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218話 酒場のお仕事

 いざという時は冒険者らしく護衛を頼まれたメル。

 しかし、メルは冒険者見習いだ。

 その事を伝えたかったが言う時間は無かった。

 そして、彼女の仕事は始まるのだった……。

「いらっしゃいませ!!」


 昼だというのにブランシュの店は賑わっていた。

 メルは慌ただしい店の中を走り回りながらもそれもそうかと考えていた。

 その理由は安い値段で提供されるあの美味しい料理だ。

 酒場は通常食事と酒、そして冒険者の宿泊、依頼の代金で成り立っている。

 勿論、冒険者を雇っている酒場に限りだが、依頼が酒場の中で多くの儲けを出しているのは間違いない。

 依頼主は酒場に酒場は自分の店の冒険者に……そして冒険者はその金で自分が属する酒場に寝泊まりし貢献する。

 その為、冒険者は依頼が多く入り、食事が美味く部屋も良い酒場へと行きたがる。

 当然、依頼主は冒険者が多い酒場を好む傾向があり、冒険者が多ければ安い依頼でも受け入れる所も多い。

 だからこそ、そのすべてが集まっている龍に抱かれる太陽はリラーグで人気が高いのだ。

 だが、酒場が賑わうのは勿論冒険者や依頼主だけが集まるからではない。


「お? 今日は新人が居るのか?」


 そう、街や村に住む者達や旅人などがその場に訪れるからこそ店は賑わうのだ。


「その子は特別だよ! 手を出したりしたら……痛いじゃ済まないからね!」

「なんだって!? またヤンチャな娘を雇ったのか! たまにはおとなしい子を頼むぜ!」


 店主の発言に大きな笑い声で答えた客。

 彼はお得意さんだろうか? そんな事を考えつつもメルは注文を取りに彼の座った机へと向かう。


「小さいのに大変だね、ここらじゃ見無い顔だけど……どうしてここに?」

「あ、えっと……」


 彼はにこにことしながらメルへ問い。

 メルはまさかそんな事を聞かれるとは思っておらず思わず狼狽してしまう。

 すると、彼はメルの腕輪を見て何かを察した様に……。


「ああ、さては此処で飲んで騒いで色々壊したんだな? それで弁償するために働かされてるんだろう?」

「そんなことは……してないです」


 すぐにそう答えたメルだが、その表情は引きつっていた。

 何故なら彼の勝ち誇った様な笑みがかつて本当にそう言ったことがあったのだと言っているかのようだったからだ。


 だとしたら、その人……自分の酒場とかでも怒られてるんじゃ? 下手したら冒険者辞めさせられてるよ……。


「その、ご注文は?」


 顔も名前も知らないその人物の事を気の毒に思いつつもメルは注文を尋ねる。

 さが、その様子を見て客は確信を得てしまったのだろうか、うんうんと頷きながら。


「そうだな、ちゃんと仕事しないと怒られてしまうな……では、豆のスープを頼む」

「はい!」


 メルは頷くとブランシュの方へと注文を通す。

 豆のスープはメル達がこちらに来て初めて食べた物とは違うスープだが、どうやらこの街では昔から食べられているものらしく、ショウガのスープ同様に人気だった。

 現に今いる客の殆どは必ず頼んでいるぐらいだ。


 どんな味なのだろう? メルは後で少し貰えたら良いなと考えつつも次々に仕事をこなしていく。

 メルは元々は家で手伝いぐらいはしていたのだから即戦力になり、お客たちは驚いていたが彼女にとっては当然の事だ。

 寧ろ、そう思ったら失礼ではあったが龍に抱かれる太陽よりも小さい酒場であったことから、人の数は驚くほどではなく物を運んだり注文を取ったりする時に狭さだけに気をつければいい。

 そんなメルの働きっぷりを見ていた二人の店員は感心したかのような声をもらしていた。


「どうしたんですか?」


 メルは見つめられていた事に気が付き振り向くとひとまずは仕事が一段落したことを確認し、二人の元へと近づいてみる。

 すると、二人はメルの手を片方ずつ取ると……。


「このまま、居ればいい」

「そうだね、ずっと居てくれると助かる」

「え、ええ!?」


 突然言われた事にメルは驚きの声を上げ、耳と尻尾をピンと立たせると、助けを求めるように視線を横へと向ける。


「リ、リア……あ……」


 そして、仲間の名を呼びかけた所でそこには彼が居ない事を思い出し、ゆっくりとっ尻尾から力を抜いた。


「どうしたの?」

「駄目?」


 様子が変わったメルを気遣うような声で二人は問い。

 メルはそれへと申し訳なさそうな顔で答えた。


「仲間を探さないと、それに家にも帰らないといけないですし……」


 リアス達を探すのは当然として、私はまだ冒険者見習い……。

 ちゃんと戻っていくまでが仕事だってユーリママも言ってたんだ。

 約束だってした……それだけじゃない。


「私にはやらない事があるから……それにやりたい事も、あるんです」


 やりたい事に関してはメル自身理解していなかった。

 だが、以前とは違い彼女の中には別の想いも生まれていたのだ。


 冒険者になりたい……ただの冒険者じゃなくてママ達の様な誰かを守る冒険者になりたい。

 でも、何時からだっけ? 本当に私がなりたいのは冒険者なのかな? なんだろう、何で……今まで一度も変わった事も無かった夢で思いがぐらつくんだろう……?


 メルは自身の考えに疑問を持ちつつも二人を心配させまいと笑みを見せた。

 二人は心配そうにメルに何かを告げようと口を動かすが……。


「ほら! 喋ってないで豆のスープで来たよ!! 二人もとっとと机片づけて!」


 ブランシュの声が響き渡り、メル達はハッとすると慌てて仕事へと戻るのだった。

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