235話 炎の魔道具
人の痕跡がある事、そして道があった事。
リアスはそれに気が付き先に進もうと提案する。
すると、段々と温かくなってくるではないか……。
不思議に思いながらも彼らは上に進む道、そしてそのまま進む道の分かれ道へと辿り着いた。
リアスはそのまま進もうと提案し、シュレムを何とか納得させると先へと歩き出す。
その先にあったのはまるで封印されているような剣だった。
「マジックアイテムか……?」
そう言ってシュレムは暖かいというより、熱いと言った方が良い広場の中でそれを見つめる。
「恐らく、な……だけどなんだこれは?」
「この部屋だけすごい熱ね、恐らくあの魔法陣で本来の力を押さえてるんじゃないかしら?」
ライノもまたその武器を見つめつつ、そう口にした。
彼の言っている事は恐らく合っているだろう……そう思ったリアスだったが……。
「メルが居れば魔法陣をすぐに調べてくれるはずなのにな……」
そう言いつつ下にある魔法陣へと視線を写した少年はしゃがみ込み、少しでも何か解読できないかと考える。
それを見て少女は溜息をつき……。
「こんなの足を踏み入れて見ればすぐに分かるだろ!!」
「馬鹿!! シュレム不用意に踏み込むな!!」
足を動かし魔法陣へと足を踏み入れんとするシュレムを止めるが、間に合わずシュレムの足は魔法陣を踏んでしまう。
すると……。
「――っ!? あ、あづぅぅ!?」
彼女は悲鳴を上げ、慌てて脚を上げる。
すると、止めに入り彼女を後ろへと引っ張ったリアスは思いがけない彼女の行動により体勢を崩し……。
「リアスちゃん!?」
魔法陣の外に出たシュレムとは真逆……つまりその中へと身体を投げ入れる結果となった。
彼が受け身を取った所でシュレムはようやくその事に気が付き。
「リアス! 早くこっちに来い!!」
自身のしでかしたことにその顔を青くし、叫ぶ……。
だが、リアスはその場から動こうとせず。
苦痛にすら顔に浮かべてはいなかった。
最早、その余裕すらない位の一瞬に彼はショックを受け死んでしまったのか?
焦る二人だったが……。
「熱く、無いぞ……?」
リアスは呆然としつつそう口にした。
「は?」
「確かにさっきまでと同じでこの広場が暑いとは感じる……でも、足元とかは全然平気だ」
リアスはそう言うとシュレムの方へと目を向ける。
彼女の様子からして先ほど熱いと叫び慌てて脚を引っ込めたのは嘘ではないだろう、そう考えた彼は今度はゆっくりと剣の方へと視線を移し歩み寄っていく……。
すると……。
『人の子よ……、貴方は何故、森の子の願いを聞き入れた?』
その部屋の中に女性の声が響く……。
三人はその声を聞き、見渡すが……その姿を捕らえる事は出来ない。
疑問に思いつつも、リアスは再び剣の方へと目を向け、一歩また一歩と近づく……。
あの魔物をどうにかするためにも目の前の武器が必要だ。
そう思ったからだ……だが……。
『問いに……答えなさい』
再び声が聞こえ、同時に剣からは火傷するどころか全身が焼けてしまうような熱がリアスを襲う。
「ぐぅ!? …………っ!?」
彼はその場で思わず顔の前に両腕を交差させ、自身を守るようにした。
しかし、それで身を守れるはずもなく……リアスはその場に崩れるように膝をつく……。
「「リアス!!」」
仲間の声が聞こえた。
しかし、彼は立ち上がろうとしてもそれは叶わなかった。
そう、熱さだけではなく彼はまるで地へと縫い付けられたようにその場から動けなくなったのだ。
「なん……だ……?」
熱と痛み、それに耐えながらも疑問を口にする少年は目の前にある剣を睨む。
あの剣がこの熱を……今自分に起きている異変を生み出しているのだろうか?
疑問を浮かべるリアスだったが……。
『問いへの回答は……ないのですか?』
再び女性の声がその場に響き渡る。
「……問…………い?」
『人の子よもう一度問いましょう、 魔族である……貴方が……何故、森の子の願いを聞き入れたのですか?』
そこでリアスはようやく、先程の問いが自分への物だったという事に気が付いた。
それは……冒険者街と言われるリラーグを目指し、一人旅をしていた時のことだ……。
リアスは恩人が住む街、リラーグを目指していた。
礼を言おうという事は特には考えてはいなかったが、出来れば会って話したい。
そう考えていたのだ……。
何故、礼を言おうと考えなかったのか……それは幼い頃に出会ったものの彼女達の顔を知らないのだ。
当時の事を思い出すと目が見え無かったため、優しそうな声を持つ女性が故郷を救い、精霊を助けた……それだけは辛うじて覚えていた。
だが、それだけでは分からない、ましてや精霊を助けるなどと言う事が本当に出来るのだろうか? もし、村の人々が言っているようにエルフの使者ならば現世に居るとも考えづらく……人間だとしたら、大陸を救った英雄だ。
忙しいに決まっている、彼女達の仕事を邪魔する訳にはいかない。
彼はそう思ったからこそ、出会えたら奇跡と思い、その時に礼を言おう……そう考えていたのだ。
そんな旅の途中で出会ったのは森族の男性だ。
彼が行き倒れていたところをリアスが見つけ、偶々助けることが出来たのだ。
すると、彼は目的地が一緒だと言いリアスの旅に同行を申し出た。
リアスは彼に色々と質問をされ、自分がどういう訳で旅をしているかを説明した。
「それでリラーグをねぇ……で! その月夜の花ってのが君を助けたのかい?」
彼は気さくな人だった……。
旅の道中、初めてできた仲間……彼と話しているとリアスは旅が楽しく感じたのだ。
師匠の言っていた通りだ……旅先で仲間を見つけろってこういう意味だったのか……。
「ああ、実際にはその仲間の薬師様が助けてくれたんだよ」
自身に技をすべて教えてくれた師の言葉を思い出しながら、彼と話すと何とも言えない感情が広がった。
だが……彼は彼で問題を抱えていたのだ。
まず、何故行き倒れていたのか……それは簡単た理由だった。
彼は金を持ってなかったのだ……彼の村では交換が主流で野菜と肉、果物など自分が取って来た物、育てた物を相手に渡し、代わりに別の物を貰う。
身に着けている衣服や剣もそうらしい……。
今時珍しいな……そう思っていたリアスだったが、彼の世間知らずを放って置く事は出来ず。
旅をしている中、彼には生活に必要だというものを教えてきた。
代わりに、彼はリアスに何故旅をしているのか、世界はどうして保たれているのかを教えてくれたのだ。
精霊が世界に必要だとは月夜の花の会話から薄々感じてはいたリアスだったが、真実を知り驚き、また彼との旅は楽しい物となった……。
だが、そんな楽しい旅も三人の男に出会った事で……長くは続かなかった。
そう、リラーグでメル達と共に捕らえた老人と死んだ二人だ。
あの三人は何処で仕入れてきた情報かは分からなかったが、男性が持つ精霊の首飾りを狙って来た。
それさえあれば金になると……。
ただそれだけの為にリアスは旅の友を仲間を失い……。
「頼む……魔族……の君……に……こんな……」
友を背負いながら走るリアスだったが、背中から聞こえる声に彼はもう駄目だと理解した。
だからこそ、リアスはその場に森族の男性を寝かせ、荷を預かると……。
「任せて置け、絶対にお前がしようとしたことは……俺が代わりにしてやるから」
リアスの返答に笑みを浮かべた友は……。
「それを渡す者は……まだ、幼い……守って……」
その言葉は最後までは続かず……リアスは友の亡骸を簡素ながらも埋葬して、リラーグへと急いだ。
そして、同時に考えたのだ……この旅は危険になる。
だから、誰も巻き込んではいけないと……。
『問いの……答えは……』
何度目かになる声。
ようやく意識を現実へと戻したリアスは苦痛に耐えながら叫ぶ――。
「友の……仲間の……ヴァルの願いを叶えるのは当然だろうっ! アイツは必死だった、死ぬ間際でもだ……俺はその遺志を継いだんだ!!」
他に理由が無く……それだけを口にした少年の足元に光る魔法陣は輝きだす。
そして、紅蓮の炎が魔法陣を囲み……。
「リアス!! 待ってろ!!」
少年の耳には仲間の叫ぶ声が聞こえた……。




