292話 メルの家族
フィーナの手料理。
それのおいしさを知るメルは思わずにやけてしまう。
しかし、はたと気がついた。
仲間たちは普段食べたこともない物ばかりだと、不安を感じたメルはそれを説明するが……。
出てきた手料理は分厚い肉を焼いた……そうステーキだった。
食事を食べ終わったメル達は部屋の中でユーリ達を待つことにした。
そんな中、気になったのは……。
「そういえば、リリアちゃんやカルロスさんは?」
途中で分かれ母に連れていかれた仲間達の事だ。
訪ねてみるとフィーナは笑みを浮かべながら……。
「えっとね、今はお店じゃないかな? リリアちゃんはそのお手伝いをしてるよ?」
「そっか……」
会いたかったんだけど……仕事中じゃ難しいよね?
会いに行くという手もあったが、今は先を急ぎたいメル達。
母達が帰ってきたらすぐにでも領主の所へと向かい飛龍艇へと乗り込むつもりだ。
休むのはそれからでも遅くはない、そう考えていた。
事実……飛龍艇は空の船ではあるがデゼルトが運んでくれるため快適なのだ。
揺れはしてもまるでゆりかごの様で心地が良い。
そんな事を考えていると……。
「メルが帰ってるって聞いたけど……」
ノックの音と共には言って来たのは……。
「シュレム?」
リアスは入ってきた人物の顔を見て思わずつぶやいた名前。
しかし、その人物には胸のふくらみが無くすぐに首を傾げた。
「ああ、シュレムは妹だよ……双子の」
そう言ってにかっと笑う少年を見てメルは途端に笑みを浮かべた。
「シウスお兄ちゃん!」
兄、と呼んだその人は勿論血が繋がっている訳ではない。
だが義理の兄……いや、産まれた時からずっと一緒に居る兄だ。
「無事なようで何よりだメル! 全くお前は昔から無茶を……」
何事も無かったことに喜んでいたシウスだったが、すぐにお説教が始まりメルは身を縮こませる。
「いい気味だよ、黙ってエスイルを連れて行くんだし、その後の事は考えなかったの? 普通はどんな影響があるかを考えて大人に言った方が……」
シウスの後ろから現れた幼い少年は出て来るなり、そう言葉を並べていく……。
「フォル……あのね、僕達にも理由が……」
「理由がじゃない、いいか、エスイル僕達は子供なんだ出来ることも限られてる。それを考えないでメルの奴はいつもいつも……」
フォルと呼ばれた少年の言葉に苛立ちを覚えたのだろう、リアスは一歩前へ出ると普段しないような表情を浮かべた。
「メルやエスイルを連れて行ったのは俺だ。そうするしかなかったからな」
「リアス?」
実際にはメルはついて行く事を自身で決めた。
だが、エスイルは確かにリアスが連れて行く者だった。
彼はエスイルが幼いとは聞いていても会うまでは自分と同い年位に感じていたはずだ。
しかし、実際は自分よりも幼い少年だった。
かと言って連れて行かない訳にはいかなかったのは精霊達の……自分達の世界の為でもある。
「五月蠅いな、そうするしかなかったじゃなくて他の方法を探すべきだって言ってるんだ」
「フォルは黙ってろ……知識はあってもそれよりその場の判断が大事と言う事は少なくない」
フォルと言う少年はシウスにそう注意をされると黙り込む。
メルはいつもの事だと感じ、フォルの話は聞き流していたのだが、偶々視線が合うと少年は意地悪っぽい笑みを浮かべた。
「だけど、メルだって冒険者は無理だって戻って来たんだろ? 結局冒険者なんてなるべきじゃないんだ!」
その言葉に反応し一歩前へと踏み出たのはエスイルだ。
だが、すぐにメルは少年を手で制する。
「メルお姉ちゃん!!」
エスイルは不機嫌そうにメルの名前を呼ぶ、するとメルは首を縦に振り……。
「それって、皆の事やバルドさんやシュカさんの事も馬鹿にしてるんだよ?」
あくまで静かに……だが、言葉ははっきりと……伝えるメル。
それを聞き、フォルは目を丸めた。
「な、なんだよ! 僕はただ……僕達が冒険者なんかにって……」
「つまり冒険者になったシウスお兄ちゃんはおかしいの? 冒険者は立派な仕事だよ? 困ってる人を助けてあげる立派な仕事」
そう言いつつもそれだけが仕事ではない事はメルは理解していた。
だからこそ、今になってはなにかもやもやとするものがあった。
だが、冒険者は立派な仕事と言う言葉は嘘偽りの無い物だ。
「ふ、ふん! 気が付いたら死んでるかもしれない仕事なんて立派な訳ないじゃないか! 研究者とか薬師とかそっちの方が良いに決まってるよ!」
「あら?」
薬師と言う言葉を聞き反応したライノは笑みを浮かべながら、少年へと近づいて行き。
「な、なんだよ……」
「薬師になりたいの? だったら未来のお得意さんとは仲良くしなきゃ駄目よ? 確かに病気で薬は使うわ、でも一番薬を買ってくれるのは冒険者なんだからね?」
そうライノに言われた少年は黙り込み……ここぞとばかりにライノは言葉を続ける。
「それに薬に必要な材料、それを仕入れてくれるのも冒険者。いないと困っちゃうわね?」
最早返す言葉が無いのか、ぅぅぅと唸りながら固まってしまったフォル。
そんな彼を見てシウスは……。
「メルを心配してたんだ許してやってくれ」
「うん、分かってる」
兄の言葉にメルはすぐに頷く。
フォルだって家族だ……心配しないはずがない、それは分かっていた事だから。
しかし、それが恥ずかしかったのか……。
「し、心配なんてしてないよ!!」
顔を真っ赤にした少年は叫び声をあげた。




