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私の夢は冒険者だったのにっ!!  作者: ウニア・キサラギ
9章 奪われた精霊の首飾り
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203話 水の龍

 戦いの中、やはりメル達は騎士には敵わなかった。

 そんな時、リアスはメルを庇おうとし……メルはリアスが死ぬのではないか? と思う。

 嫌だ……。

 そう彼女が強く思うと……水の龍が姿を現すのだった。

 それの正体が自身の魔力を使った物であり、精霊であるはずのウンディーネが精霊力ではなく魔力で動いている。

 メルはそう考えつつもそれは無いとも思う。

 事実精霊にとって魔法とは恐ろしい物だ。

 精霊力を糧に魔力にしそれを破壊の力へと変えるのだから……そんな魔法を扱うメルに懐いているのは単純に森族(フォーレ)である母フィーナ。

 そして、魔法を扱う魔族(ヒューマ)でありながらも精霊を助けることが出来た母ユーリが居たからだが、それと水の龍が動くことは関係ないだろう。


「…………」


 そんなはずはない! メルはそう思いつつも再びアクアリムに魔力を通わせる。

 本来なら水が噴き出るはずの剣からは何も出ない。

 しかし、水の龍のアギトはゆっくりと動き始め――。


「――っ!! チッ!」


 龍の息は放たれる。


 嘘……本当に魔力で動いてる?

 でも……そんなはず……。


 メルには精霊魔法を扱う精霊力と言う物が無い。

 代わりに魔力がある為、魔法は操ることが出来た。

 だから今使っているのも魔力だ。

 特に何かが変わったという事もないが、魔力が増えるならともかく精霊力が突然増えるという事はないだろう。

 もしあったとしてもそれはすぐに魔力へと変換されるのだ。


 だから、ウンディーネが私に合わせて攻撃をしてる?

 そんな事もないよ……何かをきっかけに……。


「この……獣め!!」


 女性の騎士は苛立った声を上げ、メルへと迫る。

 先程までメルを狙っていた男の騎士はいつの間にかリアスとシュレムが相手をしていた様だ。

 しかし、あの水の龍が出てきた事により、戦況は確実に変わったのだろう……。

 騎士達に焦りが見え、その焦りゆえか対等とは言えないものの戦うことが出来ていた。

 メルは迫る騎士を見て思わず剣に魔力を籠める。

 するとやはり、水の龍は息を吐いた。


 信じられない、だけど……間違いない。


 三度目になるその現象を目にしたメルは今度は確信を得た。

 どういう理屈かは分からない。

 しかし、確実にメルの魔力は減り、龍が動く……。


 それも魔法の武器のはずのアクアリムを通して……不思議だけど――!!


 それでも、ウンディーネが力を貸してくれて居る事には変わりがない。

 メルは剣を振り被り騎士へとそれを振り下ろす。

 当然防がれてしまうのだが、その僅かな間に魔力を注ぎ込むと龍の息吹に似たソレは再び放たれた。


「っ!?」


 まさか近づいてきながら、龍の息吹を使うとは思わなかったのだろう騎士は驚くが、メルにとってはそれは当然だ。

 あの水の龍は魔物なんかではない。

 ちゃんと意志を持ち、幼い頃から一緒だった精霊ウンディーネなのだ。

 だからこそ、信じ頼ることを決めた。

 そんな彼女の想いは通じたのか、それともやはり最初から傷つけるつもりはなかったのか……ウンディーネは動き、向きを変えてから息を放ったのだ。

 それに気が付き慌てて避けた騎士。

 しかし、確実に余裕は無くなっていた……メルもまたその隙を逃すほど素人ではない。

 剣を振るい……魔力を注ぎ続けた。


「こ、のぉぉぉぉぉ!!」


 魔力には限りがある。

 更に言えば以前騎士と戦った後から完全に回復した訳ではない。

 だが、この場で手を抜くことは出来無いと彼女は必死になっていた。

 彼女だけではない、リアスもシュレムもエスイルにライノ……彼女の仲間達はそれぞれが出来る事をし、騎士と戦っていたのだ。


「はぁ……はぁ……この、ガキ!!」


 そして、剣を何度振った時だろうか? 女の騎士には疲れが見え始めていた。

 だが……。


 目、目が……霞む、魔力がもうないんだ……。

 ウンディーネの龍の息吹も本物の龍よりは劣る、お蔭で余計な人や物を巻き込まないで済んでるけど……。

 この人を倒すには何か他のやり方が必要だ。


 何度か刃を交え辿り着いたその答え、メルは何かないかと辺りを見回してみた。

 しかし、騎士に有効だになるようなことは何もなく、それどころか徐々に押されてきているリアスとシュレムを目にし、メルには焦りが生まれた。

 そんな時だ……。


『メル……ユーリの魔法を……』


 優しい声が聞こえた。

 それは聞き覚えのある声で……メルが振り返ると其処には形を崩しつつある水の龍の姿があった。

 随分と長い事、一緒に戦ってくれていたのだ。

 もう限界なのだろう……そう思いつつメルはその言葉が気になった。


 ママの魔法……? でも私にはソティルが居ない。

 あの魔法は使えない…………ううん、違う別の魔法? だってウンディーネがその事を知らないはずがないんだ!


 メルはこの場を凌ぎ、首飾りを取り返す手段となる魔法がある事を精霊が教えてくれていると考え、辺りをもう一度見つつ思考する。

 いや、その必要はなかった。

 そう……最初から見えていたのだ、相手の意表を突き確実な隙を得られる手段があると――しかし、それを使えばシュレムはともかくリアスが危険だ。


 でも、大丈夫リアスの近くにはシュレムが居る。


「シュレム!! リアスをお願い!!」


 メルは自身の姉にそう叫ぶと右手を地面へと向け――詠唱を唱え始めた。


「我に向かい来る邪なる者よ、氷の罠へと落ちろ」

「まだ何かするつもりか!!」


 騎士はメルに生まれたその隙を逃す気はないのだろう……更にはリアス達の方から抜けてきた騎士まで迫り……。


「させるか!! メル頼むぞ!」


 リアスの声が聞こえ彼はローブの下から針を投げ騎士を足止めする。

 それに続き……。


「おおおおお!!」


 シュレムの咆哮をあげながら地面から飛び上がった。

 何をしようとしたのか、詠唱で気が付いたのだろう。

 メルはほっとしつつ魔法の名を唱えた――。


「アイス……バインド!!」


 それは母ユーリが作り出した、それまでは存在しなかった氷の魔法。

 ウンディーネの放った水はその場を濡らしており……その氷は瞬く間に辺りに広がって行くのだった。

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