったのだろう、リアスもまた笑い声を上げた。
それから暫くして、食事が運ばれてきたが王の姿は無かった。
忙しく顔を見せることが出来ないのだろう。
メル達はそう理解し、食事を済ませると眠りにつく……。
疲れていた事もあり、すぐに寝息を立てる仲間達の中メルは一人考え事をしていた。
それは単純な事だ。
もし、此処に精霊の道具があるなら……。
やっぱり影響が出ちゃうよね?
そう考えた彼女はベッドから抜け出すと……近くに居る精霊に願いを告げる。
「お願いアリア、ユーリママ達に伝えて……もしかしたらレライが大変な事になるかもしれないって……」
『大変な事?』
疑問を浮かべるアリアに対しメルは頷き……。
「うん、精霊の道具を取ったら土地が枯れるかもしれない、もしそうなったらレライに住んでいる人達が困っちゃうよ……」
孤児院までならレライがある。
何とかなっただろう……しかし、被害に遭うのが都市となれば話が変わってくる。
他に支援を出来る国が必要だ。
だが、リラーグも国一つを支えることなどは出来ない。
そうなれば何かしらの対策が必要だ。
そして、それが出来るとすれば……。
「だからユーリママに土地が枯れないように魔法を使ってもらうの……これは私達じゃ出来ない事だから……」
そう、メルが考えたのは世界で唯一存在する本の精霊ソティル。
彼女の力を借りる事の出来る母ユーリに頼むということだった。
母を頼ればまたリラーグの民からは何かを思われるかもしれない、だが……レライを見捨てる訳にはいかない。
そう彼女は考えアリアへと頼んでいるのだ。
『分かった!』
そして、それは同時に精霊達の住処を奪いたくないというメルの想いでもあり……それを理解したアリアは笑みを浮かべると窓から飛び立った。
メルはその後ろ姿が見えなくなるまで見送った後、ベッドへと潜り込み。
ようやく眠りにつくのだった。
翌朝……。
メル達が目を覚ますと朝食が運ばれて来た。
だが、レライの王シュタークの姿が無い。
「王様にはまだ会えないのか?」
しびれを切らしたのだろう、シュレムがメイドへと尋ねると……。
「すみません、恐らく陽が真上に来るまでには片付くだろうとおっしゃっておりました」
頭を下げ申し訳なさそうにそう口にしたメイドにメルは手をぱたぱたとさせる。
「気にしないでください。私達は大丈夫ですから」
「本当に申し訳ございません」
メルの言葉を受けてもなお謝る女性に困り果てつつも食事に手を付けたメルは少し睨むようにシュレムを見る。
すると――。
「えっと、まぁ……そうだな」
気まずくなったのかシュレムは視線をあっちこっちと迷わせながら良く分からない返答をするのだった。




