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257話 選んだ道

 エルフは世界を創った。

 だからこそ、それを自由にする権利があると思っている。

 そう告げる氷狼の言葉は不思議と信じられるものだった。

 果たして……これからメル達はいや、世界はどうなってしまうのだろうか?

「そんな……」


 メルはそう思う事で絶望を感じていた。

 相手は創造主だ……どう足掻いた所で適うはずがない。


「そんなの、信じるなって言われてもどうする事も出来ないよ……」


 ただ信じないだけでなにかが出来るなら簡単だ。

 しかし、事はそれで済むはずがない……片付けられたら、いや……壊されたら終わりなのだ。


「そうだな……メルの言う通りだ……オレ達にどうする事も出来ないって……」


 この世界の終わり、それが見えてしまったメルはがっくりと項垂れ、その様子でなにかを察したシュレムもまたぼそりと呟いた。


「ここに呼ばれたって事は何かしら方法があるんじゃないのか?」


 しかし、リアスは諦める様子もなく氷狼に問う。

 すると氷狼は頷き……。


『ああ、いくら創造主と言えどこれだけ育った世界を壊すのは大変だろう……時間が掛かる』

「それってエルフを倒せって事かしら?」


 答えを言わない氷狼に対し、ライノはそう切り出すが氷狼は首を振り否定する。


「精霊は殺せないよ……住処を奪わない限り……それにエルフがこの世界を作ったって言うなら住処が何処にあるのかも分からない……」

「うん、もしかしたらエルフは精霊とは違った存在なのかもしれないよ? だから、この世界の人じゃない別の場所にいるのかも……」


 メルとエスイルはそれぞれそう告げるとシュレムはしゃがみ込み頭をくしゃくしゃとかく……。


「んぁー!! 意味が分からねぇ!! エルフはこの世界を作った奴なのにこの世界の奴じゃない!? 二人共なにを言ってるんだ!?」

「あくまで予想だよ……ナタリアやユーリママの言う事では他にも世界があるみたいだし……」


 メルはそう言うとリアスの言う何らかの方法を考える。

 自分だったら……どうするか?

 踏み込み過ぎた人達に対し……それが自分の仲間や子を脅かす存在だったらと……。


 どうにかして追い払う……多分エルフはこう考えて世界を壊そうとしてる?

 でも、中にはリアス達みたいに精霊を助けようと動いてる人も居る……。

 それにリアスはエルフに武器を与えられた。

 武器って普通に考えれば戦うための道具……でもなんで?

 ううん、考える程じゃないよね……リアスの事を信用……信頼した。

 この人なら武器を与えても問題ないって……。


 メルがリアスの方へと向くと目の前に二人の精霊が不安そうな顔をして現れた。

 シルフとウンディーネだ。

 姿が変わっているとはいえ二人は精霊。


『メル……』

『エルフは悪い精霊ではないですよ?』


 自分達の母でもあるであろう精霊を庇護する彼女達を見てメルは――ハッとした。

 何故姿が変わったのか? 何故個体としてついて来ているのか? 色々と疑問ではあったが……。


 この子達は自分の意思で私を助けてくれた。

 私を信頼してくれて仲間だって思ってくれてる。

 精霊はエルフの子供……だったら! その子達に信頼されれば……それが出来れば!!


「大丈夫……エルフとは戦わない、でも……この世界も壊させない」


 きっと母達も同じことをするだろう。

 初めて会った時年の離れたライノを見ても母達は警戒しなかった。

 それは恐らくメル達がライノを仲間だと認めていたからだ……。

 そう考えた彼女は――。


「他の精霊()達にも信頼してもらう……きっとそうすればエルフが世界を壊そうって考えてても考え直してくれるはず」


 自身の考えを口にする。

 すると氷狼は……。


『ほう、それで……何故そうした方が良いと思う?』

「だって、精霊はエルフの子供みたいなものでしょ? だから……」

「なるほどな……子供の声には逆らえないか……だけど本当に効果があるのか? 子供とも言えるが、作られた存在なのは変わらない」


 リアスの言う事は最もだともメルは思っていた。

 しかし、それでも……。


「それでも、エルフは精霊達の事を心配してる……そう思うの」


 メルはそう信じ、口にする。

 もし違うのであれば、エルフは精霊が滅びようと感心何か無いだろう……それに魔族(ヒューマ)は自然と共存できない種族でもある。

 しかし、そんな中でも精霊と人間本来なら相容れない存在で共に生きようと足掻く者も居る。

 そして、その方法は無いとは言い切れない! 何かあるのではないか? メルはそう考えたのだ。


「良く分かんねぇけど良く分かった! とにかく精霊を守れば良いんだろ!?」

「あはは、はははは……」


 シュレムの言葉にメルは乾いた笑い声を上げる。

 しかし、彼女は本気でシュレムの発言に困った訳ではない。

 姉はきっとどうしても理解できない場合でも過程を無視して正解を選んでくれる。

 メルは彼女を信頼していた。

 いや、彼女の事だけではない。


「どう、かな?」


 メルは残りの仲間達にも問う。

 すると――。


「そうね、エルフ……神様相手なんて普通は無理なんだし良い手だとは思うわ」

「うん! 僕もエルフとは戦いたくない」

「そうだな、命の恩人に恩を仇で返すつもりはないからな」


 三人の言葉にホッとしつつメルは最後に氷狼たちに目を向ける。

 そして……。


「これが私達の答え……どう、ですか?」


 メルは氷狼に尋ねる。

 彼はゆっくりと頷き……。


『良いだろう、賢き娘よ……戦いは知識を生む、だが、和平もまた知識を生む……悪くない答えだ……』


 満足そうにそう口にすると、氷狼は前に立つ少女の背を鼻で押す。

 すると、少女は一つの宝石を取り出し……。


「そ、それは?」

『かつてエルフはアーティファクトと言う物を作り出した……それは大地を作り空を作り、生き物を作り、海や川を作る……』


 その話はメルも聞いた事がある物で自身の腰にあるアクアリムへと目を向ける。


『そして、唯一作られなかったアーティファクト……いや作りかけの物があった……それが、その剣とこの宝石……娘よ、お前のアーティファクトに司る精霊の姉妹ともいえる者を象徴する道具だ』


 差し出された宝石……それにメルは手をゆっくりと伸ばす。


「姉妹……」


 そう言われると思い当たる精霊は一人しかいない。

 だが、当の本人()は気づいていないのだろう、メルが目を向けても首を傾げるだけだった。

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