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214話 温かいスープ 

 ウンディーネ達の作ってくれた小屋はメル達の事も考えてくれていた様で、そのお陰もあってメル達は保護された。

 どうやら、そこは宿か酒場の様だ。

 メルは名を告げようとしたが、女性はナタリア達の知り合いらしくメルの名前を知っていた。

 口にしたスープはほどよく暖かく、メルは腹部からじんわりとその熱が身体に染み込んでいく様に感じた。

 何より驚いたのはその美味しさだ。

 程よいピリっとした辛さの何かが入っており、それが食欲を進める。

 今まで食べたことの無い味にメルだけではなく、エスイルも夢中になっている様だ。


「その様子じゃ、味の方は聞くまでも無さそうだね」


 満足そうに微笑むブランシュにメルは口に運んだスープで頬を膨らませながら首を縦に振る。

 するとブランシュは小さく笑い。


「食べ物は逃げないよ、慌てないでゆっくり食べな」


 そう言われても美味しい物は仕方がない。

 メルは口には出さず、行動でそう言っているかの様にスープをあっという間に胃の中へと納めると……。


「ごちそうさまですっ!」


 ブランシュへとそう告げる。

 すると彼女は相変わらず笑いつつ……。


「ナタリアの話では野菜があまり好きじゃないって言ってたけど、食べれるね」

「あ、えっと……別に嫌いという訳じゃ……」


 自分の嫌いな物が筒抜けだった事に驚きつつメルはしどろもどろになりながら口にする。

 実際、食べれない訳ではない。

 調理法によっては美味しいとは感じるし、肉巻きや今、口にしたスープなんかはメルが好む味だ。

 しかし、甘く煮たニンジンなどが食べれないだけだ。


「と、とにかく初めて食べる味でした! 何が入ってるんですか? ピリリっとして美味しかったんですけど……」


 メルはエスイルの口へとスープを運ぶ女性に尋ねると、一口運び終わった女性は再びスープをすくい揚げながら答える。


「薬だよ」


 その言葉を聞き、メルとエスイルは目を丸める。

 今目の前の女性は何と言ったのだろうか? っと……薬とは苦いものだ。

 ましてや食事に混ぜるなんて聞いた事が無い。


「正確には薬の材料になる物なんだけどね、ユーリが食事にいれても問題が無いって言ってたんだ。試しにやってみたら副作用は出ないし、身体は温まる……こっちではもう普通に食べられているんだよ」

「ユーリママが……そんな事を」


 そう言えばユーリママも料理が得意だった。

 でも、何で薬の材料がこんなに美味しいって知ってたんだろう? それに……。


 メルは少し考え事をすると頬を膨らませ始めた。


「どうしたの?」


 その様子に気が付いたブランシュは首を傾げ訊ねると、メルは頬をリスの様に膨らませたまま……。


「家ではこの料理、出してくれませんでした」

「あはは……なるほど、それは不機嫌にもなる……そうだったんだね」


 笑みが苦笑いへと変わった女性はエスイルの食事も終えたのだろう、立ち上がるとメルの座る机の方へと歩み寄って来て、からの食器を手に取る。


「まぁ、此処にいる間はまた作ってあげるから、ね」

「……はい」


 今度、母にこの料理を作ってもらおうと内心考えつつメルはゆっくりと首を縦に振った。






 食事を終えたメル達はその日ゆっくりと過ごすことにした。

 リアス達を探したい気持ちはあったのだが、現状自分達の体力がついて行かない。

 だが、放って置く訳にもいかず……メルが下した結論は……。


「それで、アタイらに頼みたいって事?」


 自分達を助けてくれたという冒険者に仲間達の事を頼む事にしたのだ。


「は、はい……お願いできますでしょうか?」

「そりゃ、お願いも何も……」


 女性の言葉を聞きメルはがっくりと項垂れる。

 メルが持つ蓄えでは行方不明の仲間を探すなんてとてもじゃないが割に合わない。

 断られて当然だとは分かっていた。

 その場合は早めに自分達で動くしかないだろう、大量を回復する魔法なんてものはないがエスイルは此処で預かってもらい探しに行こうかとメルは考えた。

 しかし、現実を突きつけられるとこうも辛いのだろうか……メルは耳と尻尾を垂らしつつも、彼女達に頭を下げる。


「あの、助けてくれてありがとうございました」


 感謝の言葉は勿論、心から出たものだ。


 この人達が居なかったら今頃私達は……死んでた。

 普通なら助けれたお礼を寄越せって言われてもおかしくないのに、それを言われてはいない。

 リアス達の事は仕方ないよね? 自分達でもやれることは仕様と思ってたんだから、だからどうにかしないと!


「待った待った! 何をそんな悲しい顔してお礼を言ってるんだか! まだ断ってすらいないよ!」

「え……?」


 焦る女性にメルは呆けた声で返事をする。

 どういう事だろうか? 彼女が首を傾げると……。


「お願いも何も、そんなの探しに行くに決まってる! そうじゃなきゃアンタ、勝手に探しに行くだろ? それに事情が事情だ」

「………ふぇ!?」


 出会ったばかりの女性にそう言われてメルは変な声を上げた。

 すると、女性は大きくため息をつき……。


「やっぱりね……」

「や、やっぱりってなんで……」


 メルが訪ねると彼女の仲間である男達も首を傾げる。

 しかし、女性は何かを確信した様に自信が溢れた表情を浮かべると……。


「アンタの目、それに態度……そう言ったものを見れば大体予想はつく」

「ぅぅぅ……」


 初対面の人にまで顔に出やすいことを指摘されたメルは頬を膨らませるが、すぐに笑みを浮かべると……。


「でも手伝ってくれるんですよね! ありがとうございます!」

「ああ、手伝うってよりも探してあげるよ、良いねアンタ達!」

「おう、姉さんの言う事じゃ仕方がないな!」

「全くだ。いやだなんて言った日にゃ何をされるか分からんからな!!」


 仲間らしき男達は笑い、女性の方も豪快な笑い声を発する。

 そんな様子を見ながらメルはほっと息をつくのだった。

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