229話 少女を探して
見覚えのない部屋へと連れされたメル。
四肢は固定され、精霊を頼るもなぜか力が使えないという。
疑問に思いつつも、脱出をしようと考えるメルの元へと二人組の男が現れた……。
その内の一人細身の男がナイフを手に詠唱を唱える。
そして、メルの胸へとそれを突き立てられると彼女は魔力が抜かれるのを感じ、意識を失うのだった……。
一方、時は少し遡り……。
時は数日を遡り……。
リアスはゆっくりとその瞼を持ち上げる。
その身を起き上がらせて辺りを見てみると其処は全く知らない部屋だ。
暖炉には火が炊かれており、ぱちぱちという音と共にゆらゆらと炎は揺れている。
彼が周りを見渡すと其処には仲間であるライノ、シュレムの姿があった……。
もう一人、船の船員も居る。
だが……。
「メル?」
此処は何処だろうか? そんな疑問と共に彼の頭に浮かんできたのはそう……リラーグで出会ってからずっと一緒に旅をしてきた少女の顔……。
しかし、彼が名を呼ぶ少女はそこには居らず、更には……。
「エスイルも居ない、のか……?」
護衛対象の少年も居ない事に気が付きようやく彼はなにが起きたのかを思い出した。
「そうだ……船が襲われて……っ!?」
その事を思い出すとベッドから飛び出したリアスは慌てて傍にあった荷物へと手を伸ばす。
しかし、そこには彼の探す物はない。
当然だ、それは最後少女が身に着けていたのだから、だがその事を思い出すと大きく息を吐きほっとした少年は此処か何処であるかを調べるために窓の方へと向かう
そして、目に映った光景に彼は息を飲んだ。
そこは…………。
「フロム……地方!?」
雪国であるフロム地方……。
その事に気が付いた彼だったが、同時にその顔を青くした。
この場にメル達が居ない事に対してだ。
「まずい……こんな所に今の装備でいれば……」
凍えて死んでしまう……、彼はその可能性に気が付き慌てて扉へと向かう。
どうにかしなければ、メル達を探さなければと――! 彼が扉を開け放とうとした時、扉は勝手に開き思わず飛びのけると部屋の中へと一人の少女が足を踏み入れた。
短い耳、そして尻尾その姿を見たリアスは思わず――。
「メル!? お前何処に言ってたんだ!?」
「へ!? あ、あの!?」
肩を掴み、そう問うが……すぐにその少女が別人である事に気が付いた。
彼女自慢の夕日髪ではなく、瞳の色も翡翠色ではなかった……それに良く見ないまでもメルとは顔も違った。
「ご、ごめん……人違いだった」
「そうですか、それよりも気が付いたようで良かったです……」
少女は一瞬困った様な表情をしたが、すぐに笑みを浮かべ心底ほっとしたような表情を見せる。
何処かメルの様な笑みにリアスは戸惑うのだが、少女が知るはずもなく……。
「誰か、お探し何ですか?」
「ああ、君ぐらいの森族の女の子と幼い少年だ……一緒にいなかったのか?」
その問いに少女は首を横に振り、リアスは肩を落とした。
「あの……」
少女はおろおろとするが、リアスは溜息をつきメルの名を呼ぶ。
一緒にいないという事は何処か別の場所に流されたか、もしくは海の底にか……。
とにかく、彼には現状を知る術がない。
更には精霊に頼もうにもエスイルも居ないのでは聞く事すらできない。
もどかしさにギリリと歯で音を立てる程だった。
少女はそれを見て思わず一歩後ろへと下がり、リアスは慌てて手の平を彼女へと向けた。
「い、いや……ごめん、所でこの近くに村か街は無いか?」
そう言うと少女はこくこくと首を縦に振り、壁に掛けてあった大きな地図を指差した。
「此処はルルの港でこの近くに洞窟があります……それを抜ければ街が一つ……でも、皆さんの装備じゃ……」
その事は十分承知していたリアスは大きく頷く……彼女の言う通り、今の装備じゃ心もとない。
いや、死にに行くようなものだ。
だが、幸いライノは傍にいる。
金を稼ぐのは大変だが、薬を売る事は出来るだろう……彼はそう考えた。
「後、まともな装備を売ってる店を教えてくれるか?」
「は、はい!」
そして、少女に問い店の場所を教わるとシュレムとライノ……二人が目を覚ますのを待つ……。
どのぐらいの時間だったのだろうか? 恐らくはそんなに時間は経っていないはずだ。
しかし、少女の去った部屋でリアスは落ち着きなく歩き回る。
首飾りの事は確かに気がかりだ。
だが、それよりも彼をそんな気持ちへとさせたのは別の者だった。
「メルは大丈夫か? 初めての土地で……迷子になってるんじゃ? そもそもこの大陸に……」
そして、ぶつぶつと言った所ではっと表情を変える。
「全く、心配性が移ったみたいだな……」
リアスは引きつった笑みを浮かべた所、二人は起き上がり……。
「……ここは、どのなのかしら?」
「…………メル!? おい! リアス、メルは何処だ!!」
彼は二人へとこの状況を伝える為に口を開く……。
「ここはフロム地方……ルルの港だ。メル達は傍には居なかった……」
「そ、傍にいなかったってどういうことだ!?」
シュレムはリアスにつかみかからん勢いで起き上がるが、まだ体が本調子ではないのだろう、ぐらりとふらつき、その場に座り込む。
一方ライノは……。
「逸れたって事ね? エスイルちゃんも?」
「ああ、エスイルもだ……とにかく、二人を探さなきゃらない。体力が回復したら装備を買い足してすぐに別の街に向かおう」
見捨てるつもりはない、そう強調するかのように言われたその言葉には二人は勿論異論がないのだろう。
表情は違えど首はしっかりと縦に振られるのだった。




