297話 精霊の道具と犠牲
メル達はレライの王と話すメル達。
どうやら彼には道具のありか……その心当たりがあるみたいだ。
しかし、問題があるようで……?
黙り込むメル達。
フォーグ地方、特にレライの周辺は作物が豊富に取れる。
しかし、奥地に行けばそうではなく貧困の国ともいえるのだ。
だからこそ、戦争が起き……メルの母フィーナの国は目の前の王へと奪われた。
もし、作物が取れるという場所がその一部であれば困る人々が出てしまうのは当然だ。
だからこそ、他の仲間よりもメルは事を深刻に考えていた。
「何を迷っている!!」
だがそんな彼女達を叱咤するのはフォーグを収める王の一人シュターク。
「明日の危機は確かに避けるべきだ……だが、明日を生き繋いだとしても滅ぶのなら、意味がない!! お前達はそうしないためにこの地に足を踏み下ろしたのではないか!?」
王の言葉は正しく……理解出来た。
しかし、そう分っていてもメルは――行こうとは言えなかった。
「お前の母なら……ユーリ殿達なら、方法を考え行動に移しているはずだ! 娘だからそうしろとは言わない。だが、そうやって立ち止まっても良い結果は訪れん! 違うか?」
分かってるよ……でも、ようやく安心して暮らせる人達を傷つける事になるなんて……。
「そうしてお前達は世界が滅ぶのを指をくわえて待っているのか?」
「ち、ちが!?」
メルは慌てて否定するが、彼女達の様子からそう取られてもおかしくはないだろう。
そんな彼女達に対し王シュタークは……。
「それに、精霊を司る道具が本当にあるとしてそれが失われたとして作物が育たたないとは限らないだろう?」
「…………」
メルは彼の言葉に再び黙り込む。
……確かに、道具が無くなったとしてもすぐに影響するとは思えない。
道具の影響で過剰に育つ様になった状況が生まれたとしていたとしても……徐々に枯れていくはず。
元々精霊に住みやすい場所を提供するのが道具の役割だったら、今その場所はドリアードにとって住みやすい土地。
しかし、現状は他にも住みやすい作物や自然があるんだよね?
なら、武器を抜いてもすぐに精霊が減る事は無い……と思う。
だとしたら……食物が育つ可能性は十分……あるのかな?
ううん、もしなかったとしても私達が動かないと世界がエルフ達に滅ぼされちゃう……。
それは本当の事なんだって思う。
なら、私が……ううん私達がやらなきゃいけない事は一つ……精霊の力を解放してルーフに向かわないと!
メルは決意をもってゆっくりと顔を王へと向ける。
すると王は笑みを浮かべ……。
「どうやら意志は固まったようだな」
「決意ってメル……良いのか?」
王の言葉でメルの変化を感じたリアスは驚いたような表情を浮かべる。
そんな彼にメルは頷き……。
「うん! そうしないと皆が苦しむんだから……」
メルはそう言うと王へと再び向き直り。
「それでシュターク王、その場所は何処なんですか?」
メルは耳を立て尻尾を一度大きく振り訊ねる。
するとシュターク王は頷き……。
「ああ、このレライから北東に進んだ所にある。今までは食物が育ちにくい土地だった……それ故に人が住んでいなかった場所だ」
「でもなんで急にそこで食物が育つって分ったのかしら? 人が居なかったのよね?」
ライノの質問に再び王は頷く。
するとエスイルは首を傾げ……。
「何かあったの? 魔物が居たり……それで調査に出たとか……」
思いついた事を王へと尋ねると王は小さな少年に微笑み。
「いや、違う……最近になってそこに住む者が出たのだ……いや、住まざるを終えなかったと言った方が良いかもしれないな」
枯れた土地に? 何かある人なのかな?
メルはそんな所に住むという事は何か裏があるのではないか? と疑うが、王から告げられたのは……。
「そこには孤児院が出来ている……住む場所もなく、困っていた子供達が良き着いた先だ……私は彼らの様子を見て必要であれば支援したいと思い兵を派遣した」
「それで作物が育っているのを知ったって事か……」
リアスの言葉に「うむ」と答えた王はそのまま視線をメルへと戻す。
「行ってみるか?」
「…………はい」
よりにもよって子供達、それも孤児達の生活を奪ってしまうかもしれない。
メルはそう考えると心が痛かったが、それも頷いた。
「私にどこまでできるか分からないですけど、その子達の事はシルトさんにもかけ合ってみます」
だが、そのまま放って置く訳にはいかない。
そう感じたメルは自然と口にした。
「ああ、頼む……では場所を教えよう」
その答えに満足したのか、シュターク王は立ちあがると机へと地図を広げる。
世界地図ではなくフォーグ地方だけが描かれている地図だ。
それも精密な……事細かに描かれた地図に王は指を乗せ……。
「ここが王都レライ……そして、此処から北東……ここだ」
そこには何らかの印なのだろう、色が変わっている場所があった。
見れば他にも色が変わっている場所がある。
「この色の変わってる場所って何?」
「色の変わっている場所は作物が育ちにくい所だ……フォーグは場所によって育ちやすさが違うのでな、こうやって記し、調査をしている」
なるほど、と一同は頷き……先ほど示された場所を見る。
そこは色が他よりも濃く……メルは本来であれば他の土地よりもさらに育ちにくいのでは? と考えたが……。
もしそれを聞けば、決意が揺らぐ気がして口を閉ざした……。




