309話 リアスとの夜
焚火の前、メルとリアスは話をしていた。
そう、メルはリアスの不安を打ち明けられていたのだ。
そんな彼に対しメルは「なんとかする」と口にし抱きしめたのだった……。
「メ、メル!?」
急に抱き着かれる結果になったリアスは焦りながらメルの名を呼ぶ。
だが、本人はそんな事を気にしていないのだろう、そっとリアスを抱き寄せるだけだ。
「ま、まて!? メル!?」
腕にさらに力が入りかけた事に気が付いたリアスは慌てて振りほどくと――。
「きゃ!?」
メルは小さな悲鳴を上げ、倒れそうになる。
リアスはそれに気が付き慌てて支えると……。
「「あ……」」
二人の瞳はお互いを写し……。
メルはリアスの赤い顔を見ると自身も頬が染まっていくのを感じた。
そして、静かに目を閉じ……やがてメルは自身の唇に柔らかいものが押し当てられるのに気が付いた。
ゆっくりと瞼を持ち上げると目の前にはリアスの顔があり……彼女の心臓は早鐘のようにバクバクとなり続ける。
長い時間そうしていたのだろうか?
それとも短い時間だったのだろうか?
二人には分からなかったが、ゆっくりと離れていく……すると――。
「メルお姉ちゃん?」
「「!?」」
エスイルの声に二人は驚き、慌てて離れる。
そして彼の方へと向くと……寝ぼけているのだろう瞼を擦る少年の姿がそこにはあった。
「エ、エエエエエエスイル!? ど、どうしたの?」
先程から心臓は痛いぐらいバクバクと鳴っていたが、更にそれが強まった気がしたメル。
い、い、いいいい今のを見られたのかな!?
も、もしそ、そうそそそそそそうだったら恥ずかしいよ……。
ますます顔がほてるのを感じ、エスイルの様子をうかがうメル。
すると……。
「メルお姉ちゃん、どうしたの? それにリアスお兄ちゃんも……」
慌てふためく二人を見て驚いたのだろう、きょとんとしている少年の質問に二人はほっと息をつく。
「な、何でもない……ただ急に声が聞こえてびっくりしただけだ」
「そ、そうなんだ……」
リアスの答えに釈然としない様子のエスイルだったが、近くにあった桶から水をすくい顔を洗うと……。
一瞬リアスの方を睨んだ気がした。
しかし、すぐにいつもの表情へと戻り……。
「もうそろそろ僕達の番だよね?」
と笑みを浮かべる。
そして、頷くメル達を確認するとライノとシュレムを起こしにかかり、のそのそと起きるシュレムとは別にライノは微笑みながら……。
「若いっていいわね」
という言葉を残し、メルとリアスは同時にびくりと身体をはねさせた。
「どうしたんだよ、ライノの旦那……」
「いえ、何でもないわ?」
そういう彼はメル達の方へと向くと片目を閉じる。
ぜ、絶対知られてる!? ぅぅ……恥ずかしいよぅ……。
メルは顔を赤くしながら、胸のあたりを押さえると先程の事を思い出しわたわたとしはじめる。
すると、それを見ていたライノは笑みを浮かべながら……。
「早く寝ちゃいなさい? ね?」
と言い、メルは顔を赤くしたまま頷くと布団の中へと潜り込む。
「ぅぅぅ~~~~」
そして、唸り声をあげ、仲間がいる所で迂闊な事をしたと後悔をした。
今度は絶対に皆のいない所でって……ぅぅ、何で私そんなこと考えて……。
ぐるぐると回る思考の所為で彼女が眠れるはずもなく、次の交代の時間まで悶々とするメルだった。
翌朝、メル達は再び出発をし歩き始める。
しかし、メルはというと……。
絶対にみられて……それに私初めて……ぅぅ、ぅぅぅ……。
「メ、メル?」
彼女の様子が気になったのだろう、リアスは心配そうな表情を浮かべる。
そんな彼に対し……。
「リアスは恥ずかしくないの?」
小さな声で尋ねると……彼は瞬く間に赤くなり……。
「…………」
黙り込んでしまった。
恥ずかしいのは自分だけではない、という事に気が付いたメルはほっとはするものの……。
なんで、私あんな事しちゃったんだろう……そ、その……キ、キキキキスはその、良いとして……って何を考えて!?
メルは夜の事を考えわたわたとする。
すると、二人の様子に気が付いたシュレムは……。
「怪しいな……」
と呟き、エスイルも――。
「う、うん、僕もそう思う……」
と頷く、ただ一人事情を知っているらしいライノだけは――。
「ふふふ、若いっていいわね」
と笑い。
「何か知ってるのか? ライノの旦那?」
「僕も、知りたいな……」
二人はライノへと問い詰め、ライノは一瞬瞳を丸めたものの笑みを浮かべると……。
「実はね二人共……夜にメルちゃん……」
「ライノさん!?」
喋り始めたライノを慌てて止めるメル。
それに続きリアスもまた彼を止め……。
「ちょっとそれはないんじゃないか!?」
赤い顔をますます赤くした二人に片目を閉じ微笑むライノ。
「冗談よ、流石に言わないわ」
彼はそう言うと、口の前に指を一本立てて黙秘を示した。
「何だよ……」
そんな彼に対し、文句があるらしいシュレムは不貞腐れると前へ向き直り歩き始めるのだった。




