312話 失言
ゴブリンのことをシスターへと伝えたメル達。
しかし、彼女はもう始末をしたと口にした。
彼女はゴブリンのことを聞き、敵意はないと感じたのだろうが信じてはいないようだ……。
メル達は道具のことは聞けそうにないと思いつつ、王の意志だけは伝えるたのだが……。
「話はそれだけですか?」
シスターは溜息をつき、沈黙を破る。
「ゴブリンの脅威はありませんし、此処を去らなくてよいのでしたらもう話は終わりですよね?」
彼女はそう言うなり立ちあがりその場を去ろうとする。
だがメル達には別の目的がある。
「あ、いえ……まだ一つ!」
再び話を切り出すとシスターは心底面倒そうな顔を浮かべた。
余り自分達に関わって欲しくないという事だろうか?
「なんでしょうか?」
「その、この辺に不思議な道具はありませんか? 例えば土地を豊かにするとか……」
慌てて口にしてしまった事にメルはハッとし口をふさぐ。
だが、彼女は決して表情を変えず……。
「……マジックアイテムって事ですか?」
そう答えてくれた。
メルはそのことにほっとし、息をゆっくりと吐きだした。
「質問をしておいて返答は無しですか?」
だが、すぐに返事か帰ってこなかったことに不機嫌になったシスターに対しメル達は慌てて首を縦に振る。
「それは、この土地が豊かなのと関係があるのでしょうか?」
「分からないです……」
ここだけ豊かというのは気になる。
だが、精霊が住みやすければそれはありえない事ではない。
道具のお蔭とは言い辛いのだ。
「……ただ、その道具がどうしても必要なんです。何か知らないですか?」
メルの質問にシスターは少し考えるそぶりを見せる。
だが……。
「いえ、知りませんわ、私達が来た時にはもう此処は豊かでしたから」
「そう……ですか……」
返ってきた言葉はそっけない物だった。
「何かちょっとした情報だけでも良いのよ? ないかしら?」
だが、ライノはそれでも食いつく……しかし、シスターは静かに首を横に振り。
「分りません、少なくとも私と子供達が出歩く範囲にはありませんわ」
再び帰ってきた返答はやはり何も分からないという事だ。
落胆するメル達、それを見てシスターは申し訳ないと思ったのだろうか?
「では、お茶だけでもゆっくりしていってください」
とだけ告げると今度こそ席を立ってしまうのだった。
入れ違いに子供達は良い香りのするお茶を持ってきて、メル達の目の前に置く……。
「あれ? シスターは?」
「どこに行ったの?」
二人は首を傾げメル達に問い。
メルは――。
「お話が終わったから何処かに行ったよ?」
と口にすると二人はシスターを探しに行ってしまう。
「…………なぁ、本当にあの人知らないのか?」
家の主が誰も居なくなった部屋で珍しく大人しかったシュレムは話を切り出した。
「さぁな……ただ、悪い人ではない……その、言葉使いは……悪いけどな?」
引きつった顔でそう言うのはリアス。
メルも悪人ではないという所には同意見だった。
だが、精霊の道具に関しては分からない。
特別変だったという事は無いが……。
「子供達を守る為なら嘘だってつくかもしれないし……わからないわね」
ライノの言う通りだ。
あの人はきっと子供を守る為なら嘘をつくだろうという事はメルにも分かった。
「でも……」
メルは仲間達を見回し、何かを言いかける。
「メルお姉ちゃんはあのシスターさんを信じたいんだよね?」
「うん……信じても良いと思う……きっと本当に知らないんだよ」
目が泳いだ様子も慌てた様子も無かった。
だからと言って信頼に足るか? と言われるとメルははっきりとは言えないがそれでも、彼女は信用していいのでは? と考えたのだ。
「小さな子達からも好かれてるみたいだし、悪い人だったらきっと懐かないよ」
「メル……」
呆れた様子のリアスにメルは慌てたようにあはは……と笑う。
すると彼は溜息をつき……。
「悪人だから好かれないなんて事は無い。子供相手には善人になる人だってきっといる……とはいえ、俺もメルの意見には賛成だ」
「……ほんと?」
てっきり否定されると思っていたメルは目を丸めリアスを見つめる。
すると機能の事を思い出し途端に恥ずかしくなった彼女は顔を赤くするとそっと視線をずらす。
だが尻尾は揺れており、口元は緩み……その瞳は潤んでいた。
「……オレもだな、美人さんが嘘をつくとは思えない! が……リアスてめー……メルに何したんだよ?」
シュレムは理由になっていない理由を口にした後、机に身を乗り出しリアスを睨む。
メルの様子からやはり何かがあったと思ったのだろう。
「い、いや……」
だが、リアスも昨夜の事を言われるとしどろもどろになってしまう……。
「と、ととととととにかく! ここに情報が無いなら自分達で探すしかないよ!」
「メルお姉ちゃんどうしたの?」
慌てふためくメルに対しエスイルは首を傾げ訊ねる。
だが、メルはあわあわとするだけで答えず、エスイルは耳をピンと立て再び首を傾げた。
「えっと……情報だけどドリアードに聞いたらどうかな?」
そして、そう提案するとメル達はぴたりと固まった。
「ぼ、僕変な事言っちゃった?」
エスイルはおずおずとするも、メルは立ち上がると少年を抱き寄せる。
「わわ!?」
「エスイル! それだよ! ドリアードに聞けばわかるかもしれない!!」
メルは差し込んできた希望に笑みを浮かべ、喜ぶ。
仲間達からもエスイルを褒める言葉が飛び交うのだった。




