265話 無茶?
宿を取ったメル達。
メルはグラネージュがどうにかするという話を仲間へと伝える。
だが、それは無謀にもほどがあるのだ。
しかし、話の中で自身に精霊力がある事を知ったメルはある方法を思いついたのだが……。
「メル?」
一人結論に至ったメルに対し仲間達は訝しげな瞳を向けた。
まさかまた一人でなにかをするつもりじゃないだろうか? そんな不安が彼らに過ぎる中、メルはその口をゆっくりと開き……。
「ちょっと試したい事があるの……だけど、もしかしたら何かあるかもしれないから、外でやりたいんだけど……その、えっと……一緒にきてくれないかな?」
遠慮がちに紡がれた言葉に一同はほっとし、メルは大きな瞳を丸くする。
すると、リアスは苦笑いを浮かべながら……。
「いや、何時ももう無茶はしないって言ってるのに何度もするからな……また一人でなにかをするのかと思ったんだよ」
「ぅぅ……」
彼の言葉には反論が出来なかったメルは思わずうなり声の様な物を上げる。
事実、今まで無茶をしてきた事から何も言えないのだが……メルは首を横に振ると……。
「ととと、とにかく、グラネージュの力を借りてドラゴンを退散させたい……だけど、本番でやるには無謀すぎるから」
と口にする。
すると、リアスとライノの表情は見る見るうちに変わっていき……。
「やっぱり、無茶をする気じゃないの……いい? そんな無茶をするよりは――」
「でも、何時になったらドラゴンが去るのかなんて分からない、またツィーアでの時みたいにどこかの騎士が襲って来ないとも限らないんだよ?」
メル達と敵対した他国の騎士、彼らとの接触はメルはどうしても避けたかった。
何故ならリラーグで有名な冒険者……その娘である彼女が対立すればメルン、そしてフォーレはきっとその国に狙われるだろう。
二つの国が手を合わせれば勝てないとは思わないが、それでも多くの血が流れる。
そう……戦争だ。
戦争が起きてしまうかもしれない、そう思うだけでメルはその身を震わせる。
なぜその国が首飾りを狙うのかはどうでもいい、しかし……狙って来ている以上、いずれメル達の素性も調べ上げられてしまうだろう。
その前に、全部終わらせたい。
精霊の事だけではない、その事もこれからは頭に入れなくてはならない。
エルフの事もある、やらなければならない事が山積みだ……。
だが、逃げる訳にはいかない。
逃げてしまえばそれこそ精霊は死に絶え、世界は滅びていくだけだ……その為にも首飾りは守らなきゃいけない。
だが、あれだけ大きな船が沈んだのだ話は伝わっているはずだ……だからこそ、一つの場所に留まっているのは危険だと判断したのだ。
「メルの言う事は分かる……だけど……」
「空を飛んで移動するのは駄目なのか?」
リアスは渋り、それを見たシュレムは空を提案するがメルは首を横に振る。
「駄目、デゼルトが居れば別だろうけど、魔法で飛んで移動するには魔力が足りないよ……途中で海に落ちるだけ、安全に移動するにはやっぱり船が必要なの」
「で、でも……どうやってグラネージュ達にドラゴンを追い払ってもらうの? 僕の力じゃ……」
エスイルはもごもごと自信が無さげに指を合わせたり離したりしながらそう口にした。
「うん、それなんだけど……エスイルと私がなんとかする、多分私達にしか出来ない事だよ」
エスイルには魔力が無い。
そう思ってたけど、実はそうじゃないのかも……魔法を使えるほど無いってだけで私同じでううん、私と逆なだけかもしれない。
メルはそう考えると仲間達に向き直り……。
「だからいったん外に出かけよう?」
「外って……一体なにをするつもりなの? メルお姉ちゃん」
メルの発言に不安そうな声を上げるエスイル。
だが、不安なのは彼だけではない……仲間達もメルが無茶をしないか不安であるし、メル自身不安はあった。
しかし……。
「……もしかしたら、ドラゴンを追い払えるかもしれない……」
メルはそれだけを言うと仲間達の返事を待つ。
「確かに追い払えればすぐに行ける。だけど……追い払える根拠はあるのか?」
リアスの言葉に頷くのは勿論ライノだ。
「私はウンディーネ達に助けられた……それは普通の精霊では出来ない事だよ……だったら、その力をウンディーネ達がいつでも使えれば」
今回だけではない、いずれ役に立つだろう……そう考えた。
「そうだな、それは分かる……」
リアスの言葉にその表情を明るくしたメル。
だが、続く言葉に彼女はがっくりと項垂れた。
それもそうだろう……。
「だけど今回は相手が悪すぎる……力を試すなら普段でも勝てる相手の方が得策だ! 失敗すればこの街も危険に巻き込む事になるんだぞ!! そこは考えたのか!?」
「そうね、焦る気持ちは分かるわ……このままここに居てもあの騎士の様な奴らが来るかもしれないとも思える。だけどね、同時にドラゴンを突破して来れるとも考えづらくないかしら?」
二人の言葉にメルは尻尾を丸くし、ぅぅぅ……と唸り声をあげた。
悔しい事にその通りなのだ。
嘗てドラゴンに打ち勝ち勝利を収めたユーリでさえ、一人で戦った訳ではない。
白紙の本の精霊ソティルが一緒に戦い、また彼女はユーリが勝つことを確信していた。
そう、決定打を与えらない上、海をも凍らせる手段を持つユーリ相手では当時水龍であったデゼルトには分が悪かったのだ。
そして、今回も敵は水龍であり、手を貸してくれる精霊は氷を司る精霊グラネージュ。
相性的にはいいだろう……しかし……。
それでもユーリママと同等……もしかしたらそれ以上の力となると普通の精霊魔法や召喚じゃ駄目……。
だとするとウンディーネみたいな力が必要になってくるよね……でも、その方法が分からないんじゃ……ううん、使えるか確実じゃないんじゃ……。
「今回は賛成できない、シュレムもメルに無理をさせたくないなら首を縦に振るな!」
「お……おう……」
リアスの強い否定にシュレムは気圧された様で首を縦に振る。
メル自身今回ばかりは分が悪すぎるという事を理解しているためか、一人でこっそり練習を……なんて事は考える事も出来なかった。
でも、そうしたら、やっぱりこのまま待つしかないのかな……。




