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225話 巣への道は?

 酒場へと戻ってメルはブランシュに安堵される。

 どうやら迷子癖の事を心配されていた様だ。

 メルにもその癖が受け継がれていることが分かると当然ブランシュは任せられないと言う。

 メルは精霊の目の事を正直に話し、なんとか依頼を受けると……氷狼の行方を二人で探すのだった。

「なんでそこだって思うの?」


 メルが指を向けた場所を覗き込み、ブランシュは首を傾げ訊ねる。

 実際に口に出して次は此処と言った訳ではないが、メルの行動から見てそれが氷狼の出現場所だと悟ったのだろう。

 メルはブランシュの方へと目を向けつつ、自身に満ち溢れた表情を浮かべ、尻尾を振る。


「実はブランシュさんが言ってた順番で次の場所を考えたらここになるんです!」


 そう言いつつメルはブランシュが言った通りに順に指をさし始める。

 するとブランシュの表情はみるみるうちに変わっていき……。


「こ、これって……」

「はい、大体正反対、それも……どの場所も誤差はあるけど大体同じ距離を移動してます。だから……次はこの辺りのはず!!」


 その事に気が付いたメルは指をつぅーっと動かし……。


「そして、多分……線でつないだ中心が……巣」


 多分だけど、でも……今分かっている情報で他に場所は無い。

 間違いはないはず。

 でも……魔物がこんな風に現れるかな?

 縄張りがこの辺りなら被害はもっと出てるはず。


 メルは遭遇しない時があるという事に疑問を感じていた。

 だが、それに応えられるものが居ないのは彼女自身既に理解している事だ。

 真相を確かめるためには……。


「私、この巣らしき場所に行ってみます」

「行ってみるって………………どうやって!?」


 ブランシュは歯切れの悪い言葉を発し、それが迷子癖の所為だと察したメルはにっこりと微笑む。


「聞くんです!」


 確かにメルと共にこの景色を初めて見たであろうシルフとウンディーネには案内は出来ない。

 他の精霊達も同様だ。

 しかし、昔からここに住んでおり、今起きているその現象を恐れているものならどうだろうか?

 景色を知らずとも場所は分かるはずだ……。

 酷な事をしてしまう……メルはそう思いつつも他に方法は無く、その子にも決して悪い話ではない事から頼む事を決めたのだ。


『私は反対ですよ! メル!!』


 だが、服の中から飛び出した水の精霊は珍しく怒っている様で眉を吊り上げつつも不安そうな顔でメルに訴える。


『あの子に頼むつもりでしょうけど、あの子はメルを見捨てて逃げたんです! 私はいくら助けてもらった恩があるとはいえ信頼できません!!』

『うんうん! メルを見捨てて逃げるなんてひどいよ!』


 ウンディーネに賛同するシルフ。

 二人の様子にメルは苦笑いを浮かべつつ答える。


「でも、他に案内出来る人いるの? 人を連れて行くならある程度は戦える人じゃないと危ないよ……それに私一人なら最悪魔物から逃げる事は出来るはず」

『それは……』


 メルの口にしたことは最もな事なのだ。

 精霊は普段人や動物、魔物と関わることが少ない分、天敵は魔法や禁術を使い住処を奪う魔族(ヒューマ)ぐらいだった。

 しかし、魔物相手にはそこまで危機感は感じていなかったのだ。

 つまり、連れて行っても魔物の標的にはならない……氷狼は別として、だが……。


「いざとなったら皆を守らないといけないんだから」


 メルはそう口にし、窓に張り付いている不安そうな精霊へと目を向けた。

 そして、窓へと近づいたメルは振り返らずにその精霊へと笑みを向けたままブランシュへと告げる。


「すみません、少し窓開けますね」


 逃げてしまった事で精霊は気にしている。

 きっと外に出て話そうとしてもまた逃げるだろう……メルはそう考えたのだ。

 事実、窓へと手をかけた時、再び逃げようとしたのだから間違いはない。

 メルは少し空いている窓から彼女に向かって声をかけた。


「待って!! あの時の事なら怒ってないから!!」


 いや、怒る理由が無いのだ。

 ……助けてくれたウンディーネとシルフの方が精霊としては特別だった。

 メルはその事を知っている。

 本能で危険だと判断し、逃げた彼女は悪くない。

 精霊とは産まれた時からそうなのだ……そうでなければとっくの昔に数は減り、彼女達が保ってくれている世界は滅んでしまっていたはずだと……。


「だから、逃げないで……」

『…………』


 メルの声に恐る恐ると振り返ったグラネージュ。

 彼女の視線はメルから少し離れている。


『メルが話すと言っているのだから、私達に拒否する理由はないです』

『そうだね……』


 二人の精霊は怒っているのだろう、その声はメルが聞きなれていないものであり……。


「二人共、落ち着いて!?」


 メルがそう言うとシルフはメルの頭の上、ウンディーネは肩に乗り黙り込んでしまった。


「お願いグラネージュ……私を氷狼の元へと連れてってほしいの……街の人だけじゃない、貴方達を守る為にも」

『で、でも……』


 危険だその言葉が続くのは容易に予想できた。

 しかし、メルは首を振り……。


「このままじゃいずれその氷狼は此処にも来るよ? このフロムで安全な場所も無くなるかもしれない」

『……っ!? …………分かった』


 メルの言葉にはグラネージュも思っていたことがあるのだろう……力無く首を縦に一回振った。

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