242話 雪国の屋敷
メルが居たという酒場でメルが向かったという場所へと急ぐリアス達。
彼らは途中で彼女に出会う事を願ったがそれは敵わなかった。
一方メルは拘束され……何かの実験のような事をされていた……。
そして、彼女は魔力を抜かれるような感覚に陥り……死を感じるのだった。
だが、幾ら魔力を抜かれても死ぬことはなくその苦しみを味わうのだった。
「な、なぁ……これってどういうことだよ!!」
剣を目にしたシュレムはリアスにつかみかかる。
しかし、リアスはそれを制する事は無く……。
「ここでメルに何かがあった……だけど、血の跡も匂いもしないって事は争ってないのは分かる……」
「後ろから一気にって感じかしら? だとするとあの屋敷が怪しいわね」
「ああ、そうだな……行くぞ」
リアスはそう言いながらもメルの剣を手に取り、立ち上がると屋敷へと歩き始める。
「お、おい!?」
いつもなら冷静に慎重にと口にするはずの彼であったが、突然の行動に慌ててシュレム達は追いかけると……。
リアスは既に扉へと手をかけ、舌打ちをした。
「鍵がかかってる」
「そりゃ、こんな所にあるのよ? かかっててもおかしくは……」
ライノはそう言うがリアスはフードの中から道具を取り出すと鍵穴へと差し込み……。
「な、何やってるんだ!? お前らしくもないぞ!!」
「嫌な予感がするんだ!!」
止めるシュレムの腕を振り払い再び鍵開けに挑戦するとやがてカチャリと言う音が聞こえ、彼は扉を開ける。
中を覗き見ると何ら変わったことの無い屋敷のようにも見える。
しかし、掃除が行き届いていないのだろう、誇りまみれの甲冑、泥だらけの床……。
まるで廃屋の様な物にも見えた。
「使われてないのかしら?」
ライノがほっとしつつそう判断したのだが、リアスはすぐに首を横に振った。
その理由は……。
「靴の跡がある、それもつい最近行き来しているはずだ」
「なんでわかるんだよ!」
シュレムの質問にリアスは外を指差し……。
「入口の所だけ雪が汚れていた……つまり、此処から出入りしていた誰かが居る……メルの足跡は無かったがアクアリムは雪に埋まってた……メルがここに来てからその後に雪が降ってるって事だ。だが、入口には足跡がある」
リアスの言う通り、入口の雪は確かに汚れてはいる。
しかし、その上には雪除けがあり……。
「残ってるだけじゃないか?」
「なら何で……」
シュレムの疑問に答えるようにリアスは足跡へと触れ……。
「足跡は水っぽいんだ? この地域なら時間が経ってるなら凍っていてもおかしくない、こいつはつい最近ここを出入りしたんだ」
そう口にすると彼は立ち上がり……。
「もしかしたら、此処にメルは攫われたのかもしれない」
ランタンに火をくべると足跡を追いかけ始める。
「もしかしたら、管理してる人なのかもしれないわよ?」
「…………」
「いや、俺だってここにメルが居るとは思うぜ、だけどお前ならいつも落ち着けって言うだろ!?」
「…………」
歩く中、仲間達にそう言われ確かにそうだとリアスは感じていた。
しかし、それよりも……。
「分ってる、冷静じゃない……だけどな、リリア居なくなった時と同じ……いやな予感と胸騒ぎがするんだよ……」
彼は悲しそうにそう呟き……シュレムとライノは言葉を失い、彼の後をついて行く……。
リリアは彼が子供の時に急に消え、次に姿を見せた時には彼らの命を狙い……その結果メルは大きな怪我を負った。
本人の意思ではなかったとはいえ、もっと早く気が付いてあげれれば……そんな事をせずに済んだかもしれない。
リアスはそう考えるようになっていたのだ。
「メル……」
だからこそ、今度こそは助けようと彼は足跡を追う……運良く誰とも遭遇はしておらず屋敷の中を順調に進み、足跡は階段を下って行っているようだ。
「地下に続いてるのか?」
「みたいね……それにしても変な仕掛けが無くて良かったわ……」
だが……。
「行こうぜ!」
シュレムがそう呟いたその時――。
「っ!! 誰か昇って来るぞ!!」
リアスはわずかに聞こえる足音を聞き逃さずにシュレムの腕を掴むと引き寄せる。
シュレムは思わず倒れそうになるものの何とか体制を整えたのだが……。
「誰だ!!」
階段を上って来てる者にはばれてしまい、その足音は速まっていく……。
「クソ……!!」
リアスは剣を構える。
(魔力は……これは戻っているのか? 分からない、だけどこんな屋敷簡単に燃えてしまうはずだ……安易に剣の力は頼れない!)
そんなリアスの考えを知ってか知らずか、彼の目の前にはほどよく筋肉が付いた腕が伸び、その行動を遮られた。
「シュレム……?」
「馬鹿なオレだって分かる、もしメルが居るならこの家燃やす訳にはいかないだろ? オレに任せておけってこれでもお袋仕込みの体術は使えるぞ!!」
彼女はそう言い、立ち上がるとほぼ同時に声の主は姿を現した。
「子供、それに……なんだ天族の男か……勝手に家に入って来て良いと思っているのか?」
「あら、一応ノックしたわよ?」
ライノはそう答えるが大柄の男は眉をピクリと動かし……。
「カギは閉めておいたはずだ……何の様で来た? お前達は王国の者なのか?」
「王国……? 何の事だ!! それよりも……」
「オレの嫁……メルを知らないか?」
嘗ての事があるからだろう、シュレムはすぐに飛び掛からずに大男へと尋ねる。
すると、首を傾げた男は……。
「メル? メルとは……ん?」
疑問を感じていた男はふとリアスの腰にある一本の剣へと目を向け……その表情を険しい物へと変える。
「その剣はあのガキの……残念だが、相棒がご執心なんだ。まだ返してやる訳にはいかん!」
そう答え、拳を構えるのだった。




