204話 氷の魔法
騎士達に戦いを挑むメル達。
だが、彼らとは圧倒的な差があった。
しかし、諦める訳にはいかないとメルは母ユーリが作り出した氷の魔法を唱えるのだった。
地を走るその魔法を見て騎士はすぐに飛びのこうとした。
しかし、メルの魔法の方が早く彼らを捕らえ……。
「こ、氷の魔法!?」
二人の騎士は顔を歪めつつ捕らわれた足を見た。
メルンは比較的暖かい地方だ。
氷はすぐに解けてしまう……しかし、メルはそうさせないために魔力を多めに使ったのだ。
「は、外れない!? 何だこの魔法…………メルンで氷、だと?」
メルの魔法は必死にもがく二人の動きを確実に奪い。
リアスは男の騎士へシュレムは女騎士へと近づく……。
「首飾りを返してもらうぞ」
だが、リアスが近づくと騎士は口元を歪め……それに気が付いたメルは更に魔力を込め今度は腕まで拘束をする。
すると……騎士はメルの方へと振り返り、鋭い瞳で射抜いて来た。
動けないというのにその闘志は全くといってそがれていない事にメルは驚いた。
「リアス早く!!」
何か恐ろしい物を感じたメルはリアスにそう告げ、首飾りを探すよう催促した。
それもそのはずだ。
魔法で動きを封じてるメルだからこそ分かったのだ。
この人達凄い力で氷を壊そうとして来る……。
こんなの、まともに戦ったら勝てるわけがない!!
だけど、首飾りを取りかえしても……すぐに襲われる。
このままじゃ何も変わってない……。
メルの中で焦りが生まれ、その焦りに気が付いたのだろう女の騎士は……。
「……無駄な事をしてるって気が付いたみたいだね」
にやりと笑う。
しかし、此処で魔法を解いてもリアスが危機に陥るだけだ。
それに首飾りを取り戻さない訳にはいかないのだ……。
「あったぞ! メル!!」
声を上げたのはシュレムだ。
首飾りが見つかったことに安堵したメルだったが、いよいよこの後をどうするか答えが見つからなかった。
今魔法を解いても騎士達は今度は本気で挑んでくるだろう。
その事を考えると恐ろしく感じ……思わず震えそうだった。
「…………」
首飾りが無事見つかって嬉しいはずなのに喜びの声すらあげられずに黙り込むメル。
「メル?」
そんな彼女の顔を覗き込むシュレム。
どうしよう、この後どうやって対処すればいいんだろう……。
魔法を解いたら負け、このまま拘束しててもいずれは魔力が失われて負ける。
そうなったらただ負けるだけじゃない、皆……殺される!!
当然騎士達もメルが考えていた通りなのだろう、その瞳からは全く闘志が失われてはいなかった。
そして、メルは勝ち目がない事に気が付くと、一筋の汗を流す。
「メル! 首飾りを受け取れ!!」
そんな時、リアスの声が聞こえ……メルは彼の方へと向く。
「リアス……?」
何故、いきなりそんな事を言うのだろうか? もしかして、持って逃げろとでもいうのではないか? そんな不安がメルを襲うが……。
「それは精霊に生命を与える道具だ……メルでも何らかの力が引き出せるかもしれない!!」
そんなことが出来るのだろうか? そうメルは考えるが……。
アクアリムも恐らくナタリアが知らない力があった。
なら、個の首飾りにだってなんか隠された力があるのかもしれない!!
試してみる価値は……ある! それに、此処で諦める訳にはいかない……だから――!!
メルはシュレムから首飾りを受け取ると魔力を込めてみる。
しかし、それはマジックアイテムではない……当然何か変化が起こるはずもなく……その上、魔法に込める魔力が減ったこともあり、騎士の拘束は解かれその刃はシュレムとリアスへと向けられた。
今度はウンディーネの支援もある訳ではない。
二人の危機にメルは絶望を覚えた、その時。
『首飾りを身に着けて……』
その声は聞いた事もないものだった。
彼女はその声にすがる様に急いで首飾りを身に着け、再び魔力を込める。
すると、先程までは何も起こらなかったにも関わらず、首飾りからは温かさを感じた。
いや、温かさだけではない……身体の中に魔力が溢れる感覚がしたのだ。
メルがそれを感じた時、再び海は姿を変え水の龍になると見事二人の騎士をその息吹で撃ち抜いた。
息吹を受けた二人の騎士は悲鳴一つ上げる事無くその場に倒れ、意識を失っている様だ。
「な……なにが、起き……っ」
「「メルお姉ちゃん!?」」
メルが困惑しているとエスイルとライノの悲鳴が聞こえた。
それもそうだろう、メルは突然膝をついたのだ。
剣を地へと突き立てる事で転ぶ事は避けられたが、メル自身意味が分からなかった。
魔力が……ない? 魔法ももう一回も使えそうにないよ……でも、何で意識があるの? 脱力感も疲労感も酷いのに……。
意識だけははっきりしてる。
一体どういうこと? 私に……何が起きてるの? それにこの首飾り……エスイルじゃないと使えない訳じゃない? だとしたらなんでエスイルが選ばれたの?
メルは意識の無い騎士達を目にしつつ、そんな疑問を思い浮かべ、考える。
しかし……。
意味が、分からないよ……何が起きて、私は何をしたの?




