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270話 精霊力とシレーヌ

 街に戻ってまず分かったことはやはりドラゴンが居座っている事だった。

 しかし、メルはそんな事よりもシレーヌの不調の方が気になっていた。

 苦しげだった精霊がようやく寝付いた所で話をちゃんと聞く事が出来たメルだが……。

 やはり、ドラゴン相手では対処のしようがない。

 そう考えている彼女の前に目覚めた精霊が礼を告げるのだった。

 その日は結局ドラゴンをどうするかという対策は思いつかなかった。

 いや、それよりもメルが話に集中できなかったと言った方が良いのかもしれない。

 もう休もうと皆で決めて眠る事にしたのだが……メルは布団の中、天井を見つめ考える。


 さっき私はただシレーヌを助けたいと願って……魔力を使おうとした。

 もし、もしそれが……無意識のうちに精霊力を使っていたなら?

 あの子が少し回復したのは……それの所為?


 メルは考えながら横に眠る精霊の姿を見る。

 何かがおかしい……その事に気が付くのにはそう遅くはなかった。


『まるで人間みたい』


 そう口にしたのは氷の精霊グラネージュ。

 彼女は眠るシレーヌを見下ろしそんな事を言ったのだ。


「どうしたの? 眠れないの?」


 メルが問うとグラネージュは驚いたような表情を浮かべ、メルは疑問に思う。


『精霊は寝ない、寝るのは人間とか動物とか……』

「え?」


 その言葉はメルが信じられない物だった。

 事実シレーヌ……いや、ウンディーネだけではないシルフや他の精霊も眠っていた事を知っているからだ。

 寝起きには眠そうに瞼を擦る事もあった。

 とくにシルフはメルの頭の上でよく眠ることがあった。

 それなのに眠る事は無いと言っているグラネージュは何を言っているのだろうか? この子だけ寝ないのか?

 そう考えていたのだが……目の前のグラネージュもまた精霊。


 嘘を言っている訳がない……よね?

 じゃぁ……寝ないのは本当の事? まさか、でもありえない訳じゃない。

 皆はよく、私の真似をしてきたりしてたし……。

 もしかして、寝る真似をしていたの? だとしたら……シレーヌは今。


 もう一度水の精霊へと目を向ける。

 そこには寝息を立てる精霊の姿があり、メルはどう見てもそれが真似であるとは思えなかった。

 もしかして、身体が変化したことにより眠らなければいけない事が起きているのだろうか? メルはそう考え行きついた答えは――。


 この子達はもしかしてこの状態だと力を使い続けてる?

 私達人間は疲れた時には休む。

 だからこの子も寝てる? じゃぁ、あれは精霊力を注いだからじゃなくて眠ったから少し回復した?

 でも、あんなに気分が悪そうだったのに……静かに寝ていたの?

 もし寝たとしたらもう少し、うなされても良いはずだよね?


 あの時の事を思い出すメル。

 しかし、覚えているのはうずくまっているシレーヌの姿だけだった。

 寝息を立てていた事は覚えている。

 精霊が寝ないというのなら、寝る事自体がおかしいのだ。

 しかし、もし寝る事で回復したというのなら、うなされずに安心して寝られる切っ掛けがあったはずだ。


 やっぱり、私の気持ち?


 ベッドから起き上がった彼女は傍らに立てかけていた剣アクアリムへと手を伸ばす。


 もし、本当に私が誰かを……シレーヌを助けたいって思ったことが彼女に力を与えたなら?


 考えてみると以前、アルとの戦いにおいて傷ついた精霊を助けてほしいと願った事がある。

 だが、あの時はそれが首飾りの……エスイルの力だと思っていたのだ。

 メルは今もそれ以外で治ったとは思ってはいない。

 しかし、気になるのはエスイルの精霊力を受け、体調不良になったという事だ。


 でも、試してみる価値は……ある!


 そう考えた彼女はアクアリムを掴み、鞘から抜き取り目を閉じる。

 願う事はたった一つ……。


 お願い……シレーヌを元気にして……。


 メルはそう願いゆっくりと魔力を込めていく……。

 すると……薄く青みがかった銀色は水を帯び始め……。


 違う! 戦うんじゃないの! シレーヌを助けたいだけ。


 更に願う。

 精霊力の使い方なんて言うのは何度考えても分からなかった。

 しかし、知らず知らずのうちに使っていたならその時の気持ちがきっかけになっているのではないか? とメルはより一層感じたのだ。

 溢れ出る水は一向に収まる気配がない。

 だが、どういう訳だろうか?

 いつもより穏やかな物にも思えた……。


「……でも、これじゃない」


 溜息をつきつつ、メルは首を横に振る。

 そして、アクアリムを鞘へと戻し、濡れた床を拭こうそう考えた時だった。


「……あれ?」


 魔力が左程減っていないのだ。

 慌ててシレーヌの方へと目を向けるが、彼女は相変わらず寝ているだけだ。

 もし、寝たふりであれば変化に驚き起きそうなものではあるが、すやすやと寝息を立てている。


 どういうこと? 今のはちゃんと精霊力を使えたって事なのかな?


 実感のない事に首を傾げつつ、メルは眠気を感じ……すぐに床をふき取ると再びベッドへと潜り込む。


「おやすみグラネージュ……」


 氷の精霊にそれだけ告げると瞼を閉じ……。


『おやすみ』


 彼女の返事を聞き終えると徐々に眠りの中へと落ちて行った。


『ん?』


 だが、メルが寝た後……。


『…………』


 寝返りをうった精霊シレーヌは何処か心地よさそうに笑う。

 間違いなく寝ているのだろう、すやすやと寝息を立てる様は先程グラネージュが思った通り人間の様だ。


『……ん?』


 だが、それよりも気になったのはシレーヌの身体が淡く光っている事だった。


『もしかして、精霊力?』


 辺りに光るそれが精霊力だと判断したグラネージュは首を傾げつつも、先程メルが持っていた剣へと目を向け近づく……。


『…………創世の道具……』


 そして、そう呟くと今度はメルへと目を向けるのだった。

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