294話 新たな仲間
ようやくユーリ達が帰ってきた。
そこにはシュレムとシアの姿もあり、シアは娘であるシュレムをメルへと託す。
しかし、シュレムには武器がない。
新たな武器を作るにも時間がかかる……それを理解し、シュレムはナタリアにメル達の旅への同行を頼んだ。
そう……それは転移魔法を使えるナタリアだからこそ頼めることだった。
「さて……」
うきうきとした様子のナタリアは部屋から自身の荷物を取り出す。
「ナタリア……分かってると思うけど……」
そんな祖母をメルはじっと見ていたが、メルの母であるユーリは心配そうに見つめる。
するとナタリアは――。
「分っている。ちゃんと薬も持っていく」
心配された事が嬉しいのか表情を崩す祖母は年相応とはとても言えない可愛らしさがある。
だが、母ユーリとフィーナは溜息をつき。
「「違うって」」
揃って声を出す二人は再び溜息をつくと、その理由をナタリアへと告げる。
「だってナタリアは……」
「メルに甘いんだから甘やかしたら駄目だよ?」
「……うぐ!?」
それを聞きピタリと固まったナタリア。
まるで立て付けが悪い扉の様に視線は二人の元へと向かい。
「だ、大丈夫だ……もうシアに怒られるのは勘弁だからな……」
彼女の言葉を引き金に部屋の中には笑い声が聞こえ始める。
それに釣られナタリアも笑うのだが……。
「メル様? ナタリア様が好き嫌いをしない様しっかりと見てくださいね?」
「ぅぅ!? ちょっと待てシア!? 何故孫であるメルに見張られ――!?」
焦るナタリアに対し、断る事の出来ないメルは首をコクコクと縦に振り。
「わ、わかりました」
と約束をする。
するとシアはにっこりと微笑み、対しナタリアはこの世の終わりの様な表情を浮かべる。
「メル!? 分かるだろ? メルには……嫌いな物は嫌いだという事は分かるだろう?」
「えっと、でも私は調理方法を変えれば食べれるし……」
申し訳なさそうに告げたメルに対し、まるで裏切られたような表情を浮かべるナタリア。
「えっと……ナタリア?」
「さぁ、行くとするか」
心配するメルを余所にふらふらと立ちあがったナタリアは遠い目をしながら荷物を背負う。
「ナタリア!?」
そんな彼女を慌ててメル達は追う事になった。
飛龍船……龍に抱かれる太陽に滞在する冒険者、通称エルフの使者。
彼らを運ぶと言われている翼であり、空中都市リラーグの守り神であるデゼルトが運ぶ船だ。
この世界で唯一空を飛ぶ船。
だからこそ、リラーグは冒険者の街として有名になったのだ。
その船に冒険者として乗る。
それがメルの夢の一つでもあった……だが、今は……。
精霊を助ける為にフォーグに行く……早く、早くしないと!
メルの中には世界を救うという事よりも精霊達の安否を心配していた。
「早く乗ろう!」
「ちょっと待てメル……その、王様に言わなくて大丈夫なのか?」
焦るメルを押さえ、リアスは疑問を浮かべる。
するとその疑問にはナタリアが答えた。
「構わない、話は通してある上に元々デゼルトはユーリのドラゴンだからな」
「でも、以前は駄目だったのよね?」
ライノの言葉に頷いたナタリア……だが……。
「今回の事はちゃんと伝えてある、これで駄目だというのならアレは王失格だ……世界の危機に特別扱いも何も無い」
そう答えるとすぐにメルの方へと向き直り。
「さ、乗り込むぞ」
笑みを浮かべた。
メルはその言葉を受けるなり元気よく首を縦に振り飛龍船へと乗り込む。
すると、デゼルトはその頭をメルへと近づけ……。
『ぐるぐるぐる』
と喉を鳴らしながら甘え始めた。
くすぐったさを感じながらメルはデゼルトの頭を撫で……。
「お願いね? デゼルト」
と伝える。
「ところで……」
そんな時、ナタリアの疑問は彼女達に問われ……。
「フォーグと言っても大陸だ。狭いわけではない……どこにあるのか見当はついているのか?」
「そ、それは……」
メルがエルフに聞いた話ではフォーグと言うだけだ。
何処にあるのかなどは分からない。
そして、エルフもそれを口にしなかったという事は分からないのか、それともそれを探す事を試練と考えているのか、そのどちらかだろう。
メルは答える事が出来ずに口を閉ざす。
だが、黙っていては進めない、そう考えた彼女は……。
「まずはレライに向かいたいの、そこで王様に情報が無いか聞いて見たい」
「そうか、わかった」
祖母は笑みを浮かべ腕を組み、仲間達は頷く……。
「良し! 行こう皆!」
メルは出発の言葉を告げ、大空を仰ぎ見る。
青い空は何処までも続いていて、本当にこの世界に危機が訪れようとしているとは到底思えなかった。
だが、それは紛れもない事実だ。
そう確信できる理由はエルフが言ったからという事だけだが、精霊である以上エルフも嘘はつけないはずだ。
「デゼルト! 目的地はフォーグだよ、お願いね」
メルは母の龍に願いを告げると龍はその大きな翼を広げ、青空の様な身体を浮かべると船を掴む。
振動と共に飛び立った船は瞬く間にリラーグから離れていく……。
「早いな……流石は飛龍船だ」
感心したような声でリラーグを見下ろすリアス。
メルも目的をもって乗るのは初めてだったが、何度かは乗った事がある。
だから慣れていたと言えば慣れていたのだが……。
「エ、エスイル?」
「だ、だだだだだ大丈夫!」
少年は不慣れだったためか、物に掴まり少し震えていた。




