293話 メルのもとに集う者
ユーリ達を待つメル達の元へとやってきたのはシュレムに似た少年と生意気な少年の二人だった。
どうやら二人はメルが帰ってきたと聞き駆けつけたようだ。
しかし、憎まれ口をたたく生意気な少年フォル。
彼はライノの言葉に口を閉ざすのだった。
メルはシウス達にも何故戻って来たのかを説明する。
何故ならこのまま旅立つと言っても反対するだろうからだ。
なら、メル達が行かなければらない理由を伝えなければ……そう思ったからだ。
「そうか……」
シウスは話を聞いている間、うんうんと頷き終わると一言だけ呟いた。
「いや、シウスお兄ちゃん! そうじゃ……じゃなくて!」
それに対しフォルは兄に注意をするが、シウスはフォルの頭を撫でると……。
「メルにとって精霊は家族で親友だ。そんな子達の所為にして旅を続けたい……なんて言う訳がない。本当に助けたいから行くって言ってるんだ」
優しく語り掛けるが、納得がいかないのだろう、少年は頬を膨らませる。
確かにシウスの言うとおりであり、精霊を馬鹿にしてはメルに嫌われるという事はすぐに浮かんだからこそフォルは何も言わないのだろう。
暫く黙っていた少年はゆっくりと口を開く。
「でも、危ない事には変わりがないじゃん!」
辛うじて紡がれた言葉はまた事実であり、メルは弟が心配してくれているのだと少し嬉しくなった。
だが……。
「それでも行かなきゃ……精霊だけじゃない、皆も……」
メルはそう呟く……そんな時だ。
部屋の扉はゆっくりと空いて行き、久しぶりにもう一人の母の顔をメルは目にした。
フィーナ程ではないとはいえ、暫く顔を合わせられなかったメルはユーリの顔を見るとほっとした。
すぐに駆け寄りたい気持ちになったのだが、それは出来なかった。
気になる事があったのだ。
そこには落ち込んだ様子のシュレムも居り、にこにこと笑みを浮かべたままのシアも一緒だった。
それだけではない、明後日の方を向き震えるナタリアの姿が見え……。
「ど、どうしたの?」
と尋ねると、ナタリアは震えながら呟く……。
「ま、まさかシアにまで怒られる時代が来るとは思わなかった……」
何故そんな事になったのだろうか?
メルは疑問だったが、訪ねようにもユーリの乾いた笑いの所為だろうか?
恐ろしく問う気にはなれなかった。
「え、えっと飛龍船は乗れるんだよね?」
「う、うん……大丈夫だよ」
一体祖母に何があったのだろうか? まさかシュレムの事で怒られたのだろうか? そう考えるももしそうであれば、シュレムを迎えに誰かしら来るはずだ。
メルが首を傾げているとフィーナがこっそりとメルに教えてくれた。
「また野菜を残したんだよー? メルが食べないのはナタリアの所為なんじゃって出て行ってから皆が言っててね? 今日その……メルが帰ってくるって聞いてそれに合わせて怒るって言ってたんだよー?」
「ああ……」
メルは正しくは自分の好みではない調理法でないから食べないのであって、美味しいと感じれば野菜も食べれるのだ。
しかし、ナタリアは違う。
嫌いな物は嫌いと絶対に食べないのだ。
だからこそ余計に目立ってしまったのだろう、そうメルは感じ心の中で怒られる原因を作ってしまった事に手を合わせ謝るのだった。
「メル様?」
「な、なに?」
シアに名前を呼ばれ思わずびくりとしたメル。
だが、シアは柔らかい笑みを浮かべており、メルへと一歩近づく……。
「どうやらシュレムは言っても聞いてくれそうもありません、ですから……」
寂しそうな声の意味に気が付いたメルは頷く……。
黙って出て行ってもシュレムはまたついて来るだろう……それに彼女が居たからこそ助かった事もあるのもまた事実。
だからこそ、姉であり仲間である彼女を見限る気は無かった。
そして、それは仲間達も同じだ。
「なら、まず盾を新調して欲しい……武器が無くなったんじゃシュレムだって旅を続けるのが苦しいはずだ」
「リ、リアス……」
リアスに新たな武器の事を言われるとシュレムは何処か安心したような声を上げた。
事実、武器が無くなっている以上旅を続けるのも難しいのだ。
「……それならリーチェに言えば良い……フィー掛け合ってやれ……ただ、そうだな、それだと時間が掛かってしまうかもしれないぞ?」
武器を作るのにも時間が要る。
材料があっても一日で出来る事は無いだろう……先を急ぎたいメル達にとってはそれは痛手となる。
だが、シュレムの武器を手に入れるのもまた重要だ。
悩む一行……そんな中、真剣な表情を浮かべたシュレムは……。
「オレ残るよ……」
「……え?」
意外な言葉にメルは驚きの声を上げ、一歩前へと踏み出た。
だが、意外な程冷静なシュレムは……。
「か、勘違いするなよ? メルを見捨てる訳じゃない! ただ……盾が出来るまで足止めされるのはまずいんだろ? だったらオレは残って……ナタリアさん! あんたが代わりに行ってくれ!」
シュレムの案はその場に居る者達が驚くものだった。
世界屈指の魔法使いナタリアがメル達に付いて行くとなると心強いのは間違いない。
「構わない……シルトは何か言うかもしれんが、今回は世界の危機だ……メルのわがままとは言わせない、だが良いのか? シュレム……追いつくにしても普通の方法では時間が掛かるぞ?」
魔法使いはシュレムに問う。
すると彼女は頷き……。
「勿論! でもオレは絶対に追いつく――だからナタリアさんがいかないと駄目なんだ!!」
その言葉は殆どの者には意味が伝わらなかった。
しかし……。
「シュレム? もしかして……」
付き合いが長いメル。
「ナタリアがいかないとって……つまりそう言う事だよね……」
ナタリアとは対を成す魔法使いユーリ。
「ふふふ……なるほど、そういう事かシュレム。良いだろう……だが、いざとなったら大人を頼るんだ良いな?」
心を読むことが出来るナタリアにはそれだけで十分通じた。
「私が行ってフォーグとリラーグを繋ぐ門を作ってやろう」
それはこの世界で唯一転移魔法と言う特別な力を持つナタリアだからこそ選ばれた理由だった。




