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269話 街に戻り

 魔力をすべて使い、精霊力を引き出せないか?

 それを試すメルだったが、恐怖がよぎり魔力を使い果たす事は出来なかった。

 そこでエスイルへと頼むのだが……。

 どうやらシレーヌには彼の精霊力が合わないようだ。

 一日目の成果は得られなかったのだった。

 酒場に戻って情報を集めた一行だが、すぐにがっくりと項垂れる結果となった。

 部屋の中メル達はその話をしているのだが……。


「やっぱりドラゴンが離れてないみたいだな……」


 リアスは溜息を大きくし、首を横に振りながらそう口にする。

 しかし、メルは……。


「うん……」


 彼の様子よりもシレーヌの様子が気になる様で彼女の方へと目を向けていた。


『ぅぅ……』


 それは帰って来る途中の事だ。

 急にシレーヌは不調を訴えたのだ。

 気持ちが悪い、と……その原因は恐らくエスイルの精霊力なのだろう……。

 服の中で休む水の精霊を気遣いながらではリアス達の会話に集中する事は出来ず……。


「とは言ってもまだ二日目よ? そんなにすぐに移動はしないわよ」

「うん……」

「分かってる……焦ったって……」

「うん……」


 聞こえた言葉に対し、うん……とだけ繰り返すメル。

 仲間達は彼女の様子が変だと気が付き――。


「メル?」

「うん……」


 名を呼ぶがメルの意識はやはりシレーヌの方へと向かっていた。


 原因は他には考えられないけど……どうやったら治してあげれるの?


 メルは仲間達の声が遠くなるような感覚を覚えていた。

 それもそうだろう、精霊は体調が戻るどころか悪化しているように見えるのだ。

 どうしたら助けてあげられるのか? どうすれば良いのか?

 メルは迷いつつ、無意識のうちに腰にあるアクアリムへと手を添えていた。


 助けなきゃ……助けたい……。


 ただそれだけを願い。

 無力な自分を悔い目を閉じる……。


 きっとユーリママなら……母ならなんとかできるのに……そう思いながら。

 それでも、何か方法はないか? どうにか出来ないのか?

 願いつつメルは――。


「メル? おい……なにをしてるんだよ、大丈夫か?」


 シュレムの声が耳元で聞こえ、はっとしたメルは自身が今魔力を込めかけていた事に気が付き慌てて瞼を持ち上げる。


「う、ううん……ただ、シレーヌが……心配だったの私は大丈夫だよ?」


 そう言って姉に答えたメル。

 彼女は不安そうに服の中に潜り込んだ精霊へと目を向ける。

 そこには顔を見せないようにしているシレーヌの姿があり、不安がぬぐえなかったのだが……。

 メルが知らない所で精霊はその表情を少し穏やかな物へと変え……寝息を立てていたのだった。





 それから少し時間が経った頃。

 メルは不安に思いつつもシレーヌが寝息を立てている事に気が付き、そっとしておくことにしようと考え仲間達と話をしていた。


「それで、ドラゴンだけどな、このまま去らなかったらどうする?」

「それは……」


 シュレムの質問にメル達は黙り込んでしまった。

 戦おうとしても相手はドラゴンだ……。


 どうやって戦えば良いんだろう……。

 シレーヌとグラネージュの力があれば何とかなるかもしれない。

 だけど……その方法は分からない。

 ううん、分かった事と言えばエスイルの精霊力じゃ少なくともシレーヌは相性が悪いという結果だけだった。


 メルはそう考えつつ……アクアリム、氷精の宝石へと目を向けた。


「でもよ! それじゃいつまで居るのか分からないんだろ!?」

「そうは言ってもあのドラゴン……普通に考えても太刀打ちできる強さじゃないわよ? メルちゃん……魔法でなんとかなるとかは考えられない?」


 ライノの言葉にメルは首を振る。

 確かに魔法は強力だ……だが、その分詠唱の隙はあり、その隙を付けない程ドラゴンは愚かではない。


「魔法じゃ無理です……全力を出して合成魔法を使えば、あるいは……でも――」


 メルは口を閉ざし黙り込む。

 するとリアスは何かに気が付いたようで……。


「街がどうなるか分からない……か……」

「そんな、じゃぁメルお姉ちゃんの魔法じゃ……」

「うん……それに、私自身どうなるか分からない」


 合成魔法、それは使用者の魔力だけではなく、体力さえ奪ってしまう物。

 それを使い以前動けなくなってしまった事があるのはメル自身、記憶に新しい。


 リアスに使わないでほしいみたいに言われちゃったんだよね……。

 だから、本当にどうする事も出来ない時にだけ……とは、思うけど、今回はなんとかなるとは言い切れない。

 もし、失敗すればそれこそ私だけじゃない、さっき言えなかったけど、街の皆も……。


「それじゃ……手が無いじゃないか!?」


 シュレムはがっくりとしていた時だ。


『メル……』


 服の中から声が聞こえ、メルは慌てて確認する。

 そこには眠そうに瞳を擦る精霊の姿が見え……。


「シレーヌ!?」


 精霊の名を呼ぶとまだ、本調子では無い物のメルの目の前まで飛美あがった精霊シレーヌは笑みを浮かべた。


「どうした?」

「うん、シレーヌが……」


 少し、元気になってる?


『メルのお蔭で元気が出てきました』

「私のお蔭……?」


 どういう事? 私は何も……ううん、元気になって欲しいそうは思ったけど……。


 何が起きたのか? メルは疑問を浮かべつつアクアリムへと目を向け、先程の事を思い出す。

 それは……ただただ精霊を助けたいという純粋な気持ちだった事は覚えていた。

 しかし、それはいつも考えている事で……。


 一体、何が違うのかな?

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