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私の夢は冒険者だったのにっ!!  作者: ウニア・キサラギ
13章 精霊達とメル
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286話 故郷のある大陸

 船の旅。

 そのすべてを安全に行くことなど不可能だ。

 当然魔物が現れ、それはかつてメルが戦った大ムカデににたぶよぶよしている虫の魔物だった。

 しかし、シュレムのおかげで魔物は無事退治でき、釣りの餌も手に入るのだった。

 魔物との遭遇はあったものの順調にドイズールへと向かうメル達一行。

 目的地である港は遠目ではあるが見えた。

 あそこへと辿り着けば後はリラーグへと赴き、飛龍船に乗り込むだけだ。

 そう考えるメルの元に柔らかな風が吹き……。


「アリア?」


 メルは風の正体と感じた精霊の名を呼ぶ。

 すると、名を呼ばれた精霊はメルの前へと笑みを浮かべて現れた。


『メル!!』


 嬉しそうにメルに抱きつく風の精霊。


「おかえり、お疲れ様」


 精霊に労いの言葉をかけた彼女はアリアを撫でるような仕草をする。

 すると、アリアは嬉しそうに笑みを浮かべている。

 そんな彼女にメルは問う。


「ママ達は何て言ってた?」

『えっとね! 飛龍船使っても良いって! でも家には顔を出す事って言ってたよ!』


 メルはアリアの言葉を聞き、ほっとする。

 いや、母達の事だメルしか出来ない事がある現状では飛龍船は使ったら駄目なんてことは言わないだろうとは分かっていた。

 だが、それでも許可が下りた事は嬉しかった。


「そっか……」


 メルはそう呟くと、一つ疑問を浮かべる。


「そういえば、時間が掛かってたけど大丈夫? 疲れてない?」


 以前であれば戻ってくるまでに時間はあったもののすぐにメル達の元へと戻って来ていたシルフ。

 しかし、アリアと呼ばれるようになってからは時間が掛かっているのだ。

 だからこそ、途中で何か体調でも崩したのだろうか? とメルは不安になったのだが……。


『?』


 アリアは可愛らしく首を傾げるだけだった。

 彼女の様子を見るにどこかおかしい所はなさそうだ。

 では、何故この頃は時間が掛かるのだろうか?

 ましてや、今回はリラーグへと大分近づいてから戻って来たのだから……。


『あ! そう言えばねリラーグから来る途中に綺麗なお花とかあったんだよ!! 目が見えないけど、たぶんそう!』


 しかし、メルの心配は本当に杞憂だった様で、アリアは笑みを浮かべたまま両手をぱたぱたとさせる。

 彼女は嬉しそうにどこどこの景色が綺麗だったと報告をしてきた。


「も、もしかして寄り道してたの?」


 メルがそう尋ねると其処でアリアはぴたりと止まり、申し訳なさそうな表情へと変えると……。


『ご、ごめんなさい』


 あからさまに目を泳がせ、謝罪の言葉をつげる。

 そんな彼女の様子は妙に可愛らしく、メルは思わず笑みをこぼすとアリアは不思議そうにメルの顔を覗き込む。


「いいよ、リラーグからって事はちゃんと伝えてくれた後に寄り道してたんでしょ? 私もすぐに戻ってって言ってなかったし」


 メルにそう言われたアリアは表情を明るくし、メルの頭の上へと乗ると『えへへへ』と笑う。

 しかし、腕を組み一部始終を聞いていたもう一人の精霊は……。


『メルは優しすぎます。心配してたんですからもうちょっと怒っても良いかと思いますよ!』


 と憤り隠すことなく告げる。

 するとシレーヌはアリアの近くにより前へと上半身を傾け――。


『アリア! 気になる所があって行きたいのは分かります! でも、ちゃんと帰って来てからメルに言ってください私も心配したんですよ!?』

『ぅぅ……そうだけど、なんかシレーヌはシレーヌになってから怖いよ……』


 アリアはそう言うとメルは頭がくすぐったいと感じた。

 どうやら、髪の中へと潜り込んだようだ。


『あ! またメルの髪の中に!! アリア怒られたら謝らなきゃですよ! フィーだってそう言ってました!』


 しかし、その行動はシレーヌを更に怒らせる結果になってしまい、メルは思わず苦笑いを浮かべた。


「おい、子む……メル! そろそろつくぞ!!」

「は、はい!」


 そんなメル達の元へとやって来たフィッツは港に着く事を告げ、それから暫くしメル達は無事メルン大陸、ドイズールの港へと辿り着いたのだった。







 港町は随分前にタリムの王によって壊滅させられていた。

 しかし、オークの里やリラーグが近くにあったからだろう、今となっては嘗てよりも活気あふれる港町になっている。

 冒険者を目指す若者や、リラーグの龍に抱かれる太陽に移籍を考えている熟練者などが良く利用するらしい。

 そんな港町で腕輪を付けているメル達は憧れの的となるのは当然だ。


「リラーグのエルフの使者じゃないか、依頼かそれとも戻って来たのか分からないが、とにかく検問はもう必要ない、行って良いぞ」


 船から降りてきた彼女達を見るなり大した理由も聞かず船着き場ではすんなりと街の方へと通される。

 そんな特別扱いは歯痒く感じたメル。


 どうしたんだろう? 街に居た時は普通だと思ってたのに……なんか変な感じ。

 理由は違うとはいえ、特別扱いをされていたメル。

 嘗ては当然とまでは言わなくても違和感なく過ごしていた。

 だが、今そうされるとどこかおかしい。

 本当にこれで良いのだろうか? と疑問を思うかべ……。


「私達は見習いですし……あの、急いではいますが、一応確認だけでも……」

「そうなのか、じゃ行って良いぞ」


 メルは言葉を聞かれていないのではないか? と思うほどあっさりしており……。


「メル、今は甘えて置こう」

「う、うん……」


 メル達は街へと続く門へと向かう。

 そうすると船乗りであるフィッツとルーイは――。


「俺達はここまでだ、じゃぁな!」


 と別れを告げられた事に驚いたメルは振り返る。

 そして、寂しそうに尻尾を弱々しく振ると頭を下げ……。


「ありがとう、フィッツさん、ルーイさん!」


 二人へと礼を告げるのだった。

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