232話 氷の洞窟
フロムの港町に流れ着いたリアス達。
彼らもまたメルとエスイルを探すため準備をし旅立つ。
初めての雪国で彼らは無事彼女達に合流できるのだろうか?
リアス達の目の前にあるのは氷の洞窟。
そこへと足を踏み入れた彼らは辺りを警戒しつつ進んでいく……。
「港町の奴らの情報ではここにはフロスティが出るらしい……」
「フロスティ? なんだ? 魔物だよな?」
シュレムの言葉に頷いたリアスとライノ。
「尻尾が可愛らしくて、本体は老人のような姿の魔物よ、血が好物でそれを得ると狂暴になり、身体能力もあがるって話ね」
「へぇ……つまりどういうことだ?」
話を聞きつつ頷いた少女はそう言うなり首を傾げて問う。
しかし、理解した訳ではないのか? そう言った突込みは無く……。
「もし遭遇したら、一滴の血を流すことなく倒すのがコツだってことだよ」
「……はぁ!? そんなの無理に決まってるだろ!!」
リアスの言葉にシュレムは思わず叫び声を上げる。
しかしそれも仕方のない事だろう……魔物相手に一滴の血を流さないで戦いを終わらせる。
「メルが居ればいいけど、オレ達じゃ!」
「いや、メルが居ても魔法すべてが万能と言う訳じゃない」
「誰一人怪我をしないなんて事がまず無理なのよ」
二人の返答に言葉を失ったシュレムはムスッとした態度で洞窟の中を歩く……。
そんな中、彼女はある物を見つけた。
それはもこもこの動物の様な白い生物。
「……ん?」
何故かシュレム達をじっと見ているソレは……彼女が移動をすると追って来ている様だった。
「どうした?」
リアスは彼女の視線が気になったのだろう、そう問いつつ同じ方へと目を向けた。
そして――。
「さっき言ってた魔物ってあれか?」
シュレムの言葉が発せられたその時……リアスの顔色は変わっていき……。
「まさか、本当に出会ったって訳か……」
舌打ちをし、ライノへと目を向ける。
「ライノ! フロスティだ! 逃げるぞ!!」
「え、ええ!」
仲間へと指示を出すと二人が駆け始めたのを確認してから彼も後を追う様に走り出す。
横目で魔物の尻尾らしきものを確認するが、どうやら追って来ている様だ。
リアスは嫌な汗を流しつつも、何時魔物が向かって来ても良い様に警戒をしようと……。
「ライノ! シュレム!! 他にも魔物が居るかもしれない! 気を張ってくれ!!」
仲間達に目を向けて伝えた。
「まて! リアス! アイツおかしいぞ!!」
すると、追って来ている魔物へと目を向けたシュレムの声が聞こえ、リアスは慌てて視線を戻す。
「…………え?」
魔物を見たリアスは間の抜けた声を出しそれを見つめる。
その魔物……いや、白くきれいな毛を持つ小さな動物は慌てるように壁を器用に降り、近くにあった小さな穴へと入り込んでいた。
「ど、どうやら、ただの動物だったみたいね」
ほっとするライノとシュレムだったが、一人リアスは考える。
確かに警戒していたフロスティではない……しかし、あの動物の慌て様が気になったのだ。
「二人共、早く進もう……」
胸騒ぎがする。
そう感じたリアスは二人へとそう告げると走る様に再び指示を出す。
しかし――。
「あのな、リアス……もう走らなくて良いだろ?」
「そうね、少し疲れてしまったし……フロスティに遭わない限りは体力を――」
「良いから急ぐんだ! 早く行こう!」
魔物に出くわす可能性はあるとしても、今は危険は無い……そう考える二人に対しリアスは急ぐことを伝える。
彼の様子をおかしい、そう思いつつも二人は言われた通り走り出そうとした時だった。
辺りに大きな音が鳴り響き……。
「な、なんだ!?」
シュレムは叫び辺りを見回し盾を構え……リアスは舌打ちをし……自分達が走って来た道を睨んだ。
そこから姿を見せたのは全身白い毛におおわれた大きな魔物。
初めて見るそれに三人は呆気に取られた。
「これがフロスティ……か?」
シュレムは二人に問い。
「そ、そんな訳ないわ、あれは老人の姿だもの」
フロスティを知るライノはすぐにそう答えた。
だが、同時にそれがなんであるかを答える事は出来なかった。
「なんなんだ……こいつは……」
毛皮越しでも筋肉質だと分かる身体を持つその魔物は……表情を人間の様に歪めると、まるで自身の力を示すように拳を壁へと叩きつける。
轟音と共に砕けた壁を満足そうに見る魔物は逃げる気配のない侵入者に狙いを定め近づき……。
「あ、あれはまずいぞ! 捕まるな!! 逃げるぞ!!」
リアスは吼え、仲間達と共に洞窟の中を再び駆け始める。
「なんなんだよ! おい!? あんなの聞いてないぞ!!」
「アタシだって聞いてないわ……あんなのが居るなら噂位あって良いはずじゃないの!?」
「二人共走りながら喋ると舌を噛むぞ!」
二人にそう忠告をしたリアスが後ろを確認すると魔物は彼らを追いかけてきており……予想通りのその結果にリアスは舌を討つと天井に生えているつらら目掛け針を投げる。
少しでも時間稼ぎになれば……そう思い落したつららは地面へと刺さるのだが、魔物はそれを気にせずに向かって来ており……。
「冗談じゃない……こんなのが居るのに情報すらないのか……」
そう呟くのだった。




