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216話 ブランシュの準備

 リアス達の事は冒険者に頼んだ。

 そして、メルは依頼金を受け取る代わりに店の手伝いをしてほしいと言われる。

 彼女達の言う事では依頼に出すお金を防寒着にあてろという事だ。

 メルは早速行動に移すのだが……?

 翌日、エスイルに朝食を食べさせ終わったメルはブランシュに呼ばれ、ある部屋へと足を運ぶ。


「あの……昨日言っていた準備って何ですか?」


 メルはその部屋で棚の中から一つの布に包まれた何かを取り出すブランシュへと尋ねる。

 すると彼女は笑みを浮かべ振り返ると……。


「これの事だよ」


 それをメルへと手渡した。


「実は前にも手伝ってくれる子がいた予定だったんだけどね、どこかに行っちゃって諦めてたんだけど……間に合って良かったよ」


 そう言われメルは不思議に思いその布を取り払ってみる。

 すると、そこには……。


「ふ、服?」


 メルが呟くと満面の笑みと共に頷くブランシュ。

 彼女はどこか誇らしげに腕を組むと……。


「そう、服……頑丈で汚れても良い服だよ。大丈夫だとは思うけど大きさは合うか、着て見てくれる?」

「は、はい」


 準備とはこの事だったのか……メルはそう思いつつも頷くとブランシュは部屋の外へと向かう。


「なんか……家でもジェネッタさんがこういうの着て仕事してたなぁ……」


 母フィーナの姉でもあるその人の事を思い出し、渡された服をまじまじと見てみる。

 形は違うがそれは龍に抱かれる太陽で使われているものにどこか似ていた。

 動きやすそうではあるが防具を身に着けるにはどこか邪魔そうでもあるそれは妙に可愛らしく、メルの心を躍らせる。


「何かこの服についてるひらひら可愛い!」

「ケルムの話だとそのひらひらはフリルって言うそうだよ」

「そうなんですか!? たまにはいい案を……」


 着替えるだけだというのに服も脱がず鏡の前で一通りはしゃいだメルだったが、冷静さを取り戻したのかハッとすると髪飾りを外してから服を脱ぎ、それを身に着けていく。

 ブランシュはメルの身体に合うか気にしていた様だが……。


「ぴったりだよ、これ」


 元々着る予定だった人物とメルはそう大差ないのだろうか?

 鏡の前でくるりと一回転した後、メルはそう呟いた。

 するとまるで時間を見計らったかのようにブランシュが入って来て、メルの姿に満足そうに頷いた。


「大丈夫そうだね」

「はい! 丁度良いです」

「いつもの服と違って色々ついてるから防具を身に着けるには向かないけど、酒場の中で目立つし、それで仕事をしてくれる?」


 そうだったんだ……だから家の服もこんな感じなんだ……。

 もしかして、家のもケルムおじさんの提案なのかな?


 メルはなんで着替える必要があったのかを理解するともう一度鏡を見て、髪飾りを身に着けるとブランシュの方へと向き直り……。


「分りました!」


 元気よくそう答えた。






 酒場に出たメルは一通りのことをブランシュから聞いた。

 まずは水を出し、注文を取り、食事や飲み物を出されたら客へと出す。

 そして、食べ終わった食器を片付けると……。


「って所だけど大丈夫?」

「はい! 家でも手伝った事はありますから!」


 メルは龍に抱かれる太陽がある屋敷の娘だ。

 勿論、手伝ったことは数えきれない位でこの手の仕事には慣れてはいた。

 だが……。


「でも、人……少ないんですね」


 メルは自分以外に働く二人を見て、引きつった笑みを浮かべた。

 そこに居るのは若い女性二人、一人は赤い髪の少女、そして青い髪の少女……二人は互いに目を合わせると……。


「皆辞めていく」

「この前もお酒に酔った人に怒鳴られて逃げて行った」

「あはは……ははは……」


 酒場である以上、少なからず乱暴な客はいる。

 それは働く前に知っておくべき事なのだが、知っていてもビックリするぐらいだったのだろう……メルはそう思い、いきなり怒鳴られただろうその人に同情をしていた。


「ああ、因みにお客だからって無礼な人は追い出しても良いよ! 酒を出している以上、文句を言うなって言われるけどね」

「い、良いんですか?」


 暴れようと客は客……龍に抱かれる太陽では暴れた瞬間、酒場の冒険者が出てくるため頻度が少ないが、別の酒場では違う。

 メルが以前通りかかった酒場では扉を壊し、外へと投げ飛ばされてなお、酒場の中へと戻っていった人を見たことがあり、こっそりと様子を窺っていたら取っ組み合いをしていた。

 それを見てから、自分の家ではあそこまでした瞬間、酒場を任されているゼファーが怒るだろうなとメルは考えた事を思い出した。


「女が切り盛りしてるからね。結構多いのさ調子に乗って飲んで騒いで、暴れる連中はね。特に外から来たのだとそうだね……そういう時は痛い目を見て酒は楽しく飲むのが一番って覚えてもらうのが良い」


 そう言い切ったブランシュは笑みを浮かべ……。


「さ、じゃぁまずはお昼の客からだ! 酒を飲むのは少ないはずだけど、もしもの時はお願いね」

「え? あ、あの……」


 メルはお願いと言う言葉を聞き狼狽する。


 も、もしかして、私って……護衛も兼ねてる?

 ううん、そんな訳……。


 彼女がそう思い浮かべ、おろおろとしていると三人の指はメルの腕に向けられ……。


「「「だって冒険者でしょ?」」」


 と声をそろえられてしまうのだった。

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