246話 炎と水
リアス達はようやくメルを見つけることができた。
しかし、彼女は拘束されており、何かをされた様だ。
怪しい男は彼女の魔力を使えばアーティファクトが作れると口にし、それを理解できないリアス達を罵った。
当然仲間を傷つけられたリアス達は怒り。
そして、戦いが始まった。
焔は以前よりもずっとおとなしい物だった。
それを見て安堵しつつリアスは男へと向かってその剣を振り抜いた。
「何!?」
しかし、男は驚きつつもリアスの刃を躱しその短剣を突き立てようとする。
リアスはそれを避け、再び刃を振り下ろす……。
「馬鹿な!? 何故急に早く……」
先程は避けれた筈だった。
しかし、今度の一撃は先程よりもずっと早く男は避ける事が出来なかったのだ。
「馬鹿はお前だよ……一撃目は敢えて外した……」
短剣を握るその腕に向け、振り下ろされた剣は見事腕を切り落とした。
そして、剣にまとう焔は同時にその切口を焼き……。
「――――っ!!」
男は痛みの余り大口を開きつつも声を出せずにもがく。
大きな隙をリアスが見逃すはずもなく、男を地へと倒すと、剣の切っ先を首へと突き立て……。
「メルは返してもらうぞ……」
リアスが男を押さえている間、ライノの手によりメルは助けられていた。
しかし……。
「リアスちゃん! メルちゃんが!!」
「どうした!?」
リアスは目を男から逸らさずにライノへ向け声をかける。
すると……。
「メルちゃんの様子がおかしいの!!」
「…………なんだって!?」
彼の声からただ事ではないと感じたのだろうリアスは振り返る。
そこには虚ろな瞳の少女が居り……。
「メ、メル?」
彼女はゆらゆらと歩きながらアクアリムを鞘から引き抜いた。
青みがかった美しい刃からは水があふれ……リアスは思わずその場から離れ、メルの元へと走る。
「どうした? メル!! おい!?」
リアスの声を聞き、瞳を彼の元へと向けた少女はあのメルとは思えない程に無表情だった。
そして、その顔をすぐに起き上がろうとしているもう一人の男の方へと向け……。
「…………」
刃を振り下ろす。
すると剣から放たれたのは水の刃……それは男の残っていた腕を切り落とし……。
男は顔を歪め、その場でもがき苦しんだ。
だというのにメルはその表情を一切変える事無く……やはりゆらゆらとどこか心あらずと言った風に男へと近づく……。
「メル! まて、何をする気だ!?」
リアスは相手を殺すつもりなどは無かった……ただ、あの短剣がメルの魔力を抜き出した道具なのだろうと感づき万が一のことを考え腕を切り落としたのだ。
しかし、今のメルは違う……意識があるとは思えないのだ。
ただ、唯一分かるのは……。
「メル!!」
リアスやライノの二人には敵意を向けていない。
いや、無関心と言った方が良いのかもしれない……リアスは彼女のその態度が信じられず、疑問を浮かべつつもこのままでは殺してしまうだろうと彼女を止める。
「目を覚ませ!! メル!!」
何度も名前を呼ばれ、少女はゆっくりと顔を少年へと向ける。
そして……。
「……リ……ア……ス……?」
まるで何かを思い出すかのようにゆっくりと彼の名前を呼ぶと――。
「ぁ……ぅ!?」
突然頭を抱え、その場に倒れそうになる。
リアスは慌てて彼女を抱きとめ、なんとか事なきを得るが……メルの身体は驚くほど冷たく……まるで死人の様にも思えた。
「……っ!!」
だが、息はしてはいた。
命には別状はないのだろうか? と心配しながらもリアスは彼女を丁寧に床へと降ろすと……。
「メルの魔力はどうやって戻す!? 答えろ!!」
男に向け叫ぶ、しかし――。
「リアスちゃん……その人……」
「………………」
しかし、男は何も答えようとしないどころか動こうともしない。
いや、すでに動けないのだろう……顔を歪め、彼は命を失っていた。
「……死んでる、のか?」
近づき確かめるも男は息をしていない。
痛みの余り、命を失ってしまったのだろうか? そう思いつつもリアスはメルの魔力を戻す手段が失われた事にがっくりと項垂れる。
「時間をかけて魔力が回復するのを待つしかないわね」
「そう、だな……」
ライノにそう答えるとほぼ同時だろう、外からどたどたとした足音が聞こえたのは……。
彼女が来た、リアスは何の迷いもなくそう感じ……扉へと目を向ける、そして部屋に入って来た少女に向け……。
「メルは、無事だ……なんとかな」
そう伝えるのだが、少女は横たわるメルを目にするなり、リアスへと掴みかかる。
「無事!? 何処がだよ!! 倒れてるじゃないか!!」
「どうやら魔力を無理やり抜かれたみたいね、何も影響がないと良いのだけど……」
「魔力をだって!?」
訝しげな顔を浮かべたシュレムの手から逃れたリアスはメルの元へと向かい、彼女を背負おうと動かす。
「とにかく今は早く帰って暖かい場所に寝かせてあげよう、一応落ちているナイフを回収してもらえるか?」
「……わ、分かったよ」
シュレムは頷き、答えるがその瞳には死体が映り……。
「おい、あれ……」
「…………俺がやった、殺すつもりはなかったけど、こんな研究させる訳にはいかない、街に着いたらすぐに此処を取り壊す依頼を出そう」
「でも、確かもう一人いたでしょう? その人はどうするの?」
リアスの言葉にライノはそう疑問を投げかけるが、彼は……。
「どうにかして捕まえたい所だけど、メルを抱えてる状態じゃ駄目だ……まずはメルが先決だ」
そう口にするのだった。




