237話 ナウラメギル
彼は声の主と出会う。
それは思いもよらない人物……いや、精霊だった。
エルフ……富と幸福を与えると言われていた精霊はリアスに炎の精霊の力を宿す剣ナウラメギルを託すのだった。
「なぁ、その剣炎の剣なんだよな!!」
笑みを浮かべそう尋ねるシュレムにリアスは「ああ」とだけ答えた。
「リアスちゃん?」
そんな彼の様子をおかしいと感じたのだろうか?
ライノは彼の名を呼び、彼の体に異常がないか心配する。
しかし、リアスには怪我も無く……。
「どうかしたのかしら……」
「いや、何でもない」
そう答えるもののリアスの中には疑問が残っていた。
それは何故エルフが態々魔族に力を授けるのか? と言う事だった。
(エルフと会うことが出来れば幸せを得られる……そんな噂があるが、おかしい……創造主と言っても良いエルフがなんで人一人にそんなことをする?)
彼はそう頭の中で呟き思考する……。
まず、最初にエルフに会ったことがある人物が自分以外に居るか? と言う点だ。
噂がある以上、誰かしらあった事はあるのだろう……特別な事ではない。
次に富を与えられたという者はが居たとして、何故エルフがそうしたのかだ。
自分に置き換えていくとただでそんな事をする必要が無い、何かしらエルフ側にも利益が無ければ意味がない。
つまり、幸福を得られたものはエルフにとっても利益があったという事だろう。
(つまり、俺は……森族の願いを聞き入れ、それを成そうとしてるから力をくれたって言う訳か? でも、メルやエスイルの様ならまだしも途中で裏切る可能性だってある……)
勿論、彼自身にその気はない。
しかし、現に首飾りを持っているメル、そして精霊を生み出す力を持つエスイルは傍には居ない。
生きているかも分からない状況であり、リアス達もまたここから抜け出せるかも分からないのだ。
ましてや、再会できるかも分からない……出来たとしても目的を果たせるかは別なのだ。
そんな人間に力を授けてエルフには何の利益があるのだろうか?
(いや、今は考えても仕方がない……とにかくメル達の無事を確認するためにも俺達は此処で足止めをされる訳にはいかないんだ)
彼は此処で迷っていても仕方がないと言うように頭を振り、そう考えなおすと……。
「こんな洞窟さっさと抜けよう」
仲間達へとそう告げ、ナウラメギルと呼ばれた剣を背負うための紐を握り直し、歩き始めた。
「お、おい!? 待てって!!」
「本当にどうしたの? リアスちゃん!」
先を急ぐように去って行くリアスを慌てて追う二人は普段の彼の様子とはやはり違うと思いつつも、逸れない様に急ぐ……。
「それで、あの魔物は! どうにか出来るのかよ……!?」
「分からない……」
「分からないって!?」
リアスの返事にシュレムは肩を掴み振り返らせる。
「どうにかなるんじゃないのかよ!?」
「確かに、目的通りの物はあった……恐らくこの剣が影響してあの熱さを作ってたんだろう……」
リアスがそう口にするとシュレムとライノは首を傾げ……眉を寄せる。
「どういうことかしら?」
「そこの氷だ……」
リアスはライノの質問にそう答えると背負っていたナウラメギルへと手を伸ばし鞘に入れたまま氷の近くへと歩み寄るとそのままとんっとつついて見た。
すると……。
「おいおい、溶けたぞ!?」
「さっきも目立たないような小さな氷が解けていた……恐らくこの剣が原因だ」
「……その剣どうにかしてその力を抑え込めないかしら?」
ライノの言葉にリアスは剣をしっかりと握り表情をこわばらせる……しかし、すぐに首を横に振った。
「駄目だ、どうすれば良いのかが分からない……」
「だとしたら参ったわね……」
困り果てる二人に対しシュレムはぽかんとしており……。
「なんでだ?」
「氷が解けるって事は雪もそうだ……この剣は洞窟に置いて行くしかないかもしれないな」
折角エルフより授かった力。
しかし、それも抑えられなければこの大陸では足枷にもなりかねない……その事はリアスは十分理解しており、そう仲間に伝えるのだった。
「何か勿体無いな……」
シュレムが剣を見つめながらそう呟くとリアスは再び剣を背負う。
そんな彼の行動に首を傾げたシュレムは……。
「そういえば、熱くはないのか?」
「ん? ああ……そうだな、そう言われると……熱さは感じない」
「不思議ね? アタシ達も近くに居るのに……確かに暑いとは思わないわ」
しかし、剣によって体温は保たれているのだろう、寒さも感じない事に一行は感謝しつつ……。
「行こう」
再び歩き始める……やがて分かれ道へと辿り着き、先ほどは向かわなかった上へと向かう道を歩き始めるとすぐにその雄たけびは聞こえ始めた。
警戒し坂を上っていくと再び分かれている大きな道へと出る。
リアス達は方角を調べ先に進むように道を選ぶと後ろから大きな地響きが鳴り……。
身構え振り返ると其処には……。
「出やがったな……っ!!」
あの魔物が居り、シュレムは魔物を睨み拳を握る。
「この剣を持ってれば近づかないって訳ではないのか……」
「そう、みたいね?」
避けれない戦いにリアスは舌打ちをし、ライノは笑みをこわばらせる。
『ヴォォォォォォォ!!』
魔物は何度目かになる咆哮を上げ、その丸太よりも太い腕をリアス達に向けるのだった。




