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私の夢は冒険者だったのにっ!!  作者: ウニア・キサラギ
13章 精霊達とメル
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285話 トラウマは唐突に

 飛龍船を借りる。

 普通なら到底無理であろうその作戦はメル達にとっては叶うかもしれない方法だ。

 メルは仲間たちにその方法で行くことを告げ、ドイズールへと針路を変えたのだった。

 針路を変えドイズールへと向かうメル達一行。

 危険な道を避けてきたとはいえ、やはりすべてを避けるという事は無理だ。


「む、虫! 虫!?」

『きゃぁぁぁあああ!? うぞぞぞぞぞぞはもう嫌です!?』


 現れた魔物は以前戦った大ムカデの様であり、違うと言えばその身体が妙にぶよぶよしている所だ。

 当然メル達は気持ちが悪いとしか思わなかったのだが、フィッツ達は違った様で……。


「ゴカイだな……奴の身体は釣りの餌になる! 運が良いじゃねぇか!!」


 と喜んでいる。

 だが、メルとシレーヌは以前の事を思い出し、それどころでは無かった。


「うぞぞぞぞって……確かにうぞぞぞぞってしてるような気もするけど」


 唯一その中でメル以外に精霊の言葉が聞こえるエスイルは苦笑いを浮かべる。


「メルは虫が苦手だったのか……」

「そもそも、あの大きさで来られたら誰でも苦手になりそうよ?」


 リアスの悠長な言葉にライノは魔物から視線を逸らし答える。

 事実その魔物は大ムカデよりも足が多く、誰が見てもあまり気持ちの良い物ではない。

 それどころか、魚の餌と言うのは本当なのだろう……所々食べられており、変な液体を撒き散らしている。


「……魚が喰うって事は喰えるのか?」

「やめて置いた方が良いですよ? 人が食べれない事は無いですが、どんな病気を持っているか分かりません」


 シュレムの発言に冷静に答えたルーイだったが、何故皆そう平然としていられるのだろうか?

 メルはそう思い……。


「ねぇ!? 皆……あ、あんなに大きいんだよ!? 食べられてるんだよ!? 気持ち悪いよ!?」


 最早、涙声で叫ぶ彼女に対し、呆れた顔のフィッツは告げる。


「そりゃ、アイツには魚を引き付ける何かがあるんだろ? 事実アイツで釣りをするとよく釣れる」

「切るのは大変ですけどね」


 切るという言葉にメルはびくりと反応する。

 その理由は食べられている箇所だ。

 切れば当然体液が飛び散る。

 それだけならまだ良いが暴れ回る事は間違いない、そうなれば避ける事はまず難しいだろう……。

 そうなった時に厄介だと思えるほど虫の生命力は以前体験済みだ。


「ぅぅ……」


 それを思い出すとメルは思わず尻込みをしてしまう。


「早く倒さないのか? じゃないと魔物も寄って来るぞ?」


 そうは言っても、剣で切るのは嫌だし……でも、炎の魔法を使う訳にもいかない。

 暴れられて船に引火したら大変だもん……だけど、そうなると……。


 メルは不安そうにリアスの方へと向くと彼はゆっくりと首を振る。


「俺の剣じゃ無理だな」


 予想通りの言葉が帰って来た。

 しかし、目の前の魔物を放って置くことはできない。

 メルは嫌だと感じつつも、アクアリムを構える。

 すると――。


『メル!? うぞぞぞぞを見ないでください!?』


 彼女と視界を共有しているシレーヌは慌ててそう告げる。

 だが、魔物相手に目を瞑るなどと言う事は出来ない。

 メルは引きつった笑みを浮かべながら……。


「ご、ごめんねシレーヌ……アイツを倒さないと……」


 と呟いたその瞬間。


「オラァ!!」


 いつの間にか魔物へと向かっていたシュレムの咆哮が聞こえ、メルは焦り彼女の方へと目を向ける。

 そこにはもうすでに魔物へと蹴りを与えた後のシュレムが立っており、魔物はぐにゃりと身体を曲げ、暴れ回っていた。


「おお……」


 それを見てシュレムは驚いたような声を上げるが、すぐにまた駆け出し……。


「シュレム!?」


 メルの声に珍しく反応しない彼女は再び蹴りを魔物へと叩き込む。

 すると再びぐにゃりと身体を曲げた魔物は海の方へと倒れて行き……。

 大きなしぶきと共に、その場には沈黙が流れる。

 暫くすると跳ね上がった海水はまるで雨の様に降り注ぎ……。

 肝心の虫の魔物はすでにもう海の底だ。


「よし!」


 と一人、達観した表情のシュレムが居た。


「いや、良し! じゃねぇえ!? 折角の餌をどうしてくれる!?」


 フィッツは魔物で魚を釣る事を考えていたのだろう。

 そう叫ぶとシュレムは瞼をぱちぱちとさせ、手に持っていたそれを投げて渡す。


『「ひぃ!?」』


 あえて見ない様にしていたものが目に入り、メルとシレーヌは思わず悲鳴を上げたのだが……。

 彼女が持っていたそれの正体は……。


「お前……これ……」

「おう、最後に引きちぎった。それに魚が食うなら下にもいたほうが良いんじゃねぇか? わかんないかどな!」

「お、驚きましたね、ですがありがたい、フィッツ新鮮なうちに」


 ルーイの言葉に頷いたフィッツは歯をむき出しにして笑みを浮かべた。


「ああ!」


 そう、シュレムが引きちぎったものは数本の魔物の足。

 だが、神業ともいえる彼女のその行動にメル達はただ口をぽかんと開けるだけだった。


「どうだ? メル! 追っ払ってやったぞ!!」


 だが、一人シュレムは誇った様な笑みを浮かべて、それを見たメルは思い出す。

 虫が出た時に傍にいてくれている時には……シュレムが必ず対処をしてくれていた事に……。


「あ、ありがとう」


 だが、まさか魔物相手ですらそうだとは思わなかったメルはただただ感謝と驚きを抱えるのだった。

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