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私の夢は冒険者だったのにっ!!  作者: ウニア・キサラギ
11章 雪国の大陸フロム
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239話 気を失う少年……

 魔物との戦いの中、リアスはその大きな拳を受けてしまう。

 壁へと叩きつけられる間際、彼はメルの事を思い出し――。

 その剣の力を使い、見事魔物を倒すのだった。

 リアスを心配する二人の仲間……そんな中、彼は昔の事を夢の中で体験していた。

 それはエルフの使者と呼ばれたメルの母親たちが去った後の話だ……。


「精霊? 使者様は精霊を助けたと言っていたのか?」

「ああ、だが……確かにあの雨の後、草木や土、水、風と……変わってるような気がする」


 街に住む者達の言葉は確かに聞こえていた。

 しかし、リアスはまだその瞳でなにかを見る事は出来ず……耳とその身体だけで感じるしかなかったのだ。

 そんな時……ふと思い出した。

 使者が雨の魔法を唱える前……そう一度も聞いた事もない魔法を唱えた後に起きた現象を……。


「あたたかい、かぜがふいたんだよ! きっと、きっと! せいれいがししゃさまにたすけてっていってたんだ!」


 何故そんな事を言ったのだろうか?

 詳しくは覚えていない、だが……一つだけ確かだとしたら少年はその時感じた暖かい風と言うのは優しく、そして……誰かを助けたい、そんな風に思っているかのように感じたからだ。

 更には少年はそれに包まれることでまるで心まで温かくなるような……安心できるような風だった。

 きっと精霊達は使者……いや、ユーリの事を信じていたのだろう……彼女ならどうにかしてくれると……。

 子供心にそう思ったのかはやはり分からないが……。

 幼き彼の言葉に頷く街の者は多かった。


「そうだな、リアス……お前の言う通りだ、精霊があの人に助けてと言ったんだよ」

「本当か!? 確かにあんなに暖かい風は久しぶりだった……」

「そう言えば精霊を見てその名を呼んでいた……森族(フォーレ)じゃなくてもエルフの使者なら月夜の花ならあり得るかもしれない!」


 助かったのだ……どんな理由があれ、彼らはこの地に再び生きる事が出来る。

 その事だけでもありがたかった……しかし、自然まで息を吹き返した事を確信し……ユーリの行動とリアスの発言によりタリムには一つ新たな約束が生まれた。

 それは……。


「なら、自然……いや、精霊に感謝せねばなるまい……ワシらには目に見えん……だが、精霊が居なければワシらは生きられんと言うのは本当なのかもしれないな」

「街長……」


 タリムにも森族(フォーレ)は居る……だから、その事は何度も訴えられてきた事だ。

 しかし、皮肉な事に目に見えない精霊を信じる者は少なかった。

 当然だ……普通精霊を目にすることが出来るのは森族(フォーレ)だけなのだから……。


森族(フォーレ)の者達には何をいまさらと思われるだろう……だが、今度はきっと……この街いや、村は以前よりも自然豊かな場所にしよう……」


 それから程なくして、タリムと言う街には精霊を信仰するという人が多くなる。

 リアスの師である叔母もそうだった……。

 彼は自らの病気を治してくれたユーリ達や叔母の影響もあり、精霊に悪影響があるかもしれないと魔法を学ぶことをしない者が多くなった。

 そして、ある時、その叔母に言われたのだ……。


『確かにこの村では精霊を信仰している……それは間違いじゃない。だけどそれで良いとも言えない。リアス、アンタはこの村が街になるのを見る人間だ……だからお前たち子供がちゃんとしないといけない……何時か時が来たら世界を見て来るようにしなさい』


……そして、時は過ぎ……彼の旅は始まった。








「っ!!」


 リアスは瞼を開けると其処には氷の天井があった。

 彼は自身が倒れていた事に気が付くと冷たい地面からその身を起き上がらせる。


「起きたかリアス!」

「心配したのよ? 恐らく魔力切れね」


 そう言ってライノは炎の剣をリアスへと手渡して来た。

 リアスはそれを受け取り……皮肉気に笑うと……。


「これじゃメルに注意出来ないな」


 と呟く、二人の仲間は瞬きを何回かすると共に笑い出した。

 それを目にしたリアスは何か文句の一つでも言ってやろうと思ったのだが、自身で言ったメルに注意が出来ないという言葉を思い出し、彼もまた笑い声を上げた。

 ひとしきり笑った所でリアスは立ち上がると寒さを感じ防寒具を身に着ける。


「大丈夫なのか?」

「ああ、まだ変な感じはするけど問題はない……行こう」


 恐らく魔力がまだ戻っていないからだろうとは分かっていた。

 しかし、エルフから受け取った武器もどうやらそのお陰で効果が切れている様だ。


「今ならこれも持っていける」

「それはそうだけど、無理をしたら……」


 心配するライノに対しリアスはゆっくりと首を振る。


「俺はメルと違って魔法は使えない、この武器を使う時の魔力さえ気を付ければ大丈夫だ」


 そして、そう答えるとしっかりとした足取りで歩き始め、ライノは溜息をつきながら……。


「似て来てるわね」


 不満そうに呟き、それが少し耳に入ったのだろう……。


「どうした? ライノの旦那」


 シュレムは首を傾げる。

 しかし、もうすでに身支度を整えている彼女を見てライノは一つ溜息をつくと……。


「無理はしない事、良いわね?」

「「ああ」」


 一つだけ、忠告をし二人はそれに頷いた。

 三人は洞窟を抜けるために再び歩き始める中、リアスはふと夢の事を思い出す。

 何故今頃になってあの夢を見たのか? 剣を受け取ったことがきっかけなのだろうか? それは分からない。

 だが、一つだけ確かな事があった。


 それは…………。








(そうだ、俺はあの時から精霊は大切な人達だと気が付いていた……この旅を必ず成功させなきゃならないんだ。だけど、その前にメルを探さないと……どこで迷子になってしまうか分からないよな)


 そう一人考えると小さく笑い。


「おい、リアス何を笑ってるんだ?」


 シュレムに突っ込まれてしまった彼は「いや……」と一言発した後に……。


「早くしないとメルが迷子になるんじゃないかってな」

「……メルには精霊が付いてるからな! きっと大丈夫だ!」


 胸を張って答える彼女の姉同然の女性の言葉に頷きつつ、彼は考える。

 それでも早く迎えに行かなくては……と……。

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