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255話 雪山へ

 エスイルの装備を整える為、出発を遅らせたメル達は早速買い物へと向かう。

 その足でシュレムの盾も買いに行くのだが……。

 そこにあった物はとてもいいものとは言えない代物だった。

 しかし、シュレムの基準はあくまでリラーグでのものだ……当然そこと比べてしまえば見劣りしないなんて事は珍しい物だろう……。

 その日の夜はブランシュの酒場でゆっくりとした一行は翌日、予定通りに氷狼の元へと旅立とうとしていた。


「本当に行くの?」

「うん!」


 心配そうに語りかけてくるブランシュに笑顔で答えたメルは言葉を付け足した。


「きっと悪い子じゃないと思うの……だからきっとまたこの地方の守り神になってくれると思う」


 そうは言う物の今まで氷狼と名乗る魔物に苦汁を飲まされて来たブランシュ達はそう簡単に信じる事は出来ない。

 やはり危険だと考えているのだろう……しかし、止める事は出来ないと分かっているのだろうか?


「絶対に生きて戻るんだよ? 他の子達も」

「ああ、勿論だ!! オレに任せておけって!!」

「いやシュレム……お前が一番……いや、よそう」


 何かを言いかけて止めたリアスを見てメルは笑みをこぼす。

 そして――。


「行こう? 皆!」


 メル達は氷狼に会う為に再び旅立つのだった。





 街を出たメル達は雪山を上る。

 しかし……。


「はぁ……はぁ……」

「き、きついな……」


 足の装備を身に着けなかったメルとリアスは息をつきながら山を登っていた。

 代わりにライノやエスイルはメル達よりも僅かな差ではあるが軽々と昇っていく……。


「や、やっぱり私達も買っておけば良かったかな?」


 メルは買わなかった事を後悔しつつそう口にする。

 するとリアスは首を横に振り……。


「いや、あったら便利だとは思う、けど……戦いになったら不便だ」


 メルの判断は間違っていない。

 リアスはそう考えメルに伝えるが……。


「た、確かにそうなんだけど……」


 歩く時が辛いよ……やっぱり時間が掛かっても戦う時だけ外す方が良かったかも……このままで魔物なんかと出会ったら……。


 メルはそう恐れるも不思議と魔物達とは出会わずに一行は進んでいく……。

 不思議に思い首を傾げるメル達。

 だが、何度警戒し辺りを見回しても魔物の姿が無い。


「おかしいな……それに、この足跡は……」


 しかし、足元に残っていた大きな足跡、狼の物だろうか? それを見つけたリアスは辺りを再び見回す。


「何も居ないぜ? どういうことだ? こんなにはっきりと足跡が残ってるのに」


 魔物が居ない事に流石のシュレムもおかしいと感じたのだろう、そう口にする。

 そんな一行の中、メルだけは違った。


「多分それは氷狼の足跡だと思う」


 そう答えると少女は一つの事に気が付いた。


 足跡があるのに魔物はいないっという事はきっと氷狼は魔物に恐れられている。

 そして、多分……事前に魔物を追い払ってくれていたんじゃ?


「行こう、皆! きっと首を長くして待ってくれてるよ」


 メルは笑みを浮かべ歩く先を示すのだった。









 それから暫く歩いた所、氷狼の寝床へと一行は辿り着く……。

 入口らしきその場所は大きな氷が砕かれたようになっていた……。

 恐る恐ると足を踏み入れたメル達はそこに居た美しい魔物に目を奪われた。

 白銀の毛並みは魔物が呼吸をするたびに揺れ光り輝いているように見える。

 そして、魔物はメル達が入って来るとその大きな瞳を向けた。


『ようやく来たか……』


 魔物……いや、氷狼は立ち上がると影になっていた場所から一人の少女が顔をのぞかせた。


「だ、誰!?」


 その少女はメルの知り合いではなく、全く知らない人物だ。

 勿論、メルだけではなく仲間達も……。


「…………」

『この少女は声が無い、だが特殊な力があり他者の言葉を別の者に届けることが出来る』

「え……」


 そう、メルが氷狼の声を聞こえた理由。

 それが彼女の力だったと言うのだ……驚かないはずはない。

 何故なら少女のその姿から魔族(ヒューマ)だという事は分かるが、そんな魔法は存在しないのだ。


「嘘……」

『信じがたいだろう、だが、事実だ』


 氷狼はそう口にすると大きな体を揺らしメル達の元へと向かって来る。

 その後ろをまるで兄妹について行くようにトコトコと少女は付き歩く。


「わ、私を呼んだのはどんな理由?」


 メルは近づいて来る魔物に対し、たじろぎつつ問う。

 それもそうだろう……その魔物からは確かに優しさはあった。

 しかし、それ以上にどうやっても敵わないと理解出来た。

 どんな行動をしようが魔物が襲ってきたら最後、メル達は死を迎える。

 そう思えて仕方がなかったのだ。


『怯えるな、我は忠告をするために此処に呼んだのだ』

「忠告だって? 意味が分からないな? なんでそんな事をする」


 リアスは魔物とメルの前に割り込むとまるで守る様に立つ。


『簡単な事だ……エルフを信じるな』

「ん? ちょっと待てエルフってあの精霊のエルフか?」


 シュレムは首を傾げつつ、氷狼に問う。

 だが、そんな彼女には興味情けにメルとリアス、エスイルそしてライノを見つめた氷狼は……。


『人は踏み込み過ぎた……エルフは決断をするだろう……お前達が何をすべきかは自身で考える事だ。だがこれだけは伝えておこう……精霊はともかくエルフを信じるな』


 どういう事だろうか? メルは精霊に問おうとシルフとウンディーネへと目を向けた。

 すると二人の精霊は首を傾げ――。


『何を言ってるの?』

『分かりませんですが……なんでしょう? なんかもやもやしますね……』


 メルは二人の会話を聞き、言いようのない不安を感じるのだった。

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