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259話 氷の宝石

 世界を救う。

 嘗てタリムの王と恐れられた魔物の長はエルフの使者である月夜の花によって倒された。

 しかし、今度はそのエルフが世界を脅かす敵になるかもしれない。

 そう氷狼より言葉を受けた小さな少女は……。

 母達の代わりに自分がそうならないようにすることを選んだ……。

 旅の始まりの日……その日とは違う目的を持ったメルと仲間は再び旅立つのだった。

 ブランシュの酒場へと戻った一行。

 彼女達はそこで情報を集め始める……目的はやはり宝石をどうするかだ。


「うーん、大きさからだとペンダントが丁度良いのかな?」


 メルは手に持った宝石をまじまじと見ながら呟いた。

 その隣に座るリアスはメルの手にある宝石を見つめながら……。


「どんなアクセサリーにするかはともかく、まずは職人を見つけないとな……」

「職人ねぇ……適当に街を歩いてれば良いんじゃないか?」


 シュレムはそう言うがライノは首を傾げた。

 その理由は簡単な物であり…………。


「あのね、シュレムちゃん、職人を探すのは簡単でも頼むのは難しいわよ?」

「どうしてなの?」


 ライノの言葉にエスイルは尋ねる。

 すると水を持って来た女性が話を聞いていたのだろう……。


「あのね、エスイル君職人さんって言うのは何て言うか、こう……かたーい人が多いの、だから人が加工した宝石じゃいやだとか言う人も居るし、そうじゃなくても高くなることがあるのよ」

「そ、そうなんですか?」


 メルもそれは初めて聞いた事であり驚きの声を上げ、ライノを見る。

 すると彼も頷き……。


「そういう事、そう簡単に見つかる物じゃなさそうね……」

「でも、それならどうする? まさかリラーグに戻ってカルロスに頼むって訳にはいかないだろ?」


 腕を組んだリアスは手先が器用な商人である彼の名を出した。

 確かに彼ならば宝石をそのままペンダントにすることは可能だろう。

 だが、その彼は旅から別れすでにリラーグへと向かっている。

 そう簡単に合流する事は出来ない。


「うーん……ブランシュさんは知らないかな? 職人さん……」


 メルは女性に問うと彼女は聞いてくるとだけ残し、去って行く。

 暫くたつと戻って来たのだが……。


「やっぱり、気難しい人位しか知らないって……」

「あ、ありがとう」


 メルは予想通りの結果に苦笑いしつつも礼を告げる。

 そして、ため息をつくと……ふとある事に気が付いた。


「ねぇ、カルロスさんて最初からあんなに手先が器用だったのかな?」


 メルが身に着けている髪飾り。

 それは彼が作った物だ……だが、最初からそれが出来たとは思えなかったのだ。

 彼女の思い浮かべた疑問……それを聞きリアスは首を横に振った。


「いや、発想は別として技術は誰かから学んだんじゃないのか?」

「そうなのか?」


 リアスの言葉にシュレムは首を傾げる……しかし、メルはそんな事よりも――。


「なら師匠が居るって事だよね? その人が何処に居るか、そして加工をしてもらえるように頼もうよ! 」


 そう、彼女が考えた事はカルロスの師の事だ。

 職人である以上、ただとは言われないだろうが、それでも弟子の知り合いならば多少の言葉を聞いてくれるかもしれない。

 そう思った彼女は思わず席から立ち上がり、仲間達を見渡す。

 すると仲間達は……。


「いや、それだと余計に時間がかからないか?」

「僕も、そう思う……」

「メル……オレでもそれはどうかと思うぞ?」


 否定的だった。

 いや、口にしたメル自身もそれは駄目だろうと思っていた。


「悪くないと思うわよ?」


 しかし、ライノは違ったのだ。


「他を当たるのと同時に連絡してみるのもいいかもしれないわ、近くにいるかもしれないのだし……下手な人物に頼むよりは良いんじゃないかしら?」

「本当!? じゃぁ、早速シルフにお願いするね」


 メルは彼の言葉に表情を明るくしそう言うと近くに居る精霊シルフへと話を伝える。

 するとシルフは頷くも……。


『でも、私が居なくてメルは大丈夫?』


 心配そうにメルの顔を覗き込む。

 思わぬ反応にメルは目を丸めるも……。


「今度は皆も居るしちょっと位なら大丈夫だよ」


 と答えると、シルフは笑みを浮かべて飛び立っていった。


 なんだろう? 今まではすぐに言ってくれたのに……私自分では気が付かなくてもどこかおかしいのかな?


 そんな事を考えつつも、仲間達へと視線を戻したメル。


「それでこれからどうしよう?」


 どうするというのはどうやってルーフに渡るか、と言う事だ。

 海を渡ろうにもあの龍にまた遭遇しては無理だろう。

 かと言って海路以外には道はない……つまり、より頑丈で早い船が必要だ。

 しかし、そんな船は一般の航海で使われるはずもなく……メルが思い浮かぶのは自身の家のあるリラーグ。

 そこに浮かぶ飛龍船ぐらいだった。

 だが、戻るには結局海を渡るか……それとも山越えをするかになってしまう。

 前者なら元来た道を辿るよりは先に進んだ方が良いだろう、後者なら食料も道具も足りない。

 買い足さなくてはならないのだ。

 そもそも戻るのならカルロスに加工を頼めばいい。


「そうね……」

「うーん、なぁ? あの龍を手懐けられないのか?」


 悩む一行の中、シュレムはそう言うがメルは慌てて首を横に振る。


「無理だよ!? だって、相手は龍だよ!? 防御の魔法とかそういうのに優れたユーリママならともかく私じゃ……」


 この前の二の舞だ。

 その言葉はなんとか飲み込みつつ、メルはがっくりと項垂れ尻尾を丸めた。


「…………先に進もう」


 リアスは黙り込む一行の中一人、そう口を開く……。


「リアスお兄ちゃん、でも……またあの龍が……」

「出会うかもしれない、だけど海を渡る以上……それは絶対に避けるなんて事は無理だ。なら先に進もうその方が良い」


 そう口にされ、メルは渋々首を縦に振る。

 確かにそうなのだ……どんなに頑丈であっても海を渡る事は変わらない。

 空を行く飛龍船も絶対安全とは限らない。

 どんな移動手段を使っても龍と出会う可能性はある……その事は十分理解していた。

 ただ、一度味わったあの恐怖は決して拭えるものではなく……エスイルを始めとした仲間達には深く傷跡を残していた。

 それでもメルは――。


「そうだね、こうしてる間にも精霊が皆が……苦しんでる。助けないと!!」


 そう強く訴えるのだった。

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