表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
私の夢は冒険者だったのにっ!!  作者: ウニア・キサラギ
13章 精霊達とメル
300/486

288話 なつかしき故郷

 故郷へと戻ったメル。

 彼女たちの目の前に現れた魔物はかつて苦戦した相手だ。

 しかし、現在の彼女たちには油断さえしなければ何の問題もない相手だった。

 リラーグの入口ともいえる転移門、そこへと辿り着いたメル達。

 小さな祠へと入ったメル達は不思議な感覚に包まれ街のある上空へと移動する。


「…………」


 メルが足を一歩踏み出すと大きなドラゴンはすぐに気が付き、彼女の方へと顔を向け『ぐるる』と喉を鳴らす。

 リラーグの象徴でもあるデゼルトと言う龍だ。


「ただいまデゼルト」


 メルは懐いてくれているその龍の名を呼び近づく……するとデゼルトはメルの方へと頭を摺り寄せ……。


『ぐる! ぐるるるるる……』


 甘えたような声を出す。


「あははは、くすぐったいよデゼルト」


 メルは久しぶりに会ったデゼルトとじゃれ合うと門へと目を向ける。

 そこを潜れば当然、街の中だ。


 あの時は終わるまで帰っちゃいけないって言われた。

 だけど……今は戻らなくちゃいけない、この子の力を借りる為にも一回は顔を見せないと。


 デゼルトの力、飛龍船を使うには王であるシルトの許可が必要だ。

 本来は母の手名付けた龍であるデゼルトの力を借りるのに何故? とも思えるが、今やデゼルトはリラーグに住む者達の誇りともなっている。

 だからこそ、そうなのだろう……。


 だから一度はシルトさんに会わないと……会わないと、なんだけど……。


 自分達が旅立ってから母達にこってりと絞られたはずの王の所へと行くとなるとメルは気が滅入った。

 母達は基本優しいが怒ると怖いのだ。

 しかも普通王に対しては皆礼儀と言う物がある。

 だが、母達は違う……このメルン大陸を……世界の未来を守ったのだ。

 彼女達はこの空中都市リラーグを作る為に色々と奮闘した事もある。

 その為かシルトと距離が近く、言いたい事を言えるのだ。

 かと言ってそれを上手く使い自分達だけが楽を……なんて事にはつながらないのだが。

 問題はシルトの方だ。


 リラーグ王は未だユーリに対し冷めぬ恋心を抱いている。

 その為かユーリに責められると素直に従うか落ち込むかのどちらかだ。


「メルちゃん? 行かないの?」

「え? あ……それじゃデゼルトまた後でね」


 メルはライノに呼ばれると慌ててその場を離れる。

 そして……一つ考え事をした。


 シルトさん……落ち込んでなければ良いけど……。

 でも、きっと落ち込んでるよね?


 これから会う王の事を案じ、メル達は門兵へと話を通すとリラーグの門を潜り抜けた。

 すると目の前に広がるのは活気あふれる街並み。

 メルやシュレム、エスイルにとっては見慣れた光景……冒険者の街と呼ばれるリラーグの姿がそこにあった。

 懐かしい街並みと音、匂い……メルは今すぐに肉巻きを食べたくなったが、今は我慢だと自身に言い聞かせ龍に抱かれる太陽へと目指す。

 きっと母達が待っているはずだ。

 そこで彼女達と合流しシルトの元へと向かおうと考えたのだ。

 だが、一人その行き先を感じ取ったのか足を止めた物が居た。


「シュレムお姉ちゃん?」


 メルはシュレムが足を止めていることに気が付かなかったが、エスイルの囁きで彼女に何かあったのだと感じ、振り返る。

 するとそこには青い顔をした姉妹同然として育ってきたシュレムの姿があり……。


「どうしたの?」


 メルは彼女に尋ねると、彼女は首を横に振り……。


「ナ、ナンデモナイゾ?」

「いや、何かあるだろ? 言葉が不自由になってるぞ」


 リアスの言葉にも唯々彼女は首を振るのみ、一体なにがあったのだろうか? 不安に思った彼女だったが……。


「そう言えば、シュレムちゃんのご両親も怒ってたのよね?」


 とライノが口にした瞬間、シュレムは震えが大きくなる。

 …………なるほど、っとメルは理解したが、彼女もまさか何も言わずについて来たとは思っていなかった。

 その事から多少怒られるのは仕方がない。

 そう考えたのだが、彼女はもうすでにメルと一緒にナタリアとユーリに怒られている。


「少しぐらいは口利きしてあげる、だから……行こ?」


 また怒られるのもかわいそうだ。

 メルはそう思い告げると、シュレムは目を輝かせメルの両手を取り。


「本当か!? お袋はメルに弱いからな! これで安心――」


 喜ぶのだが、彼女の笑顔はぴしりと固まり……徐々に震えを大きくしていく……。

 何が起きたのだろう? そう思うもシュレムの視線が自分ではなく他に向いている事に気が付いたメルは後ろへと振り返る。

 するとそこには――。


「シアさん!」


 シュレムの母であり、メルの血の繋がらない母の姿があった。

 彼女には笑顔が張り付いていたが、その意味に気が付くことの無かったメルは彼女の元へと駆け寄る。

 すると、若干その笑顔を柔らかい物へと変えたシアはメルを抱擁した。


「メル様、よくご無事で……一回戻って来られると聞いてお待ちしておりました。真っ直ぐ屋敷へと向かうつもりだった様で何よりです」


 優しい声と共に頭を撫でられたメルは「えへへへ」と笑み後こぼす。

 血の繋がった両親や祖母に頭を撫でられるのは好きな彼女だったが、シアの手も暖かく撫でられるとどうも逆らえないのだ。


「ですが……シュレムローネ?」

「はぃい!?」


 その声が若干低くなったことを感じ、メルはおずおずと顔を上げる。

 先程の約束を果たそう、そう考えたのだが……。


「あ……」


 その声は止まってしまった。

 他の仲間達も少しは口添えをしてくれるつもりだったのだろう一歩踏み出した所で止まった理由。

 それは彼女達の心の中で一致した。


「いや、その……メル? なぁおい! 何か言ってくれるんだろ!? っておいなんでリアス達まで固まってるんだよ!?」


 これは手を出したら駄目だ……と……。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ