267話 精霊の力
メルはウンディーネの力。
その事について尋ねようとした。
しかし、ウンディーネと言うなでは水の精霊全てが反応してしまう。
困った彼女は変化した精霊にシレーヌと言う新たな名を授けるのだった。
その翌日、メル達は集まり話をしていた。
勿論、その話とはこれからの事だ……。
「それで、ドラゴンが去るまでの間に練習しておきたいの」
メルはそう口にするが、仲間達の視線は疑う物だった。
彼女自身今までの事がある為に何も言えないな……と考えていたのだが……。
「メ、メルお姉ちゃんは嘘を言ってないよ! 昨日の夜話してるの聞こえたし……」
エスイルのその一言で三人の仲間達は溜息をつき……。
「それで、その精霊の力を使うのはどの位危険なんだ?」
リアスの言葉にメルは困り耳と尻尾を垂らす。
危険がどれほどあるのか? そう言われても分からないのだ。
「多分、私には合成魔法よりは安全だと思う……だけど……」
そう、メル自身合成魔法よりは負担が少ないと感じていた。
しかし、それはあくまでメルの話だ。
彼女が気にしたのは自身の事ではなく……そっと視線を移した先にあった。
『?』
可愛らしく首を傾けた水の精霊ウンディーネ、改めシレーヌ。
彼女達にどんな負担があるのかを調べたいのだ。
「その、シレーヌに負担があるかを調べたいの」
メルはそう口にすると一同は首を傾げ……。
「しれーぬ? そんな精霊なんていたかしら?」
「う、うん……ウンディーネの事、シルフもだけど一人だけ姿が変わったの、だから名前を付けてあげたんだ。シルフの方はアリアって名前に」
メルは昨日名前を付けた事を慌てて告げるとシレーヌの方へと目を向け。
この子達は私を助けてくれた。
だけど、その身体に無理をさせてるかもしれない……だからちゃんと調べてあげたい。
そう考えていると……。
「へぇ……そんな事があったのか!」
シュレムは感心した声を上げ、リアスは何処か諦めた様な表情を浮かべる。
「つまり、練習って言うのは二の次で精霊が気になるんだな?」
「う、うん……」
リアスの言葉を聞き、メルは彼らに対してなら本当の事を伝えれば良かったのではないか? と感じていると、それはどうやら当たったようで……。
「なら、最初からそう言ってくれ、それならメルを止める気は無い。ただし無理はしないでくれ」
「分かった約束する」
メルは彼の言葉に笑みを浮かべて頷くのだった。
そして、シレーヌの方へと向くと目に入ったのはもう一人の精霊グラネージュ。
彼女にも微笑みかけ――。
「じゃぁ、皆で行こう!」
と告げると部屋の扉へと向かい足を動かす。
「ちょ、ちょっと待て!? 一人で先走るとまた迷子になるぞメル!?」
「な、ならないよ!?」
そう反論しつつもいつも案内をしてくれる精霊シルフが戻らない事をメルは思いだし……別の理由で不安を覚える。
しかし、それは誰かに解決できる問題でもなく、メルは信じて待つしかないと思い直すと――。
「その、早くしよ?」
仲間達にそう告げ、今度こそ部屋から出るのだった。
街の外に出た一行。
メルはアクアリムを握り絞め、魔力を込めていた。
他の仲間達は辺りを警戒し、メルが集中できるようにしてくれていたのだが……。
「行くよ! シレーヌ!!」
解き放った一閃は綺麗な線を描く……それと同時に迸る水は刃と化し真っ直ぐに飛んでいった。
『えっと、メル……?』
だが、水の精霊であるシレーヌには何の変化もない。
お、おかしいな? ちゃんと魔力は込めたのに……。
メルは手に持つ剣を睨むが変化は何もない。
そこで水の龍の時の事を今一度思い出してみるとある事に気が付いた。
そう言えば、あの時は魔力を通わせたのに……水は出なかった。
まるでウンディーネが魔力を吸っていた? ううん、もしかしたら私が魔力を込めたと思っていたけど実は精霊力を使っていたとか?
無意識のうちに? でもそんな事ありえるのかな?
「うーん……」
メルは変化のないシレーヌとアクアリムへと交互に視線を通わせ、魔力を込める。
しかし、いつも通り水が溢れ出るだけで変化が何もない。
「それで、出来そうなのか?」
リアスにそう言われたメルは困ったように笑い。
「えっと……その……」
返事になっていない返事を返した。
仕方がないだろう、どうやってあの魔法を使うかが分からないのだから……。
「うーん……」
これで分かった事は魔力を込めるだけじゃ駄目ってこと……他にも何か、思い当たるのは精霊力。
だけど……。
「精霊力何てどうやって使うか分からないよ……」
がっくりと項垂れたメルは大きなため息をつく。
するとエスイルがメルの傍へと寄り……。
「えっと普通に使うんだよ?」
と教えてくれたのだが……。
「その普通が分からないの、今まで自分に精霊力があるとは思ってなかったし、私が魔法を使うのがエスイルに分からない様に私は精霊力を使うのが分からない……」
申し訳なさそうにそう告げたメル。
すると――。
「魔力を限界まで使ってみたらどうかしら?」
ライノの提案にメルは瞳を丸くし驚く……。
「ま、魔力を限界まで!?」
それは考えた事もやった事もない事だった。
確かに枯渇した事はある……だが、故意にした訳ではない。
いや、かつて一回だけ行ったがそれは悪魔で魔力の量を調べるためだ。
どうしてもそれが精霊力と結びつかないメルは首を傾げつつ……。
「……た、試してみます」
そう告げたのだった。




