215話 メルの依頼
母達の知り合い、ブランシュ。
彼女の酒場で暖かいスープを食べたメルはその日はゆっくりと休むことにした。
だが、仲間を探さない訳にはいかないと、自分を助けてくれた冒険者達にリアス達の捜索を頼む。
断られると思っていた彼女だったが、意外にも冒険者達は依頼を受けてくれるのだった。
快くメルの依頼を受けてくれた女性は微笑む。
すると……。
「そう言えば名前まだ言ってなかったね?」
「あ、は……はい! 私はメアルリース、メルって呼ばれてます」
メルは頭を下げながら彼女に告げる。
そんな少女の様子を見てデレデレとした男が近づいて来る。
女性の仲間らしい一人だ。
「僕はランバ、よろしくメルちゃん」
恐らくは二十台後半と言った所だろうか、どこか優し気なランバという男性はメルへ握手を求めてきた。
しかし、その手を遮る様に別の男性がランバの手を下げさせる。
「な、何をするんだ!」
「いや、依頼主さんに手を出さないか心配でな? ああ、メルちゃんだっけか? 俺はアルセルよろしくな!」
「え、ぁ……よ、よろしくお願いします?」
二人の様子を見つつ、何故ランバと言う人が止められたのか気になりつつもメルはそう口にした。
最後に女性がメルの視界に入り込み。
「アタイはミレーヌ、ブランシュさんの客人の願いでもあるんだ。安心して待ってなよ!」
彼女は歯をむき出しにし、どこか男らしい笑みを見せた。
「ありがとうございます!」
メルは礼を告げ、懐から財布を取り出す。
依頼が依頼だ、少ないものの前金を渡しておこうと思ったのだが、ミレーヌはそれを手で制すると首を振った。
それにメルが驚いていると……。
「依頼金はこの酒場の手伝いをしてくれないか? それにアンタ達も装備が必要だし、それでちゃんと防寒具買っておきな」
「あ……」
メルはその事をすっかり失念していた。
家の中では普段の服でも暖かいからだ……彼女の言っている事は最もだと考えたメルは頷くのだった。
「じゃぁ早速!」
「いや、今日は休んでおきな」
女性にそう言われてしまい、メルは部屋まで送り返されるのだった。
部屋へと戻るとベッドの上で横になっているエスイルは不安そうな顔をメルの方へと向ける。
そんな少年の元へと歩み寄ったメルは……。
「エスイル、身体の方は大丈夫?」
大丈夫な訳がない。
そう理解しつつもメルは訪ねてしまう……すると少年は頷き答えた。
メルを安心させるための嘘なのだろう、そんな健気なエスイルの頭を撫でた。
「暫くは此処で休もう? リアス達の事は私達を助けてくれた冒険者に頼んだから……元気になったら装備を買って、一緒に探しに行こうね」
呟いたメルの言葉にエスイルは再び頷く。
その様子に一先ずは生きている事にホッとしたメルだったが……すぐにリアス達の事を思い浮かべた。
リアス達は大丈夫だろうか? 疑問と不安は溢れてきた。
そして……。
心配と言えばなんでグラネージュは急に居なくなったんだろう? 大丈夫なのかな?
それに、ウンディーネ……シルフも姿が変わった事。
あれは一体なんなんだろう?
メルは思い浮かべ首飾りへとそっと触れる。
そう言えば、これを受け取ってからウンディーネは姿を変えた。
シルフだってその前までは普通だったんだし、もしかしてこれが原因?
でも、そうだとしたらなんで私にそんなことが出来たの?
だって……これは本来エスイルが使うはずの道具なんだよね……。
そう、メルが知る限りではその道具はエスイルが精霊を助けるために必要な道具。
しかし、窮地を救ったウンディーネがその首飾りを使う様に言ったのはメルに対してだ。
もしかして、やっぱり森族なら使えるって事なのかな。
そうだったとしたら、納得は行くし……。
「メルお姉ちゃん……」
「――っ!?」
考え事をしているとメルの耳に届いたのはかすれた声。
メルは慌てて少年の方へと目を向けると……。
「…………」
「エスイル!?」
少年は何かを呟き瞼を閉じる。
まさか、弟の身に良くない事が起きているのではないか?
メルは慌てて部屋の外へと駆けだそうとした。
その時、聞こえてきたのは……。
「……ぁ」
すやすやという規則だたしい寝息の音だ。
ただ眠っただけ、その事に気が付いた彼女は大きなため息をつき、椅子をベッドの近くへと持ってくると其処へと腰を掛ける。
「ごめんね、頼りないお姉ちゃんで……」
そして、眠る少年の頭をそっと撫でるのだった。
「とにかく、私も出来る事からするから……だから、絶対にエスイルをルーフにある村に連れて行くから……」
メルはそう決意するとゆっくりと立ち上がり……。
「休めって言われたけど……今のままじゃまともな装備が買えないかもしれないし……言われた通りブランシュさんにお店の仕事を手伝わせてもらおう!」
一人そう呟くと、先程休めと言われたばかりではあったが不安を振り払うかのように頭を振り部屋の外へと向かう……。
大丈夫、リアス達は無事。
ウンディーネがそう言ってたんだから嘘はないよ。
だから、私達は再会するまでなんとかしてここを出ないといけないんだ。
きっと近くに居る。
そして、リアス達はきっとに近くの街や村……もしかしたらここに向かってるはず。
その為にも必要な物は手に入れないと!
宿の中を歩くメルはそう考え歩いていると酒場の主人、ブランシュを見つけ彼女の元へと駆け寄る。
「メルちゃん? どうしたの?」
優しい声を掛けられほっとしたメルは彼女に今考えていた事を告げた。
すると、ブランシュは笑みを浮かべ……。
「手伝いは嬉しいね! だけど今日はちゃんと休んで……こっちにも用意するものがあるし明日からお願いね」
「え……でも……」
今日からやるつもりだったメルはうろたえるが、ブランシュはメルを制するように人差し指を向け。
「用意するものがあるって言ったよね、だから明日から」
念を押されてしまいメルは渋々首を縦に振った。




