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272話 覚醒

 翌日メルが見たのは元気になったシレーヌの姿だった。

 メルはそれに安堵をする一方。

 昨日得た感覚を忘れないうちに使いと考えた。

 その結果、メルは精霊シレーヌに力を与える事に成功するのだった。

 氷の宝石を手に取ったメルは願う様に精霊力を込めていく……。

 いや、それが精霊力なのかは実際のところまだ分からないが、恐らくそうであると信じ、メルはそうした。

 すると今度はすぐに変化が訪れ……ぶるぶると震えだした氷の精霊を目にしたメルは仲間達に――。


「や、やった! グラネージュに力をあげれたみたい!」


 と喜んだのだが……。


「メルお姉ちゃん!」

『き、きもちわるい……』


 エスイルに呼ばれ振り返ると氷の精霊は不調を訴え始め、メルは固まってしまう。

 一体なにが起きたのだろうか? 何かをそそいだのは間違いがない。

 だが、シレーヌは元気になったというのにグラネージュは明らかに体調が悪そうだ。

 何が原因か……、それは分からなかったが、メルは慌てて宝石をエスイルへと握らせた。


「どうしたんだよ」


 シュレムはメルの様子を見て不思議がるがそれは仕方のない事だろう。

 だが、そんな説明をする時間も惜しいと感じたメルは――。


「エスイル! 早く精霊力を込めて!!」


 弟にそう告げた。

 自身の精霊力で駄目なら弟のなら! そう考えたのだ。

 事実シレーヌはエスイルの精霊力で体調不良になったのだから、その逆もあり得る。


「え……? で、でも……」

「多分、私の精霊力? が……グラネージュには合わないの! 早く!」


 メルはそう急かし、おろおろとするエスイルの肩を叩く。


「お願い……他に精霊力がある人はここには居ないよ……」


 そう告げると少年はゆっくりと首を縦に振り、精霊力を込めていく……。


 何の違いがあるのか……メルにはその違いと言う物が魔法でも良く分からなかった。

 しかし、確かに違いがあるのだ。その証拠に魔法では母ユーリは攻撃魔法が苦手で祖母ナタリアはユーリ程補助の魔法が得意と言う訳ではなかった。

 そして、彼女達だけ魔法や精霊力に限った事ではない……。


 バルドさんは剣なんて使った事無いって言ってたし、ケルムさんは重すぎて無理とか言ってたのに体術は上手かった。

 そう言った事でも得意不得意があるんだから、精霊力だって……!!


 メルの考えは正しかったのか? それとも偶然か……それはやはり分からなかった事ではある。

 しかし、グラネージュは徐々に落ち着きを取り戻していき……。


『ア、アンタ! 何をしたのよ!?』


 と怒りに眉を吊り上げるのだった。


「よ、よかったぁ……」

『良かったって何が!?』


 メルがほっとするとグラネージュはますます怒り、辺りに居る仲間達はメルとエスイルの様子に首を傾げたままだ。


「もしかして、なにかまずかったのか?」

「え、えっと……グラネージュには私の精霊力が合わなかったみたい」


 シュレムがもう一度問い、メルはそう答えると……。


「はぁ……尚更ぶっつけ本番でやらなくて良かったんじゃないか?」

「そうね、ドラゴンを前に今みたいなことはできないわ……」

「そ、そうだね」


 ドラゴンと戦う訳ではない。

 しかし、もし戦う事を意地になっていたらと思うとメルは恐ろしくなりぶるりと震えた。


『ちょっと! ねぇ!! 私に何をしたの!?』


 危害を加えられた、そう思ったのだろう精霊グラネージュは流石に怒った様子でメルの目の前へと来て眉を吊り上げ腰に手を当てる。


『アンタも変態なの!? ケルムの様に!!』

「…………」


 気を落としていたのが嘘のように怒る精霊を見つつ、メルは――。


 ケルムさん……グラネージュにまで変態って……。

 そう思っていたメルはその考えが違う事に気が付いた。

 ケルムの名を聞いて表情を変えた精霊が居たのだ。


『ケルム? ケルムは気持ち悪いです! メルとは大違いですよ!!』


 ううん、違うこれはもしかして……。


 まさかと思いリアスの剣に張り付いているフラニスへと目を向けたメル。

 するとメルの視線に気が付いた炎の精霊は……。


『ケルムはなぁ……熱い時はかっこいいんだけど普段が変態だからな!!』


 うん! 精霊達()に変態って思われてるんだね。

 ケルムさん……本当に何をしたの?


 あはは……と引きつった笑みを浮かべたメル。

 そんな彼女の所に突風が吹き――。


「きゃあ!?」


 メルは慌ててスカートを押さえる。

 慌てて周りを見るとエスイルは呆然としており、リアスはいつの間にか別の方向に顔を向け……ライノは風の吹いてきた方へと警戒をし……。


「おしい……」


 シュレムはしゃがみ込み、そんな事を口にし……メルは彼女を睨むと。


「うん、変態の弟子は変態……なんだね」


 冷めた目でそう口にするとシュレムはゆっくりと立ちあがり……。


「俺は漢だからな、そういう時もある」

「……シュ、シュレムお姉ちゃんは……女の子でしょ?」


 エスイルの言葉を聞き、メルは溜息をつきながらシュレムから目を離すと突風の原因でもある精霊へと目を向ける。


「シルフ……じゃなくてアリア、どうしたの?」

『ありあ?』


 突然、聞きなれない名前に風の精霊は首を傾げる。

 メルはそんな彼女に頷き……。


「貴女の名前、シルフじゃ他の子達も反応しちゃうから」


 新しい名前だと聞いたシルフ……いや、アリアは嬉しそうに飛び回る。

 だが、すぐにはっと表情を変えると……。


『そうだ! あのね、アクセサリーだけど、師匠に連絡を取ってみるって言ってたけど、その……フォーレに居るみたい!』

「そんな……それじゃ、余計に時間が掛かっちゃう……」

「どうしたんだ?」


 メルが声を上げると、リアスは心配そうに彼女を見つめる。

 メルは彼の視線に気が付き、スカートを押さえたまま赤く顔を染める。

 そして、彼女はシルフの言っていた事を仲間達へと伝えた。


「だとすると、先にルーフに行く方が良いのか……」

「うん……精霊の事も気になるし……先にルーフに行こう」


 と言ったもののもう一つ問題はある。

 それは――。


「ただどっちに行くとしても、ドラゴンが邪魔じゃないか?」

「どうしたら良いんだろう?」


 シュレムとエスイルは考え込むが、その方法はやはり待つしかない。

 だが、メルは……。


「エスイル、明日からも私達は精霊に力をあげる練習をしよう?」

「え?」


 メルの提案にエスイルは首を傾げる。


「……ドラゴンがここに来ないとは限らないよ。その時に何も出来ないなんて言いたくない!」


 そう、メルはもしもの時に備え力を蓄える事を考えたのだ。


「……確かにこのまま何もしないでいざって時に困るからな」


 リアスは頷くが、すぐに――。


「でも、俺達もつくこいつにも慣れないといけないしな……」


 心配そうな笑みを浮かべると背に背負ったナウラメギルへと指を向けた。

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