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258話 旅立ち

 エルフと戦う術を思いつかない。 

 だが、言っていることが本当であれば黙って待つわけにはいかない。

 メルは精霊との絆を育み……エルフに交渉することを考える。

 氷狼はその答えを受け入れるとメルに宝石を託すのだった。

 差し出された宝石は綺麗に成形されており、元々は何かにくっ付ける予定だったのではないか? と思われた。

 メルはそれを受け取りまじまじと見るのだが……。


「これ、落とさない様に気を付けないと……」


 思わずそう呟いた。

 それもそのはずだ、その宝石は決して小さくはないが大きくもない。


『それは元々お前の剣、アクアリムにはめ込まれる予定だった物だ……良く見るとへこみがあるだろう?』

「メルの剣に?」


 氷狼の言葉にリアスは疑問で返しつつ、メルの腰にある剣へと目を向ける。

 すると、確かにへこみの様な物がある。


「ここに、はめ込むの? でもこのままじゃ……」


 固定されず、落っこちてしまうだろう事は誰の目から見ても明らかだった。


「でも確かにこの大きさ、金具を取り付けたらぴったりね?」


 ライノは宝石と剣にあるへこみを見比べ、そう告げる。

 それを聞きメルは宝石を剣へと当ててみると……確かにそうだ。


「うん……でも、今この剣に金具を付けられるのかな?」


 変にいじくられて使い物にならなくなる方が困る。

 メルはそう思っていたが、それは当然のことだ。

 家に伝わる家宝、それに傷をつけるなんて事は出来ない。


『ああ、恐らくは人の手を加えようとしては駄目だろう、だからそうだな……その宝石を元に何かを作ってもらうと良い』

「何かってなんだよ!!」


 シュレムは氷狼の言葉に食いつくが、氷狼は彼女を無視し……。


『確かに渡したぞ? それを持ちお前が何をするかはお前自身の自由だ……だが、その選択によってこの世界の命運をも分けるという事を忘れるな』


 メルへとそう伝えた氷狼はもうこれ以上何も言う事は無いとばかりに口を閉ざしてしまった。


「…………メルお姉ちゃん」


 突如言い渡された言葉に一行は固まる。

 世界の命運……確かに最初からそれを背負ってはいた。

 しかし、それはエスイルが精霊を生み出す儀式をすることで終わると思っていた。

 だが、現実は違い……今となってはそれよりも難しい事を強いられている。

 母達に頼った方が良いだろうか? メルはそう考えるも……。


 でも、氷狼が私を呼んだ……もし、ユーリママ達の方が良いならユーリママを呼ぶはず。

 それなのに、呼ばれたのは私……。


 自分に出来るだろうか? ではなく、やらなくてはならないのだ。

 そうメルは意思を固め……氷の様な透き通った宝石をじっと見つめ……。


「街に戻ろう? これをアクセサリーかなにかにしてもらうの……」


 そう呟くと自身の首にかけていた首飾りをエスイルに渡した。


「ああ、その方が良いな……落とさない様にしないといけないしな」


 リアスは頷きそう答えるがエスイルとシュレムは首を傾げる。

 そして会話をこっそり交わした二人は……。


「ねぇ……メルお姉ちゃん」

「ん?」

「何で首飾りを外したんだ?」


 と尋ねた。

 するとメルは何処か恥ずかしそうにはにかみ……。


「だ、だって……そう何個も身に着けられないよ……いっぱいそのアクセサリーを付けてたら周りからも見られるし……」


 彼女の脳裏に浮かんだのはリラーグでたまに見かけたアクセサリーだらけの女性。

 一体なにを主張したいのか理解が出来ない程、身に着けていた事を思い出すと……。


 この髪飾りは外せないし……リボン、だって本当はつけたい。

 その上首飾りにもう一つ新しいのなんて……周りから変な目で見られるよ……。

 いくら、大事な物だって言っても限度ってものが……。


 確かに精霊の首飾りは綺麗だ。

 普段使おうとしても良いぐらいの物ではあるが、それでも物事には限度がある。

 メルはそう考えたのだが……。


『人とは不思議な物だ……』


 氷狼の一言でその場には笑い声が生まれた。







「それじゃ、街に戻るよ」


 メル達は氷狼に別れを告げ、洞窟から去ろうとする。

 そんな彼女たちの背を見つめていた氷狼と幼き少女は互いに目を合わせると洞窟の奥へと戻っていった。

 偶々後ろを振り返っていたメルは彼らの背を見る事が出来、不思議な気分になりながらもすぐに前へと向き直る。


「…………」


 そして、真剣な表情になると自身の小さな手には世界の命運が重くのしかかる様な錯覚を感じた。

 いや、錯覚なんかではない。

 この場に居る仲間達、彼らにも同じ様な気持ちが生まれただろう……。

 メル達は託されてしまったのだ。

 透き通る氷の様な宝石と共に滅びゆくこの世界を救うという目的を……英雄(母達)にではなく……メル達に……。


 本当に自分達に世界が救えるのだろうか?

 エルフに認めてもらえるのだろうか? 不安が重くのしかかる。

 確かにこの旅は始まったその時から世界を救う旅でもあった。

 だが、メルにとっては友を助けるため……リアスを死なせないために始まった旅だ。

 最早当初の目的とはすり替わった物になってしまった旅……。

 仲間達に此処で旅を止めようと言われても仕方がない事でもある。

 神でもあるエルフをどうにかするという依頼はメルが受けたのだから……そう思い仲間達へと視線を向けたメルだったが……。


「ん? どうしたんだよ? もしかして……ついに結婚の話か!?」


 姉はいつもの冗談を……。


「だから、シュレムお姉ちゃんも女の子だから……」


 苦笑いをしつつそう返すエスイルも……。


「あらあら……全く……メルちゃん早く戻って加工してもらうんでしょ? 立ち止まってないで行きましょう?」


 二人のやり取りを見て笑うライノ。

 そして……。


「やることが増えたんだ……余計にのんびりしてる時間はないみたいだしな。行こうメル」


 リアスも……仲間達は誰一人として旅を止めるという雰囲気は見せる事は無かった。

 それどころか、いつも通りで……メルは心の底から安心し笑みを浮かべると……。


「うん!」


 彼らと共に街へと戻るのだった。

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