254話 エスイルの準備をしよう
メル達が旅立とうとしたその時、聞こえたのは少年の声だ。
彼は自分も逝くと言い始め、メルは当然駄目だと告げようとした。
しかし、仲間に自分は良くエスイルが駄目と言うのはと言われてしまい。
また、彼の力が必要だと思った彼女は連れて行く事を決意するのだった。
すぐに出発をしようとしていた一行だが、エスイルを連れて行く事を考えると出発は翌日へと帰る事にした。
まず、装備を整えてからになると遅くなってしまうのも理由の一つだ。
「だから今日はしっかり装備を見よう?」
メルはエスイルにその事を説明すると、少年はこくこくと首を縦に振る。
「それなら、早速店に行こう」
リアスは二人の様子を見て何処かほっとした様子でそう口にする。
そんな彼を見てメルは首を傾げつつ……。
「どうしたの?」
と、問うと……。
「ついさっきまで動けなかったメルも休ませる事が出来るからな」
「ぇぅ……」
メルは変な声を上げるとがっくりと項垂れ、恐る恐ると仲間達を見回す。
するとそこには笑顔の仲間達が居り……。
「も、もうしないよ……」
と口にするのだが……。
『ユーリはそう言ってやったよ?』
以前にも聞いた事のあるシルフの言葉が聞こえ……。
「シルフまで……」
再び耳と尻尾を垂らし項垂れるのだった。
酒場から出た一行は予定通り、エスイルの装備を整える。
雪国なだけあり、防寒具はしっかりしており他にも冒険に使えそうな道具をいくつか見ることが出来た。
「この棒で滑らなくなるんですか?」
メルは先がとんがった棒のような物を持ち店主へと尋ねる。
「絶対って訳じゃないが滑りにくくなるな、斜面を登る時に重宝するぜ」
「なるほど、それにこの靴に着ける奴も魔物の牙が付いてるな……これは一体?」
リアスは靴に着けるという道具で紐に魔物の牙が付いているものを手に店主へと問う。
「ああ! 牙が雪に食い込んで歩きやすくなるんだよ! こっちのよりもより滑りにくい……ただ問題が……」
「普段と違うから戦いにくいって事かしら?」
ライノは店主が苦い顔をした理由を予測し口にすると彼は重々しく首を縦に振った。
「ああ、冒険者からは不人気だ……足を取られるってな、まぁただでさえ雪道は厳しい。滑りにくいだけでも良いんだがいざ戦いとなると今度は動きづらいんだ」
彼は頭をポリポリとかきそう告げると……。
「それでも便利には変わりがないけどな」
と口にする。
するとメルはそれをしばらく見つめた後……。
「ライノさんとエスイルは買った方が良いかもしれない……後シュレムも」
「なんでだよ? 邪魔ならいらないだろ?」
メルの言葉にシュレムは首を傾げながら訴えるが、メルはそれに対し……。
「シュレムは盾を構えて耐える必要があるし、二人は前に出る訳じゃないよ? 私とリアスは足を取られたら困るけどシュレムは足が滑る方が困るよ」
メルがそう言うとシュレムは感心した様に頷き、装備をまじまじと見る。
そして、何度か首を縦に振ると……。
「なるほどな、確かにそうだ! 親父これ、オレにくれ!!」
「毎度!」
彼女はメルの言う通り装備を購入した。
シュレムだけではなくライノとエスイルもそれを購入し店主へと礼を告げると次は防具屋へと向かう。
目的は勿論……。
「次は……シュレムの盾だね」
そう、メルの姉同然の少女シュレムの武器の為だ。
武器と言っても盾は身を守る道具、武器屋ではなく防具屋でそろえる方が早いだろう、幸い防具屋は近くにありメル達はそのまま店へと足を運んだ。
しかし――。
「うーん、どれも微妙だな」
中にある盾を見てシュレムはそうぼやく。
当然だ、彼女が使っていた盾は特別なのだから……それよりか、店にある物は幾分マシな物なぐらいで、シュレムは首を傾げながら大きな盾を一つ買う。
すると店主は先程の微妙と言う言葉を聞いていたのだろう面白くないと言った顔で――。
「これで良いんですか?」
「ああ、仕方な――――」
続くシュレムの言葉に一行は焦り、急いで口をふさぐ。
そして――。
「こ、これでいいわ、この子の使い方が特殊なだけで良い品には間違いないもの!!」
ライノはそう答えるが拘束から逃れたシュレムは眉をひそめた。
「いや、防具としてどうかと思うぞ? 所々鎚を打つのが間違ってるのかへっこんでるからな?」
そう言いながら購入予定の盾へと指を向ける少女。
「これは確かにへっこんではいますがそれでも、自慢の一品! 気に入らないなら買わなくても――」
「い、いえ、立派な盾だと思う……ぜひ買わしてもらうよ」
これ以上店主の機嫌が悪くならないうちに買い物を済ませようとリアスはそう口にし、料金を支払うと急いで建物の中から出る。
それにメル達も続き、暫く歩いた所で溜息をつくと……。
「シュレムお姉ちゃん、あれじゃどこでも買えなくなっちゃうよ?」
「そうだよ、それに……店主さん怒ってたし暫くはあの店には行けないよ……」
エスイルとメルはそう訴えるのだが、シュレムは購入した盾を身に着けながら……。
「オレは本当の事を言っただけだぞ?」
「だからリラーグの武器防具と比べちゃ駄目だって……あそこはリーチェさんとかが居るんだからね?」
言われた言葉にメルはがっくりとしながら答えるのだった。




