表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
222/486

213話 命拾い

 目覚めたメルは精霊シルフの姿も変わっている事に気が付いた。

 まるでおとぎ話に出来る妖精そっくりになっていたのだ。

 そして、自分達を助けてくれたのが精霊を知り驚くのだが……。

 そんな彼女達が眠気を訴え寝てしまった事に更に驚きつつ、今はエスイルを助けることが先決だと考えるのだった。

 火を焚き、暫くして……。

 立ち上る煙を見てメルはハッとした。

 充満する事は無かったから良かったものの自分は何て危険な事をしていたのか、っと……。


「ちゃ、ちゃんと確認するべき……だったね」


 ほっとしつつメルは立ち上る煙を眺める。

 もしかして、火をつける事も予想しウンディーネ達が上に穴をあけておいてくれたのだろうか? そんな事を考えつつこれでここに誰かが居るという合図にもなると安堵した。


「気が付いてくれればいいけど……」


 メルの呟きは誰にも聞かれる事無く白い家の中に響き渡る。

 そして、何気なしに頭を触ってみると其処にあるのはリアスからもらった髪飾り……。

 彼女はそれを大事そうに撫でると彼らが無事でいる事を願うのだった。


 それから暫くして……外からなにかが聞こえた。

 どうやらメルは再び意識を失いかけていた様だ。

 氷が割れる音を聞きながらメルはそれが魔物の仕業でないか注視しする。

 しかし、向こう側からは……。


「早くしな!! 人の気配がする、奴が来る前にさっさとずらかるよ!!」

「わかってらぁ!! だからこうしてやってるん……だろう……が!!」


 女性と男性の声がした。

 それだけではない、他にも何人かの声が聞こえたメルは狼煙の効果があった事にホッとし……ゆっくりとその意識を闇へと落としていくのだった……。

















 彼女が次に目を覚ましたのは温かい場所だった。

 見慣れない場所に焦り辺りを見回してみるとどうやらどこかの部屋の様だ。


「……助かったの?」


 呟いたメルは辺りを見回すと傍にはエスイルもちゃんと寝ていて荷物も取られた様子はない。

 気を失う前の事ははっきりと覚えていた。

 恐らくあの声の人達が助けてくれたのだろうと考えた彼女はベッドから降りるとゆっくりと扉が開いた。

 恩人の誰かだろうか? メルがそう思って扉の方へと目を向けていると其処から部屋へと入ってきたのは一人の女性。

 彼女はメルを見るなり呆れた顔を浮かべ……。


「そんな恰好で外に出て……雪国は危険だって教わらなかった? そろそろ起きる頃だと思ってほら、身体があったまる様にスープを持ってきたよ」


 その女性は良い香りのするスープを手に持ってきた。

 悪い人ではなさそうだ……メルはそう思いつつ……。


「だ、誰ですか?」

「誰ってこの酒場の……ってそうか、二人共気を失ってたから」


 女性は机の上にスープを置くとメルへと微笑み……。

 メルはその笑みに釣られて笑みを浮かべると……どこか既視感を覚えた。


「何を笑ってるのか……雪国でそんな薄着をしてナタリアやユーリ達は何も教えなかった? そんな事無いだよね? もう少しで二人とも死ぬところだったんだから少しは反省した方が良いよ!」

「ぅぅ……」


 笑みを浮かべたまま怒られたメルはまるで母に怒られた気になり、がっくりと項垂れる。

 しかし、一つ気になったことがあった。

 この女性が母達の名を知っている事だ……だがメルには彼女の顔に覚えはなかった。


「あの……私を知ってるんですか?」

「知ってるも何もその髪、耳に尻尾……ケルムが寄越した手紙に書かれてた容姿に一致してる」

「ケルムおじさん?」


 メルがその名を呟くと彼女は頷き……再び笑みを浮かべるとメルから視線を動かした。


「そう、ケルム……それよりもそっちの子も目を覚ましたみたいだから、さっさとスープ飲んだ方が良いよ、話はそれからしてあげる」

「あ、は、はい……」


 女性の言葉にメルは後ろに振り返る。

 するとエスイルが瞼を開けており、まだ体力は戻ってないのか口をパクパクとさせるだけだった。


「エスイル……ごめんね」

「その子には食べさせてあげるから君は自分で食べられるね?」

「……私が食べさせます」


 メルは申し出に頷きかけ、首を振るとすぐにそう口にした。

 目の前の女性は確かに良い人そうだ。

 母の名前を知っており、祖母の名、ケルムのことまで言った。

 そして、何故か実家の冒険者と同じような安心感があった……。

 しかし、名を名乗っていない……その事が気がかりだったのだ。

 ここからメル達を貶めるという事は無いだろうが、エスイルは大事な弟だ。


「その……」


 ぽかんとしている彼女を目にして、メルはどう言ったら良いのか困ってしまった。

 すると、女性は何かを察したような顔になり……。


「そうだった、名乗って無かったね。私はブランシュこの酒場の店主で貴女達は此処の冒険者に連れてこられたんだよ。ごめんね不安がらせて」

「い、いえ! その……ごめんなさい」


 突然謝られてしまい、メルは驚いたのか顔を下へと向けながら自分も謝ると笑い声が聞こえ……。


「何で君が謝るの?」

「あ……」


 その指摘に何故自分は謝ったのか分からずにいたメルは理由を考えるが、すぐに自分自身も名乗っていなかったことに気が付き、顔を跳ね上げる。


「その、私も名前を――」

「良いよ、知ってるメアルリースちゃんでしょ? さ、スープ冷めないうちに食べな」


 その笑みを見て、メルは再びほっとするとようやくスープへと口をつけるのだった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ