234話 氷の洞窟の底
毛玉の魔物に追われるリアス達。
彼らは氷の足場を失い、底へと落ちていく……。
待っているのは死。
そう思われた時、ライノのお蔭でそれは免れるのだった。
洞窟の底へと落ちたリアス達。
絶体絶命かと思われていたが、ライノのお蔭で一命を取り留めた彼らは幸いにも焚火の跡もあり、その場で休むことにしたのだが……。
「でもよ、どうやって上がる?」
シュレムのその言葉で現実へと引き戻された。
上を見れば随分と高い所に落ちてきた穴が見える。
「旦那が抱えていくか?」
「流石に無理よ……シュレムちゃん並みの力があれば可能だけど、そこまでは無いもの」
提案にそう答えるのは本人だ。
しかし、リアスもそれは無理だという事は分かっていた。
だからこそ……目を付けていたことがあるのだ。
「あの奥……方角的には港の方へと戻るけど、道がある」
彼が指を向け、示した場所には確かに道が続いているように見える。
この空間がたまたまあった訳でないのなら、どこかに続いているはずだ。
そしてこの焚火の後から誰かがここには居たという事は分かっている。
リアスはそう考えたのだろう……二人の返事を待つが……。
「他に道はないわね、なら行ってみましょう」
「仕方がねぇ……」
ライノは笑みを浮かべ、シュレムは渋々というふうに口にする。
その返事を聞き立ち上がったリアスもまた頷き、答えた。
「二人共、もう大丈夫か? 早速向かってみたいんだ」
「ええ、何時までもここに居る訳にはいかないしね」
「勿論だって!」
今度の問いには二人共笑みを浮かべ答え、リアスは頼もしく感じつつ歩みを進める。
そして、その道に入った時……。
「なんか、温かいな? こんな雪国の洞窟なのに」
「ん? ……確かに」
その道に入る前も凍えるような寒さでは無かった。
しかし、防寒具を着ていることが原因だろうと考えていたのだが、道に入ってみるとどうやら別の原因がある様にも思えた。
不思議な事に段々と熱くなっていく道を進んでいくと二手に分かれており、リアス達はそこで立ち止まった。
「上に続く道があるわね」
恐らくはこのまま上へと出られるのだろう、そう考えたリアスではあったが……。
「一回このまま進もう」
「なんでだよ!?」
上の道に向かい歩き始めていたシュレムは振り返りつつ、リアスにそう声をかける。
勿論、リアス自身急いで上へと戻りメル達を探したい気持ちはあった。
しかし――。
「今戻ってもあの魔物に襲われたらどうする? シュレム、君が盾を持ってるならまだ良い、でも今は壊れてるだろ? それにあの魔物には決定打を与えられなかったんだ」
「そ、それはそうだけどよ! このまま行っても……」
シュレムは助けを求めるようにライノの方へと向くが、ライノは頬に手の平を当て考えるそぶりを見せると……。
「シュレムちゃん、一回リアスちゃんの言う通り行ってみない?」
「旦那までか!? メルが心配じゃないのかよ!?」
裏切られた、そう感じたのかどうかは分からないが、心底がっくりと来ているシュレム。
そんな彼女をなだめるように「違うわ」と口にしたライノは言葉を続ける。
「この暖かさが気になるのよ、もし、何か理由があって暖かい……ううん、熱いのならあの魔物と遭わなくて済むかもしれないし倒すきっかけになる何かがあるかもしれないわ、なら行ってみた方が良いと思うの」
「はぁ!?」
首を傾げるシュレムにリアスは上着を脱ぎつつ、言葉を付け足す。
「いや、だからここは暖かいというか、熱くないか? 何か理由があるはずだ……多分その理由があってあの魔物は降りてこなかった」
「はぁ? 何言ってんだお前」
そう言われることはある程度分かっていた事なのか、リアスは特に気にすることなく、言葉を続けた。
「この地域の魔物は炎の魔法に弱い、だけど弱点であるそれは同時に俺達にとっても危険要素になるからあまり使われないし、使わない」
「だからそれこそメルが居れば何とかなってるだろ? あんな魔物一体ぐらい燃やせるだろ! …………結局何が言いたいんだ?」
シュレムもやはり暑かったのだろう、そう口にしながら脱ぎはじめいつもの格好へと戻る。
するとライノも重そうな装備を外していきやはりいつも通りの服へと戻した。
「つまりだ、あいつが追って来なかったのは此処が熱いと知っていたからだ。そしてその原因がこの奥にあって……」
そこまで説明するとシュレムは表情を変え――。
「つまりそれを持っていけば面倒なあの魔物と戦わないで済むという事だな!」
「持ち運べるものならね……だからそれを確かめましょう?」
「ああ! なら早く行こうぜ!!」
シュレムはようやく納得し、意気込むと上へと向かう道から引き返しリアス達の示した道の方へと向かう、すると……。
『ヴォォォォォォォ!!』
上の方から魔物の咆哮が聞こえ……リアス達は互いに目を合わせると、ほっと息をつき……。
「やっぱり、今行かなくてよかったな……」
「お、おう……」
その言葉にシュレムは一つの汗を垂らしながら答えた。
運良く魔物のとの戦いを避けた彼らが向かう先はどんどんと熱くなってくる。
「あちぃ……」
進んだのはほんの少しの距離だ。
しかし、耐えがたい暑さにシュレムは服に手をかけ始め……。
「シュレムちゃん? 女の子なんだからそれ以上脱いだら駄目よ?」
「何でだ!?」
「いや、何でって……」
もう説明する必要はないだろ? そう思うリアスだったがライノに止められ口を閉ざす。
「もし脱ぎ始めたらおしおきよ?」
「……ぅぐ……なんで、皆駄目って言うんだよ……」
「前にも言われたのか……寧ろそれで何で脱ごうと思うのか疑問だって……」
呆れ気味に言われた声に答えたのは同じような呆れた声で……。
「熱いからだろ? お前は馬鹿なのか?」
そう言われたリアスはピクリと身体を震わすのだが、特に何も言わず耐えると……目の前の道が開けてきたのを目にし、指をさす。
「何か広場みたいなのがあるみたいだ」
そう言ってそこへと駆けて行くと……彼は思わず立ち止まる。
「なん……だ、これ?」
その理由は駆けつけた仲間達にもすぐに分かった。
「おいおいおい……」
「よく、この洞窟大丈夫だったわね……」
そこは……。
「あれが熱さの原因か? だけど、これは……熱すぎるぞ!?」
そこにあったのは一本の不思議な剣、柄が真ん中にあり、両端には刃が出来ている。
両端刃の剣……それは部屋の真ん中にあり、封印されているのだろうか? 魔法陣の中心にある台座に刺さっていた。




