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私の夢は冒険者だったのにっ!!  作者: ウニア・キサラギ
14章 お告げを聞く者
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308話 不安

 リアスの訴える疑問。

 それはエルフは嘘をついているのではないか? というものだった。

 しかし、精霊である以上エルフは嘘をつけない。

 そう思い込んでいたメルはあることを思い出す。

 それは母ユーリがエルフを神と呼んだ時のことだ。

 神であれば嘘をつけるかもしれない……そんな不安を覚えつつメル達は歩みを進めるのだった。


 メルはエルフへの不安を抱えつつも先へと進む。

 嘘をつかれている可能性。

 それがあろうともメル達は立ち止まるわけにはいかなかった。

 世界の危機と言われている彼女達には他に手掛かりがないからだ。

 なによりも……。


 それに、可能性は可能性……もし危機が本当だったら、このまま何もしなかった時に絶対に後悔しちゃうよ……。

 私は決めたんだ……だから、此処で足を止める訳にはいかない。


 メルはそう思いながら、歩き続けていたのだ。


「今日はこの辺で……」


 そんな中、リアスはそう話を切り出した。

 辺りを見ればもう陽は傾いている。

 暗くなる前に野宿の準備をした方が良いだろう。


「そうだね、そうしよう?」


 メルは頷き、少し道から外れた所に野宿の跡らしいものを見つけ指をさす。


「あっち、あそこにしよう?」

「なんでだ?」


 シュレムは疑問を浮かべるが、メルが指を向けた野宿の後。

 そこには彼女が選んだ理由があった。


「形が残ってるわね、多分後で使う人のために残しておいてくれたのかもしれないわ」


 そう、焚火を起こすにしても料理をするにしても準備は必要だ。

 だが、そこにはある程度形になっている焚火の跡がある。

 ならば少し整えて火を起こすだけで良い。

 メルはそう思い、ライノの言った言葉にうんうんと頷く。


「わかった、ありがたく使わせてもらおう」


 そして、リアスもまた頷くのだが……。


「もしも、山賊か何かが使ってる場所だったらどうするんだ? 戻ってくるかもしれないぞ?」


 シュレムは何処か疑うような言葉を放つ。

 メルは自分の意見が彼女に通らなかった事に驚くも、彼女の言葉もまたもっともな物だと考え始め……。


「でも、山賊さんや野盗さんってこんな分かりやすい場所で野宿するの?」


 エスイルの素朴な疑問でそれは打ち消された。

 確かに道からは外れてはいる。

 だが、死角にもなっていないその場所は野党や山賊が野宿するにはあまりにも無警戒すぎる。

 やっていないと言い切る事は出来ないが、それでも可能性としては低いだろう。


 ……可能性……か……。


 メルはそう考えた時、ふと昼間の事を思い出しそうになり頭を左右へと振り、尻尾を大きく揺らす。


「と、とにかくあそこにしよう? こだわる必要はないけど……ここらへんは何処も見晴らしが良いし、ここに作っても同じだよ?」

「まぁ、確かにそう言われたらそうだな! よし、オレは薪を集めてくる!」


 シュレムはそう言うと警戒していたのが嘘のように真っ先に野宿跡へと向かっていく。

 その様子を見て思わずボーっとしてしまう一行だったが……。


「何してるんだよ! 早く来いよー!」


 という声に反応し、慌てて彼女の後を追うのだった。




 その日の夜、パチパチという音を立てる焚火を囲いメル達は野宿をしていた。

 最初は警戒していたシュレムも今はその様子はなく……また、野盗などが現れる気配もない。

 しかし、無警戒に全員で寝るなどと言う事は彼女達はするはずもなく、交代で睡眠をとるようにし……。


「ふわぁ……」


 眠そうに欠伸をしたのはメルだ。

 彼女は寝ないようにと頬を叩くと一緒に起きているリアスの方へと目を向ける。

 先程、彼が言っていた事……エルフの事を思い出し、不安になったメルはすぐに視線をずらすと今度は揺れる炎を見つめた。

 以前にもこうやって二人で焚火の前で話をしたことがある。

 だが、その時とは状況が違う事にメルは若干の戸惑いを覚えていた。


「…………」

「なぁ、メル」


 そんな中、沈黙を破ったのはリアスだ。

 メルは答える事もなく彼の方へと視線だけを動かす。

 すると物思いにふける彼の横顔があり、思わずドキリと心臓が跳ねた。


「ど、どうしたの?」


 顔が熱くなるのを感じ、どこか落ち着かない自分を落ち着かせようと前髪をいじり出すメル。

 しかし、耳は落ち着きなく動き、尻尾は何故か音を立て揺れている。

 だが、それはほとんど無意識だったのだろう、メルは気が付かずに必死に普段を装った。

 リアスはメルが普段と違う事に気が付いてはいた。

 しかし、彼は――。


「もし、もしもだ……メルと俺が会ったエルフが嘘をついていたとして、俺達が世界を滅ぼす手助けをしているとして……メルは最後に何がしたい?」

「…………え?」


 質問された言葉はメルの思考を止めた。

 それだけではない、彼女の耳と尻尾もピタリと止まってしまったのだ。


「最後……最後って……」


 何故そんな話になるのだろうか? メルが疑問に思うと……。


「……いや、ゴメン……らしくないな、こんな変な質問をするなんてさ……」


 リアスはメルが黙った事で笑いながら答える。

 だが、その笑顔はぎこちなく、彼も不安なんだとメルは気が付き……。

 メルは思わず彼の頭へと手を伸ばしそっと抱き寄せる。


「!? メ、メル!?」


 慌てるリアスだったが、先程までとは違いメルは不思議と落ち着いており……彼へと優し気な声で告げた。


「大丈夫、大丈夫だよ……きっとなんとかなる。なんとか……するから」


 確信はない。

 だが、その思いは本当だ。

 メルの旅の目的は世界を救う事ではない。

 例え、それが使命だと言われても彼女が最初に旅立ちを決意したあの日の目的はずっと変わっていないのだ。

 リアスを守りたい。

 ただそれだけは変えようのない事実だった。

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