251話 燃える屋敷
ライノは薬を作り、メルへと使う。
しかし、その薬は元から完成されたものではなかった。
果たして効果はあるのか? 疑問と不安を抱える一行は屋敷が燃えている事に気が付く……。
逃げ道も無く戸惑うリアス達にライノはアクアリムを使うように告げた。
しかし、その武器はリアスとシュレム魔力を持つはずの二人には使えないのだった……。
「おい! リアスおい! ヤバいぞ!! どうするんだよっ!!」
「どうする事も出来ない! これだけ炎が広がってたら逃げる事なんて……」
「ちょ、ちょっと……もう一度剣を試して見れくれないかしら!?」
……懐かしい声が彼女の耳に聞こえた。
その声はどうやら焦っている様だ。
どういう事なのだろうか? 魔力を抜かれた事は覚えていたのに彼らの声を聞いてなのか、それとも別の原因か彼女には分からなかったが……確かに完全とはいえはしないでも魔力が戻っていた。
疑問を感じつつ、彼女が瞼を持ち上げると……そこには自分を守る様に立つ三人が居り、その奥には炎が迫っていた。
辺りを確認すればそこは自分が捕らわれていた場所だ。
恐らく彼らが助けに来てくれたのだろう事に気が付いたメルは――。
皆が……危ない……。
何故魔力が戻ったのか考えるよりも先に仲間達を助けようと身体を動かした。
火を……消さないとっ!!
「撃ち放て! 水魔の弓矢……」
メルがその言葉を口にすると仲間達は振り返り、その表情を明るくする。
彼女も笑みを浮かべたかったが再会を喜ぶのは後だ……。
炎に目掛け右手を突き出した彼女は最後に魔法の名を唱える。
「ウォーターショット!!」
魔力を多めに込めたソレは炎の中に道を作る。
これで進めるはずだ、そう思ったのだが……。
「メル! ここは地下なんだ上に行く手段がない!!」
「……っ!!」
それを聞きメルは今度は天井へと右腕を向け――。
「撃ち放て、水魔の弓矢!! ウォーターショットっ!」
再び魔法を唱え、大穴を開けると今度は仲間達に向け、魔法を唱えた。
「我らに天かける翼を……エアリアルムーブ」
魔法によって宙へと受けるようになった二人はメルの近くによると彼女を抱え、空へと舞う。
その後を翼をもつ種族である天族のライノが追い、メル達は燃え行く屋敷からの脱出に成功した。
メルが魔法で天井に穴をあけたからか、あっけなく崩れたソレを見て一行はゾッとしたものを感じつつも近くへと降り立つと……。
「メルちゃん、身体は大丈夫?」
「メル、大丈夫か!? 怪我はあるよな!? 変な事されてないか!? 畜生あの変態共め!! オレの嫁に……っ!!」
「ちょ、ちょっと二人共!?」
迫るシュレムとライノに戸惑ったメルは助けを求めるようにリアスの方へと向く、するとそこにはほっとしたような表情で佇む少年の姿があり……。
「良かった目が覚めたんだな、メル……」
「リ、リアス……?」
皆一体どうしたんだろう?
メルは訳が分からず首を傾げる。
そう、彼女は……。
「メルは魔力を無理やり抜かれて、その所為でうなされてたんだ」
「え? うなされて……?」
詳しい事は覚えていなかった。
確かに魔力を抜かれた、しかし、その後どうなったのかは覚えていない。
なんだろう、何度か目が覚めたのは覚えてる。
でも、その時何を考えて何を思ったのかは分からない……ただ、怖かったことは覚えてる。
メルはぽっかりと空いている記憶に困惑しながらも一つの事を思い出した。
「そ、そうだ! 氷狼!!」
そう彼女がここに来る理由になった魔物の事だ。
死んだはずのこの地の守り神。
それが暴れていると聞き、メルは此処へと尋ねてきた。
だが、その魔物には結局会えておらず屋敷を見つけ、そこが怪しいと考えたのだが……。
「ここには魔物は少ないみたいだぜ?」
「そ、そっか……」
シュレムの言葉を聞き、メルは耳を垂らした。
そもそもあの屋敷は燃えてしまった。
空から見た限りでも魔物らしき姿は近くにはない事は分かっている。
やっぱり、あの人たちが原因だったのかな?
そう思うが、確証を持てずメルは首をひねり唸る。
すると、ライノは――。
「どうやら、近くを見に来た人を襲っては氷狼のうわさを流していたみたいよ? 正体はただの狼ね……大きいだけの動物よ」
「へ……?」
紙の束をひらひらとさせながらそう口にし……メルが顔を上げると、その紙束を手渡す。
そこには色々と書かれていたが、どうやら日誌の様だ。
その日誌には確かにライノが言った通りの事が書かれていた。
「じゃ、じゃぁ……やっぱりあの人達が!!」
メルは立ち上がり屋敷の方へと向くが、先程の光景を思い出し立ち止まる。
もうすでに屋敷は燃えてしまい、崩れてしまった。
戻ってもどうする事は出来ないだろう、ましてや既に相手は逃げ出しているかもしれないのだから……。
「メル、一旦街に戻ろう……起きてはいるけどさっきまで気絶してたんだ。しっかり身体を休めないと」
「あ…………うん……」
リアスの言葉に頷いたメルは仲間達の元へと振り返り、ある事に気が付く……。
「あれ? リアスその武器は? それにシュレムも……盾が……」
メルの問いに二人はそれぞれ違った笑みを浮かべる。
「オレの盾はいかれちまったんだ……」
「それにこの剣はこっちに来る時に見つけてな」
そう伝えられ、メルは「そうなんだ」と答えるが、気になったことが一つあった。
他の者達には見えないだろう、だが森族であるメルにはしっかりと見えていた。
炎の精霊であるフラニスがそこに集まっているのだ。
魔法の道具でも精霊が集まって来る事はある、何ら珍しい事ではない。
しかし、この寒い地方で大勢のフラニスが集まっていることが不思議でならないメルは――。
「ん~?」
首を傾げつつ、今度は仲間達と共に街へと向かうのだった。




