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私の夢は冒険者だったのにっ!!  作者: ウニア・キサラギ
13章 精霊達とメル
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279話 出港!

 船を手に入れることができたメル達。

 しかし、ルーフに行くためには操舵士も航海士もいない。

 困り果てるメル達のもとに現れたのは思ってもいない人物だった。

 翌日……メル達は古い港へと集まり、改めてルーフへと向かう準備を進めていた。

 とは言ってもメル達がする事と言ったら、大した事は無く……。


「積み荷は問題ないみたいですよ」


 積み荷の確認位の物だった。


「よし! じゃぁ船を出すぞぉぉぉお!!」


 それを確認すると船乗りの大きな声が響き渡り、メル達は港に集まっていた人達へと手を振る。


「ありがとうございます!」


 彼らは前の街とは違いみんな笑顔でメル達を見送ってくれた。


「こちらこそ! 良い船旅を!」


 その中でも町長はそう言うと深く頭を下げ、丁寧に送り出してくれた。

 何時までも手を振っていたメルだったが、最後には心配そうな表情を浮かべたリアスに身体を船の方へと引き寄せられる。


「メル……そんなに前の方へと行くと海に落ちるぞ」

「う、うん……気を付ける」


 突然の事ではあったが、それが自信を心配してくれたものだと理解し、頬を赤らめたメル。


「あ、おい! 人の嫁に何をするんだよ!!」


 するとシュレムが堪らずと喰いかかるが、そんな何時ものやり取りに笑い声が生まれた。


「暢気なものだな……あのドラゴンが来るかもしれないのによ!」


 そんな中、不機嫌そうに……いや、不機嫌な様子を隠すそぶりもない船乗りは怒鳴るが……すぐに首を横に振ると……。


「そういや名乗ってなかったな、俺はフィッツ! 航海士のこいつは」

「ルーイと言います」


 舵から手を離すことなく名を告げるフィッツ。

 そして、ルーイは丁寧にも頭を下げ名乗った。


「あ……私はメアルリース……メルって呼ばれてます」

「リアスだ……助かったよ」


 二人を始めとし仲間達も彼らに名を告げる。

 最後に――。


「シュレムローネだ……お前本当に大丈夫なんだよな?」

「ぁあ!?」


 シュレムの発言に声だけではなく身体でも反応した船乗りのフィッツ。


「ちょっとシュレム!? ごめんなさい!? 口が悪いだけで……」

「シュレムお姉ちゃん……せっかく船を動かしてもらってるのにそう言うのは良くないと思うよ……」


 焦り、頭を慌てて下げるメルと呆れながらもたしなめるエスイル。

 二人にそんな事を言われてしまってはシュレムも言葉を続ける気にはならなかったのだろう……。


「わ、悪かった……」


 そっぽを向きながら謝罪を口にしたのだった。




 最初こそ仲違いしそうな事はあったとはいえ、その日は順調に進んでいく……。


「魔物が出ないね?」

「そう言う海域もあるんですよ……船旅では出来るだけそう言った航路を取る事が重要です」

「そんな事も知らずに海に出る奴は馬鹿ばかりだ……その点、操縦士も航海士も居ない状況で出なかったお前らは正しい」


 フィッツはやはり怒鳴り声ではあったが、怒っている様子はない。

 やはりすぐに出なかった事は正解だとメルもほっとし……二人が力を貸してくれたことをありがたいと感じた。


「ですが、安心はできませんよ。海は表情を変えやすい」


 そう言って遠くを睨むように航海士であるルーイは口にする。


「奥に何かあるのか?」

「いえ、今のところは……」


 リアスが問うとすぐに帰ってきた返事は悪いものではなかった。

 しかし、彼のその表情にはどこか不安を覚えさせられるのだった……。






 それから二日が経った頃、メル達は運航の手伝いをする中で一つ調べていた事があった。

 それは……。


「アリアを司る道具……やっぱり首飾りだよね?」


 メルが仲間達だけで会話ができる食事の際に切り出した事……。

 それは今エスイルが身に着けている精霊の首飾りの事だ。

 エスイルはそれを聞くなり、自身の胸へと手を当てる。

 しかし……。


「じゃぁ、僕かメルお姉ちゃんの精霊力で姿が変わったの?」


 そう言いつつ最初に出会った頃とは違う姿へと変わったグラネージュへと目を向ける。

 彼女は大きさこそは最初と変わらないものの薄い衣を身に纏う女性の姿になっており……。

 エスイルの肩へと腰を下ろしている。

 勿論、その姿は森族(フォーレ)の血を引くエスイルとメルにしか見えないのだが……。


「精霊の姿が変わって本来なら、手を貸せない状況でも協力してくれるようになる……だけど個体として行動をするようになる……」

「でも精霊自体は一杯いて本来は一つの意識を共有してるのよね?」


 リアスとライノの言葉にメルは頷く……するとメルを含めた三人は同時に考えるそぶりを見せた。

 何故そんな事が起きているのか理解が出来ないのだ。

 しかし、確かにメル達の味方である事は分かっている。


「良く分からねぇが……精霊達にはなんか変な提供とかないんだよな?」

「て、ていきょう?」


 シュレムの言葉にエスイルは首を傾げると彼女はぽんっと手と拳を合わせ。


「違った影響だ! 影響!」

「あ、うん……変な影響はないみたいだよ……でもグラネージュ……フアル達は何か僕とメルお姉ちゃん片方の精霊力しか受け付けないんだ」


 それは仲間達全員で確かめた事でもあり、リアスは深く頷くと……。


「それで、シレーヌがエスイルの精霊力の影響で不調を訴えた……フアルも同じ……それも良く分からないな……」


 リアスはそう言うとメルの方へと目を向け。


「シルフに変化が起きたって事は何かの影響があった。それは精霊の首飾りだというのは分かってる。なら問題は……」

「うん、でもそれがどっちか分からないの……」


 そう、精霊の首飾りを使った時メルは祈っていた。

 精霊を助けてと……確かにあの時首飾りを持っていたのはエスイルだ。

 しかし、決して離れすぎていた訳ではない。

 その事からメルは自身の影響もあったのではないか? と考えたのだ。


「試して見ないと分からないのか……」


 そう言ってメルの頭へと目を向けたリアス。

 それに対しメルは首を傾げ……。


「リアス? もしかして精霊がアリア見えてるの?」


 そう尋ねるとリアスは笑みを浮かべ首を横に振る。


「まさか、俺は魔族(ヒューマ)だぞ? だけどメルの髪が風も吹いていないのに動いてるって事は何かがそこに居るって事だろ?」

「ああ。そっか……」


 彼の発言は最もだと気が付いたメルは頷き……。


「試してみる?」


 エスイルの言葉に頷くメル。


「そうだね、でもあまり多く精霊力を流し込まない方が良いよ?」


 アリアの事を心配しそう告げたメルに対し彼女の頭の上でくつろいでいたアリアは……。


『え、えっと私はメルが良い!』

 

 と慌てて彼女の前へと降りてくるのだった。

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